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  1. 負債相続-最前線 椎葉基史
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第4回「負債相続難民」が生まれる背景1

「負債相続」最前線!

司法書士法人ABC 司法書士・椎葉基史 著

専門家の知識不足による相続被害は深刻な問題

「負債相続難民」とは、私どもが多くのかたに警鐘を鳴らすために提唱している言葉です。
「負債相続難民」を生み出している原因として、私は大きく分けて3つの要因があると考えています。1つは、負債相続のリスクを知らない相続人自身、もう1つは専門家が支援に力を入れていない現状。そして3つ目は、専門家が負債相続に対して知識がないことによって、相続人に多大な被害が及んでいるという事実です。このような3つの背景があって、結局相続人としては、本来取らなければならない適切な選択ができずに泣き寝入りしている状況があります。そういうかたが私どもの事務所にたくさん来られています。

まず、相続のリスクを相続人が知らないという問題について説明します。一般のかたがたが、どれだけ相続についての正しい法律知識を持っているか、ここに私どもは多大な疑問を感じています。実際に私どもの事務所にご相談に来られても、そもそも借金が相続されるということの知識を持っていないかた、逆に、親が亡くなったら自分が借金を引き継がないといけないと思い込んでいらっしゃるかた、手続きの期限の知識が全くないかたが非常にたくさんおられます。
負債があっても、専門家に相談するという発想すら持てずに、「自分のところは特に財産がないから相談する必要はない」と判断し、そのまま放置してしまう現状があるのです。その間に3カ月が過ぎてしまうリスクがまず存在します。

もう1つが専門家の支援不足の問題です。現状では、負債相続の専門家は全国にわずかしかいません。ほとんどがプラスの財産に対して詳しい知識を持った専門家のかたがたばかりです。ですから、身近な専門家のもとに相談に行っても、詳しく分からないからといって門前払いされてしまう例が多く見受けられます。

では、なぜ専門家が取り組まないのでしょうか。その背景には、ビジネスとしてなかなか成立しにくいという理由があると私はみています。これまで取り組んでこなかったことですので業界としても知識やノウハウが積み上げられていません。私が始めた頃も、負債相続に関する基本書や実務書がどれだけあったかというと、過去に1、2冊ぐらいの状況でした。ですから、専門家としてもリスクを取って手続きを指南していくのが非常に苦しいという実情があります。

そして、私が今、一番問題視していることが、専門家による相続被害です。相続の専門家に無事引き継いだとしても負債相続に関する知識が乏しいかたがほとんどなのです。それによって、専門家が相続人に対して間違った手続き、選択肢を取らせているのです。このことについて詳しく説明いたします。

例えば、よくあるご相談です。夫が亡くなり、その当時は特に借金も見当たらなかったのでそのままにしていた。それから数年後、突然債権者から支払いを命ずる通知が届いたというケースです。本来であれば、債権者がなぜ数年間も放置していたのかと思われるでしょう。実はここには「連帯保証」が絡んでいるのです。連帯保証人の立場は原則、そのまま相続されてしまうのです。この知識においては専門家ですら抜け落ちているケースが多いのです。そうなると、数年後に借りた本人が破たんしてしまって初めて債権が発覚します。

この場合、原則は亡くなって3カ月で手続き期限を迎えてしまいます。しかし、実は、私ども負債相続の専門家であれば当然分かっていることとして、昭和59年に最高裁で判例が出ています。こういうケースでもし負債を見逃してしまった場合は、「その負債を知ってから3カ月で手続きを取ってもよい」という判例です。これは民法の条文には記載されていない知識です。この知識のない専門家が、この類いの相談が来たときに、「もう期限を超えているからできない」と断っているのです。専門家に断られることによって、当然、一般のかたはもう助からないと信じてしまいます。結局そのまま借金を引き継いでしまうことになります。ただ、このケース、私どもは間違いなく解決ができます。つまり、相続放棄ができるんですね。(次回に続く)

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