新型コロナ感染拡大により外出の自粛が続き、懸念される問題の一つにあるのが、運動不足です。「密」を避けてスポーツジムに行かなくなってしまった人、習い事やスクールが休止となってしまった人、感染の可能性を懸念し控えている人は多いかと思います。そのような状況下ですが、人によっては運動する時間が増えた人もいるようです。
・運動時間が増えた人は一定数いる
以下は都内某企業の2019-2020年度の健診結果になります。(N=804)まさにコロナ禍であった2020年度と、2019年の運動習慣の実施率(*)を比較しますと、男女ともに増加が見られます。
*特定健診問診より「1回30分以上の軽く汗をかく運動を週2日以上、1年以上実施」に「はい」と回答したもの
この数字だけでは、コロナ禍による運動習慣の増加とは、なかなか断定はできないものですが、実際増えている数字であることは確かであります。何となく周りを見ても、ハイヒールを履く女性が少なくなり、ウオーキングシューズをオシャレに履きこなし、男性も動きやすいカジュアルスタイルの方が多くなったかと思います。また普段あまり気にしていなかった公園の周りも、朝夕だけでなく、日中の時間帯でもランニングやウオーキングを黙々としている人、など目に付くようになった気がします。
また、労働時間(**)を組み合わせてみたものが次のグラフになります。「改善」の数字に着目してみてください。
継続:2019年度運動習慣があり、2020年度も運動習慣あり
中止・中断:2019年運動習慣があり、2020年度運動習慣なし
改善:2019年度運動習慣なしが、2020年度運動習慣ありになった人
**超過勤務時間月平均60時間以上を「超過勤務あり」、60時間未満を「超過勤務なし」としたもの
これは業種にもよりますが、テレワークにより通勤時間が無くなったことで運動時間に充てることが可能になったことも、考えられます。特に、超過勤務があった人は「運動したいのに時間がない」と思っていたところに、時間ができたことも良い後押しになっていることも考えられます。実際に従業員の方からは「朝起きて就業前に散歩をするようになった」「就業後にジムに通えるようになった」「新しい習い事を始めることにした」などの声も聞いています。さらに、中止や中断の数字もありますので、この方々が再開するようになると、運動習慣がある人が少しずつ増える傾向を期待できるかもしれないです。
・笹川スポーツ財団調査より
公益財団法人笹川スポーツ財団では、「新型コロナウイルスがスポーツや運動習慣に及ぼした影響」を把握するため、全国調査が実施されています。調査対象は全国の市区町村に居住する18~79歳の男女5,000人。第1回調査は2020年6月、第2回は10月そして第3回が2021年2月に実施されましたので、結果が公開されています。
全体的にみると運動実施率は低下しているのですが、新たに開始した人も含まれているとのこと。運動を実施しなくなった人の数字も一定数ある中でも、外出自粛による運動不足や体力維持のために、感染対策を実施しながら運動に取り組む人も一定数見られていることが示唆されています。
種目別にみますと以下になるのですが、興味深いのは下に続く、実施率が増加した種目になります。
感染対策に気を付けながら、個人あるいは少人数で楽しめるスポーツとしてゴルフが取り組みやすいスポーツのようです。
同様に、水泳も密を避けて感染対策が比較的守りやすいスポーツかもしれません。確かにゴルフは密が避けられ、コースに出れば自然の中で伸び伸びとした解放感もあり、スポーツとしては魅力があるのかもしれないです。
・懸念される二極化
二極化はどんなことにも当てはまることですが、運動に関しても取り組まない人は何もしないままですが、好き嫌いにかかわらず、必要性や義務感など何かしら意識のある人はどのような環境下においても、ご自身で最善策を見出して取り組んでいるようです。同じく笹川スポーツ財団の調査結果になりますが、運動の実施頻度の変化を示しています。
このグラフによりますと、週5日以上(毎日)行う人は、コロナ禍においても変化ないことが分かります。それ以外の人は、いったんコロナ禍(2020年2-5月)に入ると、数字が減少していることが分かりますが、コロナ感染拡大前(2020年6月-10月)の数字に戻ってきていることが分かります。つまり控えていた運動を再開していることが伺えます。
もう一つ興味深いことは、赤枠で囲んだ週1-2日以上の人は、コロナ感染拡大前よりも運動実施率が増えていることです。感染に気を付けながらも、運動に意識を向けて取り組んでいる人もいることが分かります。
緊急事態宣言は解除されても、まだまだ感染に気を付けて生活していく必要があります。その中でも運動不足は体力と筋力の維持のためにも大切なことです。各企業でも工夫をし、各自家庭で運動できる用品を支給、ストレッチや体操動画を作成し周知、運動不足解消につながる健康管理アプリを提供、など、運動機会を提供できる取り組みをおこなっています。
動きやすい季節になってきましたので、マスクをつけながらも楽しめるスポーツや運動の機会を取り入れる工夫をしていきたいものです。