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  1. 広報の目 風間眞一
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第5回 提携カード(代行カード)の発行

【百貨店の自社カードが続々誕生】
大衆消費社会の到来が叫ばれた1960年代。家電や家具など耐久消費財はもとより、衣食、レジャーなどあらゆる分野で人々の購買意欲が高まった。
この時代は銀行系カード会社の設立が相次いだほか、家電や自動車メーカーの割賦販売制度が本格稼働。信販会社が販売店に代金を立て替え払いする「ショッピングクレジット制度」も開発されるなど、さまざまなクレジットシステムが、増大する消費需要の受け皿として登場した。
大手小売業でも、三越や伊勢丹などで60年秋ごろに銀行と提携した“お買い物預金”制度がスタートし、翌月一括払いで使えるクレジットカード(またはクレジットプレート)が発行された。もっとも、このカードは定期預金(5万円・10万円)の範囲内で“つけ”で買い物ができるものであり、与信機能はなく、クレジット販売と位置付けるには無理があった。
百貨店で初めて自社クレジットカードを発行したのは60年12月の西武百貨店。くだんの預金担保方式は採らず、外商の上得意掛け売り客を対象に自店だけで使えるハウスカード「西武カストマーズカード」を発行した。
これが契機となり、62年11月から東武百貨店、小田急百貨店と松屋、63年4月に伊勢丹、同年9月に松坂屋、64年10月に近鉄百貨店、同年11月に京王百貨店、67年4月に三越、68年3月に高島屋と、自社クレジットカードの発行が相次いだ。
これら自社カードは一括払いで富裕層の外商客を相手に発行されたため、幅広い顧客層の確保には店頭客へのアプローチが不可欠だった。そこで百貨店は銀行系など汎用カードの加盟店になったり、信販会社と組んでショッピングクレジットを取り扱ったりしたほか、一般客の囲い込みを狙って新たなカードの発行に乗り出す動きも見られた。
例えば、三越は68年7月にわが国百貨店で初となる「リボルビング(回転信用)方式」の自社カードを発行。他の百貨店でも同様なクレジットシステムを採用し、カードの発行や稼働に力を入れるようになるが、こうした割賦カードは代金未回収のリスクも高く、依然として信用度の高い顧客層に限られる傾向は否めなかった。
クレジット専業でない百貨店が一般客向けにカードを発行するには、発行に必要な信用調査や割賦事務処理、代金回収などのノウハウに乏しく、各社の意気込みとは裏腹におのずと限界があった。信用調査の要らない富裕層限定のカードと異なり、会員が増え売上げが伸びるほど代金未回収の山に悩まされかねない危惧があったのだ。

【百貨店が代行カードに注力】
そうした悩みを解消したのが、信販会社とタイアップした提携カードの発行だった。これは、信販会社が百貨店のブランドでカードを発行し、顧客の信用調査や代金回収、事務処理から未収債権のリスク負担まで百貨店に代わって行うという仕組みであり、自社割賦カードの本格発行に踏み切れない百貨店には朗報となった。百貨店は会員募集と販売促進に専念するだけでよく、自店のファン作りや売上げ拡大に大いに貢献。このカードは「代行カード」と呼ばれた。
そもそも、この提携方式は「ショッピングクレジットの手続きを簡略化できないか」との要望から考案されたものだ。顧客がショッピングクレジットを使って商品を購入する場合、買い物の都度、分割払い契約を結ばなければならず面倒だった。これをカード契約に切り替えれば、リピーターは簡単にクレジット利用できるというわけだ。
百貨店との代行カード発行に熱心だったのは日本信販(現三菱UFJニコス)。同社は68年3月に高島屋と提携して高島屋ブランドの「ローズクレジットカード」を発行。これを皮切りに、松坂屋、西武百貨店、大丸、東急百貨店、伊勢丹など多くの百貨店で相手先ブランドのカード発行が続いた。
日信販は大手チェーンストアにも代行カードの発行を働き掛けた。68年4月にイトーヨーカ堂と組んで「クローバークレジットカード」を発行したのを手始めに、70年代に入り、ダイエー、ユニー、ジャスコ(現イオン)などでショッピングクレジットと併用するかたちで代行カードの提携が進んだ。以降、他の信販会社での取り組みも含め、全国の百貨店・チェーンストアで代行カードの発行が盛んに行われるようになった。
こうしたタイアップは百貨店・チェーンストアに限らない。優良客を組織化したい家電量販店や婦人服・紳士服店、呉服店、自動車ディーラー、ホテル、化粧品会社、鉄道会社、石油会社、航空会社など多岐にわたった。
小売業以外では、例えば、日信販が70年1月に帝国ホテルと提携して「帝国ホテルカード」を発行し(写真2)、82年9月には資生堂と組んで「花椿カード」を発行した。この時、全国の資生堂チェーン店で使える花椿カードとは別に、汎用性のある「日本信販カード」を2枚併せて発行する「ツインカード」方式が採用された。

【ダブル、トリプルの発行が主流に】
その後、ツインカード方式は二つの機能(自社カード+汎用カード)を1枚で併せ持つ「ダブルカード」方式に変わる。さらに、VISAやマスターカードといった国際カード機能が加わると三つの機能を有する「トリプルカード」と呼ばれた。
トリプルカードのはしりとなったのは、東急グループ。84年6月にダイヤモンドクレジット(DC、現三菱UFJニコス)と組み、グループ統一カード「東急カードTOP」を発行した。グループ内の百貨店やスーパー、ホテル、旅行会社などで使えたほか、DCマスターカードの機能も組み込まれ、DC加盟店や海外のマスターカード加盟店でも幅広く利用できた。
1枚で複数の機能を持つ多機能カードの発行は80年代半ば以降に活発化する。提携先も営利企業にとどまらず、各種クラブや同窓会、スポーツチームなどの非営利団体にも及んだ。このカードは、「アフィニティカード」と呼ばれ、売上金の一部が提携先に寄付された。「ユニセフVISAカード」(三井住友カード)や「日本野鳥の会カード」(オリエントコーポレーション)などがある。
いずれにせよ、多くの企業・団体でカード業務のノウハウやシステムを持っていなくても、自らのブランドのカードを発行できるのは、ひとえに提携カード制度によるところが大きい。
掲載号 / 週刊金融財政事情 2020年2月24日号

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