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  1. 普遍的リスク対策 乙守栄一
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第114回 センス、型を使ったリスク対策

センスが良い仕事をこなすこと、これはある種天才の成せる業のため、誰でもできることではない、と半ばあきらめの境地に至る人が多い思われますが皆様はいかがでしょうか。しかし、このセンスを産み出すにもある種法則があり、決まった型があるとなった場合、これを活用する手があるのではないでしょうか。

俗にセンスを使うケースは、マーケティングの場などがあります。人の心理の奥底にある言葉を見つけたとき、言い換えるならば痒いところに手が届いた時の快感にも通じる「そうそう」「その感覚」という誰にでも共感を呼ぶフレーズが見つかった時、よくその商品はヒットすると言われます。

話は古くなりますが、読売ジャイアンツのONといえば王貞治氏、長嶋茂雄氏が3番、4番コンビ。努力の王氏にセンスの長嶋氏といわれますが、長嶋氏は擬音語、擬態語の表現でバッティングなどを指導する方法はメディアでもよく報道されています。このセンスの指導に対し、努力がなかったかというとそうではありません。

ある野球関係者の話をリアルに訊いたことがあります。長嶋氏が極度の不振に喘いでいた時、当時の巨人ファンであった弁護士の人が、兵庫県芦屋市にある某巨人宿舎に単独乗り込み、長嶋氏のバッティングの不振原因を伝えようと、彼の撮影した長嶋氏のバッティングスタイルを写した連写の写真を持参し、長嶋氏に接触を試みたそうです。たまたまその場を通りかかった長嶋氏がバットを持って“俺のスイングを見てほしい”とその弁護士の人に伝えると、目の前で何度か素振りをし、その振りの音が最適だ、と野球のイロハもさほどわからないその弁護士の人が適当に伝えた翌日、感覚を得た長嶋氏は阪神戦で打撃が見事回復しました。その弁護士の人には後日、お礼にと長嶋氏のサイン入りバットが送り届けられたそうです。

長嶋氏の解決しようとした糸口がバットスイングの音であった、その糸口に至るまでの喘ぎ苦しむ中での解決までの努力は並々ならぬ道程であったことは言わずもがなでしょう。センスが生まれながらに持った能力であるならば、不調ということには至らず、すぐに自分自身の感性だけで解決する状況にあったはずです。センスの裏には思い悩む中での解決への糸口を見つける努力は為されている最たる例ではないかと考えます。

マーケティングはゼロからイチを作り上げる商品購買戦略の源泉として、アイディア出しの局面で、このセンスを活かす局面が出てきます。大手広告代理店の中で行なわれている「型」があるそうです。

マーケティングの実務における日頃のトレーニングとしては、この型を養う、身に付けるためのトレーニングとして、身の周りのことに常に関心を示すことと言われます。表に見えていることの常識の裏側を探ることで、物事の本質が見えてくる、その本質こそ隠れている、日頃から言葉にできない共感を呼ぶ源泉になります。その裏側に潜む本質を探るためのトレーニングをマーケターの人たちは時を選ばず、あらゆる局面で養っているそうです。

見方を変えると、型を持っている人がその型を使う場合、第三者にはセンスに見えるのではないかという私自身の発見です。当然センス良く見えるというのはパフォーマンスなど、個性に依る部分もあるかと考えられますが、基本はこの「型」を習得した人に共通する用語として「センス」という言葉に置き換えられるのではないでしょうか。

リスク対策には、ISO31000という標準規格が存在します。原則論としてこのISO31000の上物として、情報セキュリティならばISO27000、品質ならばISO9000、環境ならばISO14000といったように分かれていますが、リスク対策の原則はすべてこのISO31000に従っています。置き換えればこのISO31000が「型」となっているわけです。

このISO31000を型としてISO27000等の個別分野の型ができあがってきています。それを繰り返し、型にしていくことでそれぞれの基準、ガイドラインが出来上がってきます。これを個々人に置き換えるならば、これらの「型」に習熟することこそセンスを磨く方法論になってくるのではないでしょうか。この型を身に付け、いざ有事発生時に慌てふためくことのない、リスク対策のセンス、型を身に付けていきませんか?長嶋氏のようにふとしたきっかけで気づくポイントが早くなるとも限りません。その早さこそ、不確実なタイミングで予想に反したことが起きる脅威に対応した、臨機応変なリスク対策、それこそセンスが、具体的に形を表し、力を発揮させることに活用できるのではないでしょうか。

株式会社シー・クレド
代表取締役 乙守 栄一

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