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第105回 旧き日本の想いから呼び覚ます“幸福”

物心付いたころ頃から無意識の中、時間に追われる日常を当たり前のように過ごしてきました。高度経済成長のど真ん中である昭和40年代、大阪万博が開催され、よもや経済もうなぎ登りの時代でした。競争社会を美徳とし、仕事のやり方そのものも見様見真似でとにかく成果、売上を上げることにのみに集中し、その働く姿というものは戦後日本の価値観を大きく牽引してきました。

それ以前にもイギリスの地で発祥した産業革命に端を発し、日本においても明治維新以降、急速な西洋化に舵を切らざるを得なくなり、それと共に時間意識も大きく変わってきたような、その原点がこの明治という時代にあった気ががします。

今、大河ドラマで「光る君」が放映されています。貴族における生活が舞台の中心となっていますが、ここに感じる世界観はやはり優雅さであり、宮廷における美の神髄とでもいえる文化の総帥があります。これらの優雅さ、美の神髄を産み出すその根源はやはり“心の余裕”ということでしょう。これらの心の余裕は自分が自分への意識を向けている結果に他ならず、その結果がヒトへの想いやふと目にした情景を詠んだ“和歌”のやり取りとなるのでしょう。和歌を通じて人の想いの機微を慮るやり取り、ここに旧き日本の想いが見られるのではないかと考えられます。

心の余裕とは、グラスが水で一杯満たされた状態を指します。溢れんばかりの水、溢れた水はお裾分けという形で他者に行き渡ります。一人ひとり、この水を心のグラスにどう満たしていくか、現在における大きな問題点にぶち当たります。仕事に効率を求めるBPRという概念が一昔前に流行しました。今の時代においては、IT化(現在ではDX化)により、RPAやAIを活用した業務効率化とでも云えるのかもしれません。効率化された結果、それは何を産み出しますか?空虚感しかない、人が10人いたところ、周りに人がいなくなってしまった、活気がない等々、色々な劇的な“変化”をもたらしました。駅前に大手スーパーが進出し、地元商店街がシャッター通りとなってしまった感と似ているのかもしれません。

知らず知らずのうちに、人は作業を行なうことが当たり前と感じさせられ、その作業の中にこそ真の幸福があると思い込まされて来ました。新聞やテレビ、ラジオの報道することが真実であり正しい、そこを起点に何事も物事を考えてしまう思考回路が構築されてしまった今の日本人。しかし、ここにもどこか空虚感を直感レベルで感じている人も少なくはないはずです。生きることそのものに効率を求めていませんか?日々、何に感動していますか?

旧き日本は虫の音にも優雅さを感じ、“スイッチョン、スイッチョン”、“リンリン、リンリン”“ツクツクホ~ウシ”と鳴き声を文字に当てはめます。日本語に擬態語、擬音語のバリエーションが多いのはこのようなところにも通じています。虫の音を日本人は左脳で捉えるため文字に起こすことができる一方、それ以外の国の人は右脳で捉えているため、雑音にしか聞こえないという研究結果もあるほどです。これを外国の人は日本人が虫と会話できると捉えています。ここにも自然相手とはいえ、ある意味優雅さを感じるのではないでしょうか。

この日頃から感動をする生き方をどれだけ心掛けられるか、そこに真の喜びが隠されています。人は何のために生まれてきたのか?相手をほめたたえ、感動を与え、祝福するために産まれてきた、それが人間の役割だと云われます。真の喜びそのものはご先祖さまからのギフト券だとも云われます。決して血縁関係だけではない、関わり合う人がそれぞれに想いを寄せる、このことが真の幸せへのカギだと考えられます。

現在の人はこれらの感動を味わう日常を見失っています。感動を味わう暇もないほど、時間に追われ、隙間があれば何かを行なってしまう、無駄を亡くす動きを突き詰めてしまっています。この無駄を亡くす動きは同時に感動をする機会を奪ってしまっている、すなわち忙しい(心を亡くす)状態になってしまっています。

冷静な自分を取り戻すために呼吸法が云われます。息をすることに気を向ける、ずっとでなくても息することを意識することで、一時的ではあっても自分の心(→息という漢字の構成)に目を向けることができます。旧き日本の生活感から呼び覚まされる現在の時の過ごし方、皆様なりに工夫をされることで、心のグラスを一杯の水を満たしてみませんか?優しくなっている自分に気付くことができるはずです。

株式会社シー・クレド
代表取締役 乙守 栄一

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