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第65回 “融通無碍”からみえるリスクとチャンス

Covid-19が世界的な流行となり1年以上が経ちました。混沌とする経済、不穏な世界の動向、このような先の読めない世の中において、人々は普通に行なってきたこれまでの諸活動を自粛する無言の圧力と、心の中で一生懸命闘っています。

一つの歯車が狂うと、制御が利かずに走り出し、予想だにしない結果を次から次に産み出す暴走車のように、道なき道を突っ走り、秩序のない(整理されていない)状況を作り出してしまっています。熱力学でお馴染みのエントロピー増大の法則の最たるものとでも云えるのかもしれません。

片やテクノロジーは日進月歩加速度的に進み、AIやIoT、ビッグデータ、DX等のあらゆる要素を駆使し、思い思いの方向に進化しています。何が真実であるかが埋もれてしまう情報の散乱だけではなく、技術そのものもどのような使い方がされているかも散乱してしまっています。

このような状況を一言で“複雑系”や“カオス”と表現する人もいます。それを古典的な言い方で表したのがこの“融通無碍”になるのでしょうか。

融通とは「融通の利かない人だ」というように、機転が利かない、自由気ままだ、という意味に使われます。無碍とは、「碍」という意味が妨げるという意味がありますから、妨げるものが無いという意味になります。すなわち、融通無碍とは、何事にも捕らわれず、妨げるものが無いという意味です。仏教の中でも華厳経という経典の中で用いられている言葉のようですが、“この世にあるものはすべてつながっており、互いに影響を与えあっている”という意味になるそうです。

エントロピーが増大すると無秩序の世界に向かってしまうと言われます。晩秋に落ちる落ち葉も毎朝、箒で掃くからキレイになるのであって、そのままにしていると、風雨により散らかり、汚れてしまいます。日本古来、清めるということに重きを置く日本では、神社の境内で神職の人が毎日掃き清めることにより、平穏無事に毎日が暮らせますようにという祈りに通じる世界観があります。

松下幸之助氏はこの融通無碍という言葉の原点を「困っても困らない」という教えに置き換えています。台風で被災した自社工場を訪れた幸之助氏は一言、「赤ん坊はこけたら自分で立つんやで。困っても困らへんで」と言い残し、その場を立ち去ったそうです。目の前で起きている惨状に手をこまねいているのではなく、人生や仕事に対する大局観でもって何事も前向きに捉えることで、必ず乗り越えられるという原点の考えがあったようです。

今、Covid-19は世界中で変異種が猛威を振るい出しています。先が見通せない中、日本の株価は一時期3万円を30年来ぶりに回復しましたが、その材料さえ不透明な状況です。しかし、何か正体の見えないものが後押しし、株価が上がっているという状況があるのでしょう。別に株に投資をするしない、という話ではありません。原因そのものに明確ではないことが世の中たくさん存在するという一つの事例として挙げています。

リスクはチャンスの裏返しです。危機のときこそ大いに動くことのできるチャンスとなります。好機ととらえて動く、何の束縛もなく――。中長期計画に則って予算を編成し、経営承認の取られた事業に対してきっちり投資を行なうスタイルの大手企業は逆に小回りが利きません。投資に対する回収を行なわなければならないため、下手な軌道修正の判断ができないからです。小回りの利く小規模事業者だからこそできるリスクへのトライのチャンス、プロト的にチャレンジできる規模であるからこその大いなるメリットです。この“融通無碍”という言葉に危機へのリスク対策とその裏返しのチャンス、大きなヒントが隠されている気がしてなりません。

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