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  1. 広報の目 風間眞一
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第6回 百貨店・チェーンストアのカード展開

【モノが売れない時代、カード事業に注力】
 1973年に第4次中東戦争が勃発し、オイルショックの影響で狂乱物価が社会を襲った。“モノが売れない時代”の到来で、百貨店・チェーンストアは物販だけでなく、さまざまなサービス商品の販売にも注力したほか、財布のひもが固い消費者の購買意欲を喚起しようとクレジットカード事業にも熱い視線を向けた。

例えば、百貨店では外商の上得意客向けの自社カード(一括払いカード)はもちろん、信販会社と組んで発行する代行カード(信販会社に代行発行させる自社ブランドのカード)も駆使して販売強化に励んだ。特に、代行カードは分割払いも利用できたことから、売上げ拡大に大いに強みを発揮した。

ただし、代行カードは売上げが増加すると信販会社に支払う手数料負担も増えるため、見過ごせないとする百貨店も現れた。これを自前発行に切り替えれば、委託コストの削減につながるだけでなく、顧客から得られる分割払い手数料やキャッシング利息も新たな収益源にでき、一石二鳥と考えたようだ。

また、販売時点情報管理(POS)システムが売り場に導入されると、カードとPOSを連動して顧客の購買情報を集め、品揃えや店舗戦略に役立てたいとのニーズからデータベースマーケティングにも強い関心が寄せられた。そうなると顧客管理を信販会社に任せる代行カードでは情報の活用が難しく、あらためて自前の百貨店カード発行への機運が高まることとなった。

こうした自社カード再構築の流れは、発行してきた複数の種類のカードの統廃合へと進んだ。さらに、カード業務処理の増加を見据えつつ、将来のファイナンス事業などへの進出をもにらんで、グループ内に専門のクレジット子会社を設立する動きが大手を中心に活発化した。

【自前のカード会社が大手中心に続々誕生】
 例えば、西武百貨店が経営参加していた月賦百貨店の緑屋は、80年8月に西武クレジットに社名を改称(89年、現クレディセゾンに)。82年に西武百貨店発行の西武カストマーズカードや緑屋が発行していたグリーンカードなどを西武流通(セゾン)グループ統一の「西武カード」として一本化し、83年3月に「セゾンカード」に名称変更した。クレディセゾンはグループのクレジット事業を一手に引き受ける中核カード会社となった。

さらにクレディセゾンはカードキャッシングや信用保証事業の取り扱い、提携カード事業の展開、国際カードブランドとのタイアップなどを推進し、着実に総合クレジット会社としての地位を固めていった。また、同社は中心客である主婦層やOL層を意識した販促策(年会費無料や有効期限のない「永久不滅ポイント」など)も積極的に打ち出し、カードの入会促進や利用率アップに結び付けた。

大手チェーンストアでも、ダイエーが75年に朝日クレジットを設立し、信販会社との提携をやめ独自の信用販売を始めていた。78年5月には信販会社12社と組み、地域ごとに発行していた代行カードに加え、自社カードの取り扱いを開始。83年2月に月賦百貨店の丸興を傘下に収め、グループ統一カード「オレンジメンバーズカード」(後にOMCカード)を投入した。その後、丸興と朝日クレジットが合併し、87年9月にダイエーファイナンス(後にオーエムシーカード、現セディナ)が誕生した。

また、ジャスコ(現イオン)が81年6月に日本クレジットサービス(現イオンクレジットサービス)を、82年5月にニチイ(後にマイカル、現イオンリテール)がニチイ・クレジット・サービス(後にマイカルカード、現ポケットカード)を設立した。

一方、百貨店でも82年9月に東武クレジット(現東武カードビジネス)、83年11月にクレジット109(現東急カード)、85年9月に阪急東宝クレジットサービス(現ペルソナ)、86年8月に高島屋クレジット(現高島屋ファイナンシャル・パートナーズ)、88年3月に大丸クレジットサービス(現JFRカード)、88年9月に伊勢丹ファイナンス(現エムアイカード)というように自社カード会社の設立が相次いだ。

日本信販(現三菱UFJニコス)やJCBとの提携カード路線を堅持していたイトーヨーカ堂も2001年10月にアイワイ・カード・サービス(現セブン・カードサービス)を設立。これらのカード会社は総じて、「流通系カード会社」と呼ばれた。

わが国で初めてクレジットカードを発行した丸井は、74年11月に小売業界初となるPOSオンライン信用照会システムを稼働させ、与信チェックのスピードアップや業務効率化を実現。翌年9月には「赤いカード」(現エポスカード)の店頭即時発行システムをスタートした。81年2月にはカードキャッシングの取り扱いを開始。2005年3月にはVISAカードの直接発行権を取得するなど、先駆的な取り組みで存在感を示した。

もっとも、カードキャッシングは78年5月に緑屋が、同年10月に丸興(現セディナ)が丸井に先立って取り扱いを始めていた。後に多くの百貨店・チェーンストアでもカードキャッシングを手掛けるようになるが、先行した3社はいずれも月賦百貨店であり、クレジット専業としてのノウハウや割賦払いの利用情報を保有していたのが奏功したようだ。

【流通業のカード戦略を規制緩和が後押し】
 そうした中で、通商産業省(現経済産業省)の一連の規制緩和に伴い、流通系カードは95年4月以降、全国で自由に分割払いやリボ払いを取り扱えるようになり、各社のカード事業に一層の弾みがついた。自社流通グループ以外に自前で加盟店網が構築され、さまざまな多機能カードの発行や新サービスの開発などが進んだ。これにより、流通系カードや自社カードの展開がわが国のカード市場に確固たる地位を築くに至る。今日、百貨店・チェーンストアの総売上げに占めるクレジットカード取扱高の比率は8割を超えたもようだ(注)。取扱高には銀行系など汎用カードの利用分も含まれるが、各社の自社カードの推進が大きく寄与したのは間違いない。

(注)
経産省「商業動態統計」「特定サービス産業動態統計調査」から得られる数値を基にクレジットカード取扱高比率を推計すると19年で82.9%。
掲載号 / 週刊金融財政事情 2020年3月2日号

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