活性化しない、ネガティブ思考に苛まれている、そのような組織は今の日本社会には満ち溢れています。非アクティブであることの要因は色々考えられますが、社会活動そのものは人とヒトとのつながりで成り立っています。その繋がりの何処かに綻びや負の影響を受けることで、その負の要素が火急的に周辺に伝染していきます。目に見えない、まるでパンデミック時のウイルスのように、あらゆる組織の中に入り込んでいきます。
負の要因としては、パンデミック後低迷する経済状態、ガザ侵攻やウクライナといった長期の戦況、円安による物価高、海外からの各種圧力、日本の技術進歩の停滞などほんの一部は思いつきます。しかし、派生する原因を追いかければ追いかけるほど、どこに本質が突き当たるのかがわからなくなるほど、思考がトライアングル状態になってきてしまいます。
活性化しない、ネガティブ思考に苛まれているというある組織の場合、その隣り合うところ(取引先、顧客、社員の家族等)もその傾向が強いです。組織全体がネガティブなバイアスで占められている状態とも云えます。一人の個人として有するバイアスはそれ自身、自分自身が気付くことで対処できますが、組織全体に蔓延したバイアスはどうすればよいのでしょうか?10人、100人、1000人と大勢になればなるほどバイアスの占める影響を取り除くことは至難の業となります。重たい雰囲気が醸し出す、一個人の声も行き届いにくい状況となっていることでしょう。一言でいうならこれらは現状を指し示す自組織の“風土”とも取れます。社風、家風、校風など、末尾に“風”が付くように、必ず“向き”を持っています。この負の方向に吹く風の向きを変えるためには組織の壁に「風穴を開ける」ことが必要です。別な穴を開けることで、新鮮な風を呼び起こすことができます。
では、どのようにすれば組織の壁に「風穴を開ける」ことができるのでしょうか。
まずは多勢に無勢の状態にある現状、この無勢を徐々に増やしていくことです。一人では当然できないため、俄かにコアとなる同士を集めていき、二人が三人、五人、十人と一人ひとりの挑戦したい想いを結集していくことがやがて多勢に結びつく、という方法です。一人ひとりが呼応することでムーブメントを引き起こしていきます。ファンを増やす、ということとも違うのですが、一人ひとりが行動することで、壁に風穴を開けるためのパワーをもたらすエネルギーも必要となります。すなわち、「ベクトル化する」ということです。
ただ、これらの同士結集においても旧保守勢力による多勢側の抵抗は根強いものがあります。組織内で行なうのであれば企画書などに整えて組織の枠内で行なうための根回しが必要になってくるため、抵抗に打ち克つために違う意味でのエネルギーが必要となってくることと、それに調整のための時間を要してしまいます。それであればサークル活動的な感じで“非公式な場”を作ってしまうことが早いです。新たなことへの挑戦は旧来の手順に則っていてはスピード感も付いて来ないため、プロトタイプ的にどんどんできるところから着手することが重要です。この場合、主体的なメンバーが“向き”を同じにして取り組むため、潜在的に埋もれていた力が弾けることで、何十倍ものパワーで仕上がっていくことでしょう。
ここで当然、多勢側の抵抗勢力は無勢側の実績が見えてくることで何らしかの影響を受けてきます。徐々に多勢側の一部の人が触発されてくることで、同調バイアスが働き出します。多勢側の抵抗勢力は、やらないことへの理由付けを行なうために問題点を次々に探し出してきますが、これを払しょくするために、「称賛点を探す」ことに視点を変えてしまうことです。組織のトップがこのあたりに取り組めば一気に流れが変わり、開いた風穴に一気に風が吹き込みだします。これまでの当たり前が当たり前でなくなり、組織全体としての美点凝視の状態になってきます。
一つの組織で流れが変わると、それが同じく取引先、顧客、社員の家族等にも伝播していきます。これらが全体的に変わっていくことが本当の意味での理想ですが、ここは国を動かしているコアたる政治家が変わらない限り、一朝一夕には進まないことも事実です。まずは風穴を開けられるサイズ感のところからでも開けていくことを皆さんも心がけてみませんか?
(株)シー・クレド
代表取締役 乙守 栄一