RMCA-リスクマネジメントの専門家による寄稿、セミナーや研修・講座などの情報

  1. 産業法務の視点から 平川博
  2. 647 view

第41回自転車の交通事故対策

1.はじめに

自転車は免許不要で、老若男女を問わず、誰でも運転することができ、駐車スペースも狭くて済む便利な乗り物です。通勤や通学、通院、買い物等、日常生活で利用している人にとって、必需品の一つになっています。
その反面、二輪であるために、走行が不安定で転倒することもあれば、ハンドルの自由度が大きいために、急ハンドルで方向転換をして歩行者や自動車と接触することもあり、危険性がかなり高い点に難があります。

2.全国の自転車交通事故

平成26年10月27日に開催された「第2回 柏市自転車利用環境整備計画策定協議会」の会議資料中、「(資料2-1)自転車交通事故に関する主な状況・要因」と愛する文書の「2.自転車交通事故の主な状況・要因の整理」では、「(1)全国の主な状況・要因」という見出しの下に、以下のように記載されています。

①年齢別事故状況
○年齢別事故件数では7歳~24歳までの若年層が多い傾向にあり、特に16歳~19歳の層が非常に多くなっている。
○これに対し、死亡事故では若年層では目立った特徴はみられず、65歳以上の高齢層が他の年齢層と比較して非常に多く、特に75歳以上の高齢者が非常に多くなっている。
○高齢層の各歳別傾向をみると、負傷者数は、概ね61歳前後に緩やかなピークが見られる一方、死亡者数は年齢によるばらつきが大きく明確な傾向ではないが、概ね加齢とともに増加する傾向が見られる。また、若年層と比較して負傷者数に対して死亡者数が非常に多くなっている。
(http://www.city.kashiwa.lg.jp/soshiki/140700/p021237_d/fil/3.pdf[原書5頁])

特に16歳~19歳の若年層で事故発生件数が多いのは、道路交通法の知識が乏しい上に、信号無視のような違法行為を平気で犯す傍若無人な態度で自転車を乗り回すためではないかと思われます。
それに対して、死亡者数が加齢とともに増加し、特に75歳以上の高齢者で非常に多くなっているのは、運動能力の低下や反射神経の鈍化が影響していると思われます。

②性別事故状況
○年齢別・性別の負傷者をみると、20歳未満では女性と比較して男性の負傷者が多く、特に12歳以下では男性が女性の2.5倍となっている。
○20歳以上では、逆に男性より女性の負傷者が多く、50歳代では男性の2倍、60歳代では1.8倍である(平成16年)。
(前同[原書6頁])

③時間帯別事故の発生状況
○時間帯別事故の発生状況は、全事故・対自動車とも朝8~10時、夕方16~18時の時間帯が高い。
○自転車事故の多い時間帯の死傷者数でみると、小学生は、14時~17時台の下校時間帯、中・高生は6時~9時台の登校時間帯での事故が多い。
○65歳以上の高齢者は、時間帯に大きな特徴は見られないものの、10時~17時台の日中が多くなっている。
(前同)

④通行目的別事故の発生状況
○通行目的別では「買い物」が最も多く約2割を占め、次に、「訪問」「通学・通園」となっている。
○死亡事故は事故件数と同様に「買い物」、「訪問」の順に多いが、事故件数で多かった「通学・通園」は死亡事故に占める割合は低い。
(前同[原書7頁])

「買い物」での事故が最も多いのは、各種統計によれば、自転車利用目的で「買い物」が最も多いので、当然のことかも知れませんが、荷物が多くてバランスを崩しやすいということも考えられます。

⑤相手当事者別事故の発生状況
○相手当事者別の交通事故件数で見ると、約8割強は対自動車である。
○また、自転車利用者が加害者となるケースが多い自転車対歩行者事故や、自転車同士の事故が増加しており、対歩行者事故は平成9年の633件から2,934件へと約4.6倍、自転車同士の事故は同637件から同3,909件へと6.1倍となっている。
(前同)

対歩行者の事故が増加している要因としては、一般的に歩道走行や路側帯の右側通行というような道路交通法違反行為が挙げられていますが、合法的に走行していても、路地のように道幅の狭い道路では、自働車を避けようとして道路の端に寄って歩行者と接触する危険性が高いことが考えられます。

⑥道路形状・事故類型別事故の発生状況
○道路形状に関しては、自転車交通事故全体では交差点での事故が68%と最も多く、これに次いで直線路等での事故が24%で、この二項目で全体の9割を占めている。
○対人に限ってみると、交差点・交差点付近の事故よりも、一般単路での事故が多いのが特徴である。
○事故類型別に関しては、自転車交通事故全体では車両相互での出会い頭が54%と最も多く、これに次いで右左折時が23%となっている。
○歩行者との事故は増加傾向にあり、事故件数は近年10年間で4.3倍に増加している。また、対面通行中及び背面通行中の事故件数は近年10年間で4倍以上増加している。
○事故の多い交差点では、特に信号機のない交差点事故の割合が全体の5割を占める。信号機のない交差点事故のうち8割近くは出会い頭事故である。信号機のある交差点では、右左折時の事故が全体の6割近くを占め、出会い頭事故は約3割となっている。
(前同[原書8頁])

自転車の対人事故は、一般単路(道路[トンネルや橋は除く]の直線区間)で多いのは、見通しが良いために油断して脇見運転や漫然運転をするためではないかと思われます。

⑦法令違反別事故状況
○自転車関連事故のうち、7割近くが自転車側に違反がある。内容をみると、安全不確認が最も多く26%を占め、次に、動静不注視、交差点安全進行となっている。
○相手当事者別では、対自動車事故の場合、自転車側の65%に違反がある。
○年齢別で違反の有無をみると、16歳以上の年齢層における「違反あり」は6割強に対し、15歳以下では「違反あり」が75%である。
○15歳以下の違反では、安全不確認が最も多く3割強、次に、一時不停止が1割となっている。
○信号のない交差点での出会い頭による法令違反では、一時不停止が約半数を占め、次に、安全不確認が3割近くとなっている。
(前同[原書9頁])

法令違反類型の中で安全不確認と一時不停止が多いのは、自転車はブレーキを掛ければ直ぐに止まることができると思い込んでいる運転者が多いためではないかと思われます。因みに、自動車の運転手は
『停止距離』=『空走距離』+『制動距離』
という数式を教習所で教わりますが、自動車だけでなく、自転車にも当てはまります。このことを、未成年者に教えることが必要であると思われます。

3.自転車安全利用五則

警視庁HPの「交通安全〉交通事故防止〉自転車の交通安全〉自転車の交通事故防止」 というカテ中、「自転車安全利用五則」よ題するウェブページでは、以下のように記載されています【引用者註:抜粋】。

1 自転車は、車道が原則、歩道は例外

道路交通法上、自転車は軽車両と位置づけられています。したがって、歩道と車道の区別のあるところは車道通行が原則です。
【罰則】3ヵ月以下の懲役又は5万円以下の罰金

2 車道は左側を通行

自転車が車道を通行するときは、自動車と同じ左側通行です。道路の中央から左側部分の左端に寄って通行してください。
※一方通行道路で「自転車を除く」の補助標識があり、自転車の規制が除外となっている場合に通行(逆行)する場合も同じです。
【罰則】3ヶ月以下の懲役又は5万円以下の罰金

3 歩道は歩行者優先で、車道寄りを徐行

自転車が歩道を通行する場合は、車道寄りの部分を徐行しなければなりません。
歩行者の通行を妨げるような場合は一時停止しなければなりません。

【罰則】2万円以下の罰金又は科料

4 安全ルールを守る

■飲酒運転・二人乗り・並進の禁止
【罰則】
飲酒運転 5年以下の懲役又は100万円以下の罰金(酒酔いの場合)
二人乗り 2万円以下の罰金又は科料
並進   2万円以下の罰金又は科料

■夜間はライトを点灯
【罰則】無灯-5万円以下の罰金
■交差点での信号遵守と一時停止

交差点における信号無視や一時停止標識のある場所での一時不停止は、交通違反です。
交差点では必ず信号を守り、周囲の安全を確認してから進行しましょう。
5 子どもはヘルメットを着用
自転車を運転する児童の保護者は、児童にヘルメットを着用させるよう努めなければなりません。
成長過程の子どもは体の重心位置も不安定で、転倒した時、頭部に重大なダメージを受けることがあります。
子ども自身が自転車に乗るときはもちろん、幼児を幼児用シートに乗せるときも、幼児用ヘルメットの着用をお願いします。

(http://www.keishicho.metro.tokyo.jp/kotsu/jikoboshi/bicycle/menu/five_rule/)

4.自転車の交通安全用品

(1)自転車用 反射リフレクター
【SSB-800 サイクル反射バッジ丸LED4】

■特徴
リフレクターだけでなくLEDでも認知させるW反射バッジ
●自転車のカゴやフレームにつけて車からの視認度をあげる
●4個のLEDがランダムに多色で点灯、点滅するサイクル反射バッジです。
● 電池交換可能です。
価格:400円(税込432円)

(https://item.rakuten.co.jp/hdc/hdc-5220992133/)
(2)LEDシリコンライト
【LEDシリコンライト2個セット】

1回押すと点滅・2回押すとゆっくり点灯・3回押すと早く点灯!!
シリコンなので手軽に装着!取り外しも簡単!
■サイズ:約横33㎜×;長さ47㎜×;高さ30㎜
■素 材:シリコン
■重 量:23g(電池を含む)
■電 池:CR2032×;2個(電池付属但し、保障対象外です) 約18時間
価格: 500円(税込)

(http://www.zeus1.co.jp/SHOP/7641653.html)

(3) 自転車ホイールLEDライト
【ブルー レッド グリーン 3色セット】

ホイールに取り付けてタイヤを回転させると綺麗な光の輪ができるホイールLEDライトです。
点灯パターンは点灯と点滅2つのモードを搭載
ホイールに取り付けるだけの簡単設置
LEDライトなので、暗闇でもよく目立ちます。 通勤通学自転車にもオススメ
カラーはブルー、レッド、グリーンの3色セットです 3色同時に点灯させると・・・? 光の組み合わせによるイルミネーションをお楽しみください!!

(https://www.amazon.co.jp/gp/bestsellers/sports/3123732051)

5.行政の取組

国土交通道路局及び警察庁交通局が平成28年7月に共同で策定した「安全で快適な自転車利用環境創出ガイドライン」(改訂版)の冒頭「はじめに」では、「1.背景」という見出しの下に、以下のように記載されています。

平成24年11月には、国土交通省道路局と警察庁交通局が「安全で快適な自転車利用環境創出ガイドライン」(以下、ガイドライン)を作成し、「自転車は『車両』であり車道通行が大原則」という観点に基づき、自転車通行空間として重要な路線を対象とした面的な自転車ネットワーク計画の作成方法や、交通状況に応じて、歩行者、自転車、自動車が適切に分離された空間整備のための自転車通行空間設計の考え方等について提示したところである。…(中略)…
しかしながら、自転車ネットワーク計画を策定した市区町村は平成24年11月のガイドライン策定以降も一部の市区町村にとどまっている状況(平成24年4月1日時点34市区町村→平成28年4月1日現在で92市区町村)にあり、自転車と歩行者の分離により安全性が高く、かつネットワークとして連続した安全な自転車通行空間の整備が緩慢な状況にある。
このような現状を鑑み、本ガイドラインの目指す、安全で快適な自転車利用環境の創出を促進するため、平成26年12月、国土交通省道路局と警察庁交通局は、有識者からなる「安全で快適な自転車利用環境創出の促進に関する検討委員会」を開催した。同委員会では、…(中略)…安全性の向上を第一に、道路や交通状況に応じた自転車通行空間整備を促進するための方策の検討が行われ、平成28年3月に『「自転車ネットワーク計画策定の早期進展」と「安全な自転車通行空間の早期確保」に向けた提言』が国土交通省道路局及び警察庁交通局に提出されたところである。

(http://www.mlit.go.jp/road/road/bicycle/pdf/guideline.pdf)

このガイドラインの本論は、以下の4部で構成されています。
Ⅰ.自転車ネットワーク形成の進め方
Ⅱ.自転車通行空間の設計
Ⅲ.利用ルールの徹底
Ⅳ.自転車利用の総合的な取組
この内、「Ⅱ.自転車通行空間の設計」で、「1.単路部の設計」と「2.交差点部の設計」について、以下のように、それぞれの基本的な考え方が示されています。

1.1 自転車通行空間の設計の基本的な考え方
1.1.1 分離工作物
自転車と自動車、歩行者それぞれを構造的に分離する場合は、互いに存在を認識できるよう、分離工作物として縁石を設置することを基本とし、柵等の高さのある分離工作物をできる限り設置しないものとする。
それ以外の場合は、自転車の安全性を向上させるため、縁石、柵等の分離工作物をできる限り設置しないものとする。
1.1.2 幅員
自転車通行空間の幅員は、隣接する歩行空間の幅員とのバランスが重要であり、歩行者、自転車がそれぞれの空間を通行しやすく、また、自然に通行位置が守られるよう、歩行者、自転車の交通量を考慮して決定するものとする。
1.1.3 路面等
自転車道や車道端部の路面については、自転車の安全性を向上させるため、平坦性の確保、通行の妨げとなる段差や溝の解消に努め、滑りにくい構造とするものとする。なお、必要に応じて、側溝、街渠、集水ますやマンホールの溝蓋(グレーチング蓋)については、エプロン幅が狭く自転車通行空間を広く確保できるもの、自転車のタイヤのはまり込みを抑制するためグレーチング蓋の格子の形状等を工夫したもの、段差や路面の凹凸が小さく平坦性の高いもの等への置き換えや、スリップによる転倒防止のための滑り止め加工等を行うことが望ましい。また、路面表示等を設置する場合、できる限り走行性能を妨げないよう留意するものとする。さらに、これらの機能を継続的に確保できるよう維持管理に努めるものとし、自転車の安全な通行を阻害する轍や側溝との舗装すりつけ等縦方向の段差等にも留意するものとする。
植栽等を設置する場合は、視認性及び自転車の走行性を妨げることのないように樹種や配置を検討するとともに、落ち葉等にも留意した適切な維持管理に努めるものとする。電柱等の占用物で、自転車、歩行者の通行に支障となる場合は、原則として民地等への移設もしくは無電柱化等を行うものとする。さらに、不法占用物件についても、撤去指導又は除却を強化するものとする。
1.1.4 道路標識・道路標示、看板・路面表示等
歩行者、自転車、自動車の通行空間等を道路利用者に明確に示すため、通行空間の種類に応じて、「道路標識、区画線及び道路標示に関する命令」に定められる道路標識及び道路標示を適切に設置するものとする。
道路空間の再配分を行った場合、視認性を考慮し、必要に応じて、道路標識や信号機の移設や、区画線の引き直しを行うものとする。…(中略)…

2.1 交差点部の設計の基本的な考え方
(1)分離形態の連続性
交差点部において歩行者、自転車、自動車の適切な分離、共存を図るため、交差点部の分離形態について、前後の自転車通行空間と同様の形態をできる限り連続的に確保すべきであり、自転車ネットワーク形成のいずれの段階においても、ネットワーク端部の交差点部において、突然通行空間を打ち切ったり、安易に自転車通行空間を歩道通行へ誘導したりするのではなく、交差点部を超えたところまで路面表示を設置する等適切な交差点処理を行うことを基本とするものとする。
一方通行の自転車道を暫定形態として双方向通行の自転車道が規模の大きい交差点に接続する場合においては、交差点内で自転車同士が交錯すること、自転車が自動車と逆方向に通行することを避けることを基本とするものとする。
(2)通行空間の直線的な接続
自転車の安全性、快適性を向上させるため、自転車動線の直進性を重視し、一方通行の自転車道、自転車専用通行帯のいずれの場合も、自動車と同じ方向に通行する自転車の交差点部における自転車通行空間は、直線的に接続することを基本とするものとする。
(3)交差点内の通行方向の明確化
交差点における自転車の安全な通行を促すとともに、自動車利用者等に自転車動線を知らせるため、自転車の通行位置及び通行方向を明確化する路面表示を設置するものとする。
信号のない交差点のように規模の小さな交差点においては、自転車通行空間に応じた通行方向とすることを基本とし、一方通行の自転車道や自転車専用通行帯では通行方向を明確化する路面表示を設置し、双方向通行の自転車道では自転車横断帯を設置するものとする。
(4)左折巻き込みに対する安全対策
自動車から自転車を確認しやすくし、左折巻き込み事故を防止するため、交差点流入部において、自転車専用信号の設置により自動車とは別の信号制御を行うことを検討するものとする。なお、自転車専用通行帯の場合には、自動車の進路変更禁止規制を実施して自転車と自動車を分離するものとする。また、自転車の停止位置を自動車よりも前出しすることを検討するものとする。
左折巻き込み事故の防止対策として、交差点流入部において、自転車専用通行帯の交通規制を解除した車道左側部の車線内に自転車の通行位置を明確化した路面表示等を設置した上で、自転車と左折する自動車を混在させて一列で通行させることも検討するものとする。
(5)二段階右折時の滞留スペースの確保
交差点内の通行方法の明確化のために設置した路面表示と歩車道境界の縁石で囲まれた範囲は、自転車が二段階右折する際の交差点内での滞留スペースとなることを周知するものとする。また、必要に応じて、歩道を切り込むことにより、交差点内に二段階右折時の自転車の滞留スペースを確保するものとする。

(前同)

6.結語

交通ルールを守ることは言うまでもありませんが、それだけで事故を防止することはできません。加害者にも被害者にもならないように、日頃から安全運転を心がけることが肝要です。また、市町村道を管理する自治体も、「自転車専用通行帯」の設置する等、自転車の交通安全対策に取り組むことが望まれます。

産業法務の視点から 平川博の最近記事

  1. 最終回 人類滅亡直前の危機

  2. 第85回 変貌する報道機関

  3. 第84回 とんでもない自動車運転

  4. 第83回 運転免許不要の車

  5. 第82回 耐え難い睡魔との闘い

最近の記事

2024年3月
 123
45678910
11121314151617
18192021222324
25262728293031
PAGE TOP