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  1. 普遍的リスク対策 乙守栄一
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第108回 イノベーションを行う上での余白/ブレイクスルー思考の重要性

イノベーションを起こさなければ企業は生きていけない、と言われて久しい状況が続いていますが、どの企業も戦略を練るうえで過去の延長線上を基準に3年後、5年後の事業を検討する中長期計画を立てているに過ぎません。しかし、過去の延長線にぶら下がった中長期計画では何のイノベーションの発想も得られません。少しでも上振れ、下振れしそうなことが出てこようものなら、保守派経営陣は悉くこれらを潰しにかかり、中長期計画を盾に猛反対します。これらの企業内ドラマがあちらこちらで形を変え、品を変えて行われていることは言わずもがなです。

一方で、時間軸として1分、1秒たりとも無駄にできない、このような発想でプロジェクトの責任者たる人間が、そのプロジェクトの関係者全員に強力なタイムマネジメントを強いることは、結果として良いものは生まれません。あるチェーン店系列のレストランでは、仲居さんなどの動線を計測し、管理するためにGPSを使い、徹底的に動きに関するデータを取ることとなりました。生産性も向上し、夜間の売り上げ件数が4割も増したという報告もあります。数字ばかりに目が行く一方、ホットコーヒーが温い/顧客へのレスポンスが遅いなど、仲居さんに対する顧客からの反発があったのも事実です。時間という縛りに追われ、顧客への気配りまでこのGPS管理の仕組みが奪ってしまったということで、顧客対応の品質を大きく下げてしまい、既顧客の信用を大きく失墜してしまいました。時間(自由)が奪われてしまった結果の成せる業と言わざるを得ません。

このように、余白を奪ってしまうことで組織力が崩れてしまうことは、機械と人間の差が判らずに業務改善を行なってしまったことが大きな要因であることはあまり誰も気づいていない事実だと考えられます。生成AIの技術が日に日に進歩し、決まった仕事についてはDX化の名のもと、機械にできることは機械に任せることになってきています。人間にしかできないこと、それは頭を使って事を成す、ここの見極めを行なわずに業務を改革してしまうことのないようにすることが、今後のシンギュラリティ時代の到来への備えとなります。

余白とは何か?余白は無駄ではありません。冷静な判断を一人ひとりが行なううえで欠かせない時間的な“のりしろ”です。この“のりしろ”があまりにもない中で事を行なうと、ミスを誘発することにも繋がり兼ねません。リスク管理上、極めて憂慮しなければならない点です。この余白を如何に有効活用するか、そこが一人ひとりの果たす大きな要となってきます。

イノベーションを起こすためにはまず、一人ひとりがこの余白をどう確保するか?が極めて大事になります。さらに、この余白の中で考えるべき事項について、方向を誤らずに考える必要が出てきます。既存の枠組みに囚われることなく、本質を探し出し、その目的に合致した手を打つ、それが本来必要とすべき中長期計画の根幹に据えることになるからです。決して過去の延長線上ではありません。

既存の殻を破るための思考法の代表例として、ブレイクスルー思考というものがあります。この思考法は一言でいうならば、目的の目的をとことんまで突き詰め、未来時点から現代への逆引きで計画を立てていく思考法で、日頃の殻・型を打ち破り、前例・慣例に則った思考起点をガラッと大きく変える要素を秘めています。いわゆる、イシューを見つけ出す一つの方法と言えなくもありません。生みの苦しみを伴う思考法であり、一朝一夕には身につかない方法かもしれません。ただ、思考のループに陥らず、本質を追求するためには、ブレイクし(破壊し)、スルーする(通り抜ける)考え方は大きな武器となります。

確保できた余白を活用し、その余白の枠の中でイノベーションを起こすための土壌づくりに、ブレイクスルー思考を活用することは大いに役立ちます。一人で考えるのではなく、関係者の頭脳が集って意見を出し合い、その結果についての意気投合、全員一致団結が実現できた暁には、イノベーションに関するテーマへの取り組みが主体的に進み、強固なスピード感で走り出していることでしょう。

皆さんも「余白の確保」、「ブレイクスルー思考」の2点を活用した思考のトレーニングを行なってみませんか?きっと気づきが多く、新鮮さを感じることとなるでしょう。

株式会社シー・クレド
代表取締役 乙守 栄一

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