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第22回 コインチェックの記者会見、主張は伝わったか?

あの記者会見はこう見えた!
~クライシスコミュニケーションの視点から~

1月26日(金)の23時30分、仮想通貨取引所のコインチェック株式会社が記者会見を行いました。しどろもどろの会見後、27日を過ぎて28日夜中、流出した金額について全額補償をネットで発表。全てが早い対応でしたが違和感を持ちました。

何を目的とする会見だったか

まずは26日の会見での発表内容。26日の2時57分に彼らの仮想通貨NEMが外部に不正送金される事態が発生。8時間後の11時25分に会社として異常を検知したため、12時過ぎからNEMの入金停止、売買停止、出金停止など一連の取引を停止し、23時30分に会見。場所は東京証券取引所。集まった報道陣は100名以上。社長、取締役、顧問弁護士が揃って頭を下げました。終了時間は夜中の1時。
会見の趣旨としては、不正な使い込みではないこと、攻撃を受けたとする内容で、流出金額は580億円。原因不明、セキュリティの不備は認めない、被害者人数不明、取引高不明、株主と相談すると逃げの姿勢(株主は登壇している社長と取締役で51%以上なのだが)、補償に言及しない。記者からの質問で紛糾した点は、金融庁から正式な仮想通貨取引業者として認定されていない状態でCMを打つなど積極的に呼び込んだこと、セキュリティの不備(マルチシグ未装備、低セキュリティのホットウォレットでの管理)の状態を改善しないままサービスを提供し続けてきたことでした。
私がもっぱら着目していたのは危機管理広報のプロが入っていたかどうか。答えはNOだろうと思います。23時30分、東京証券取引所での会見であったこと。市場関係者が仮想通貨市場が冷え込むことを懸念し、不正の使い込みではないことのみを伝えるために彼らにアドバイスして開かせたように見えます。

信頼回復の第一歩となる力強い言葉を

ダークスーツに身を包んでいることから服装のアドバイスをした人はいるものの、質疑応答への準備はなされていない。弁護士同席も危機管理広報のプロはアドバイスしません。会見で一緒に頭を下げるのは違和感があるからです。やるなら司会がいい。セキュリティの不備を認めず、攻撃を受けたことのみの説明をするのは法廷戦略にありがち。広報のプロは不備を認めた上で再発防止へのコメントを打ち出して事業存続のための信頼回復の道筋を作ります。
この会見の目的が「不正ではない」ことを伝えるためのものであれば、質疑応答に対して「原因は現時点で不明ですが、セキュリティの不備も一因として考えられます。責任をもって原因を究明し、再発防止策を立てます。不正ではないことはご理解いただきたい。そのために会見も開いています。補償も含めて皆さんからの信頼回復のために全力を尽くします」としてほしかった。
翌日には補償の内容を発表していることから、やはりと思いました。仮想通貨市場の冷え込みを懸念した人が支援したのではないでしょうか。このメッセージ発信の早さからすると、危機管理広報のプロではないですが、市場と対話するプロではあるようです。

<参考情報>
コインチェック社プレスリリース
http://corporate.coincheck.com/#press
日経ヴェリタス
http://ka-soku.com/archives/6725467.html

 

著者:石川慶子氏

有限会社シン 取締役社長
日本リスクマネジャー&コンサルタント協会 理事
公共コミュニケーション学会 理事
日本広報学会 理事
公式ページ:http://ishikawakeiko.net/
詳しいプロフィールはこちら

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