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  1. 普遍的リスク対策 乙守栄一
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第66回 移動現象論的リスク思考の重要性

鴨長明の方丈記に次の有名な一説「うたかた:水の泡」があります。
「行く川の流れは絶えずして、しかも、もとの水にあらず。淀みに浮かぶうたかたは、かつ消えかつ結びて、久しくとどまりたるためしなし。世の中にある人と住みかと、またかくのごとし。」

目に映る事象はすべて、移動という事象を伴っています。絶えず移り変わり、その変容は時には規則的、時には不規則に映るモノです。水の流れ、空気の流れ、熱の移動共々、ある科学的でかつ、経験的な法則から導き出される数式により、表されます。これを歴史という移動現象に当てはめた時、それは一種のヘーゲルの弁証法的な“歴史は発展しながら繰り返す”という一つの導きになるでしょう。鴨長明のように過去の碩学は経験則から移動現象を捉えていました。自然を一つの手本として、学びの対象を目の前に起きる事象そのものから“意味”そのものを捉えていました。

今、現状発生しているCovid-19によるパンデミックという事象そのものをどう捉えるか?これを移動現象論的に思考してみました。マクロな観点では人の動きというモノがあります。人は生物の中でも極めて高度にコミュニケーションを取る生物です。言葉を駆使し、表情や身ぶり手ぶりを交えながら会話をこれまで行なってきました。これらのコミュニケーションを取る一つの移動体である“人”が行き交うことに、殊コロナ渦においては制限が加えられました。ある特定の国ではロックダウンや都市丸ごと封鎖といったことまで行ない、コミュニケーションの断絶を図りました。飛沫感染や接触感染を抑えるということが主な目的でしたが、それへの反動はすこぶる顕著に現れました。行動抑制による運動不足や心理的障害といった個人的な弊害、社会に目を向ければ経済活動の停滞に伴い、連鎖的な倒産や廃業が相次いでいます。一方で、技術の進歩がコミュニケーションの代替手段を産んできました。 “オンラインコミュニケーション”です。テレワークに代表されるように、ICTを活用し、情報の流れを音声や映像でリアル中継できるようになりました。思いの外、仕事が捗り、生産性が大いに向上したことに新たな気づきを手にした方も多いのではないでしょうか。しかしながら、リアルなコミュニケーションに人は飢え始めています。コンサート、会食、スポーツ観戦、観劇など、デジタルだけでは得られない“生”の迫力はヒトの感性を芽生えさせます。技術も共々、リアルに追いつくためにVR、ホログラムなどは独自の進化をしていくでしょう。

次はミクロに視点を移します。昨今、新型コロナウイルスは数多くの変異種の発生により、事態の収拾の見通しが付かない状態となっています。ウイルスの特徴はどのように云われているでしょうか。ウイルスは空気中や付着面では永らえて生存することはできませんし、増殖もしません。必ずウイルスの宿主となる生命体の細胞に入り込んではじめて増殖(繁殖)ステップに入ります。人でいうならばこの増殖ステップに入った人は実感染となります。症状の有無は個人差がありますが、体内の細胞を通してウイルスが増殖しているため、リアルに接することで他人への感染リスクが高いということになります。エアロゾルを通じて、或いは洗面所のような場所を通じての感染が高いと云われますが、ウイルスの移動現象を考えた時、空間中にウイルスが存在している事実に変わりはありません。気流や落下によって、ウイルスは浮遊したり付着したりする、それに手を触れてさらに感染を広げると云われます。そうならば、空間そのものを永続的にキレイにする手立てがないものでしょうか?

大戦時のドイツ細菌戦への防御対策としてはじめて開発された特殊放電技術を使った“空気をハイエネルギー状態”にした空間の抗菌抗ウイルス対策。これを応用し、健康に害を及ぼす恐れのあるオゾンを抑制し、人に無害なOHラジカル※を活用した抗菌抗ウイルス技術ではじめて安心安全な空間を作り得る状態が判明しました。(単に機械の中で抗菌抗ウイルス対策をしただけで、抗菌抗ウイルスされた空気で空間を満たすことは一度真空状態にしない限り、移動現象論的にはあり得ません。)自発的に空間をキレイにするOHラジカルの存在感は今後、注目を集めることでしょう。このように、一部化学反応を伴いながらも、ウイルスそのものの移動をシミュレーションすることで、ある部分見えない不安を安心に変える“根拠”が判明するのです。

私個人は永らくITに携わって仕事をしてまいりました。情報の流れを業務のプロセスに当てはめ、情報がどこでどのように加工され、次の工程に流れていくのかを意識しながらシステムの開発に携わってまいりました。この情報の流れも一つの“移動現象”と捉えた時、世の中で起こることすべて流れがあり、移り変わる事象そのものと捉えられることに気づきを得ました。逆に言うならば、事象の流れをきっちり捉えることで、リスクの特定にも活かすことが出来るモノの見方を提供してくれます。

昨今、一次元でしか物事を捉えられない人が多くなりました。メディアが報じる情報をそのまま鵜呑みにし、あたかも自分の意見のごとく主張を繰り返す人などは典型例です。たとえ専門外のことであっても、一つの事象として物事を捉えた時、その変化を移動現象論的に捉えることでN次元の思考へと導いてくれるのではないでしょうか。潜在的なリスクを見つけ出すための新たな考え方になるのかもしれません。

※OHラジカル:ヒドロキシラジカルともよばれ、活性酸素の中の一種。活性酸素の分子種のなかではオゾンとならび最も反応性が高く、最も酸化力が強いと云われる。糖質やタンパク質だけでなく、ウイルス、菌、カビの素、花粉、PM2.5、VOCガス、臭いなどあらゆる物質と反応し、人にとっての無害化に貢献する活性酸素である。なお、オゾンはヒトの呼吸器系に障害を起こす原因物質とされ、厚生労働省からも使用濃度の上限が定められているため、空気清浄機等での実機械利用上では抗菌、抗ウイルス性にはさほど効力がないとされる。

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