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  1. 外見リスクマネジメント 石川慶子
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第4回 言葉と見え方が不一致だと相手を混乱させる

外見リスクマネジメント
石川慶子氏

社会心理学の観点から被服や化粧のもたらす効果が研究され、うつ病臨床でも活用されています。このことは外見が他者だけではなく、自分自信へのメンタル面にも影響を与えているといえそうです。

印象マネジメントでは、米国の社会学者アーヴィング・ゴフマンが数多くの学問的研究をしています。
どのような説をとっているかというと、「コミュニケーションは自身と他者との相互作用を次々と方向づけ、形成していく過程であり、個人の外見はこのようなコミュニケーションのためのひとつの媒体となる。外見は、自分自身と他者をよりよく理解するうえでの助けとなる」。従って、「言語・非言語コミュニケーションに不一致があると一貫した印象を形成できない」と述べています。これは、つまり、相手とよい関係を構築するために一貫性が大切だということであり、戦略的な視点からすると、混乱させたい場合や相手を不安にさせたい場合には、意図的に不一致にする手法をとればいいともいえます。

相手だけではなく、自分への影響について研究した内容もあります。他者が自分に対して形成していると思われる印象をとして自分を知ることを「自己知覚覚醒(looking-glass self)と命名。他者が自分のことをどのように考えているかという想像を通して、自分の外見・マナー・目標・行為・性格・友人・その他のことを考えるし、またそのような想像からさまざまな影響を受けるとしたもので、3つの局面に整理しています。(クーリー 1902)

1.自分の外見が他者の目にどのように映っているかと想像する
2.その外見について他者がどう判断・評価するかを想像する
3.プライドや不満といった自己感情の表出

これは、女性であれば、理屈ではなく無意識に毎朝鏡の前でやっている可能性があります。今日のメインのステークホルダーは誰か?取引先との商談?夜のパーティ?相手の好みは?どう自分は評価されるか?その結果が望ましい方向にいくだろうか、といったシーンは容易に想像できます。筆者自身も行っています。

無意識といった視点での研究もあります。「印象マネジメントは、現実の、あるいは想像上の社会的相互作用に投影される自己のイメージを統制しようとする意識的ないしは無意識的な試みである」(シュレンカー 1980)

服装に焦点を当てた研究もあります。「服装は自己イメージの重要な要素。自分の外見を通して自分自身の望ましいイメージを伝達し、印象マネジメントをする(神山 1990)」

自己は1つではなく複数であるとした研究も興味深いといえます。「被服は物質的自己、個人が被服に与える意味は社会的自己、自分にとって重要な価値は精神的自己」(ミード 1934)

危機管理の観点でいえば、失敗とイメージとの関係を明らかにした研究もあります。「失敗したことを他人に知られると、自分の社会的アイデンティティを傷つけられる。そのマイナスを挽回しようと他者からの承認を一層強く求める。相手の中にできた自分への悪いイメージを払拭し、よりイメージを構築するためのはたらきかけをする。他者からの自分への評価が否定的だと自分の社会的アイデンティティは低下する、評価が肯定的であればアイデンティティを高める。ゆえに自分が取り返しのつかない失敗をしたとしても相手から肯定的な評価を受けることができれば自分を肯定的に評価できる」。(リアリー 1983)失敗してそのままでいいという人はいないでしょう。存続するためには、生きていくためには自分を受け入れてほしいと願うのは人間の社会的欲求の基本だからです。筆者流にいえば、そのあがきや努力がチャンスを生み出し、成長につながり、新しい自己覚醒になると信じて疑いません。

下記リンクをクリックするとコラムと連動した動画を視聴することができます。
https://www.youtube.com/watch?v=C3S9ZgrSgyo

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