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  1. 産業法務の視点から 平川博
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第67回 ワクチンの功罪

1.新型コロナワクチン開発競争
今年の1月から急速に世界中に蔓延している新型コロナウイルスの対策として、ワクチンの開発競争が激化しています。わが国でも、本年6月13日付発行の『医事新報Web』No.5016(2020-06-08更新)に掲載されている「新型コロナワクチン開発で『加速並行プラン』─厚労省」(P.72)toと題するニュース記事では、以下のように報じられています。


厚生労働省は6月1日、新型コロナウイルスワクチンの開発で基礎研究から薬事承認、生産までの全過程を加速化する「加速並行プラン」を同省ホームページで公表した。
加速並行プランは、通常、基礎研究、非臨床試験、臨床試験と段階的に進めるワクチン開発を、基礎研究と非臨床試験・臨床試験を並行実施し、これらの研究開発と並行して生産体制の整備も進めることで加速させ、さらに薬事承認プロセスも迅速化することで接種開始の時期を大幅に前倒ししようというもの。
厚労省はこのプランを実現するため、日本医療研究開発機構(AMED)に開発資金を補助するとともにワクチン生産体制等緊急整備基金を創設(2次補正予算案に1377億円計上)し、専門業者への試験の委託や大規模生産体制の早期整備を支援する。

■DNAワクチンは7月にも臨床試験開始
現在AMEDが支援している国内のワクチン開発は①組換えタンパクワクチン(感染研/UMNファーマ/塩野義)、②mRNAワクチン(東大医科研/第一三共)、③DNAワクチン(阪大/アンジェス/タカラバイオ)、④不活化ワクチン(KMバイオロジクス/東大医科研/感染研/基盤研)、⑤ウイルスベクターワクチン(IDファーマ/感染研)─など。
このうちDNAワクチンは早ければ7月から、ウイルスベクターワクチンは早ければ9月から臨床試験がスタートする見通しだが、それ以外は臨床試験の時期は未定とされており、激しい国際競争の中、国の支援で国内のワクチン開発がどこまでスピードアップするかが注目される。


(https://www.jmedj.co.jp/journal/paper/detail.php?id=14815)

また、日本経済新聞電子版の「ワクチン開発競争 実力増す中国、いらだつ米国」(BP速報[20/6/11 14:10配信])と題する記事では、以下のように報じられています。


新型コロナウイルス感染症を契機に、米国と中国の対立が深まっている。その主戦場の1つがワクチン開発だ。製薬業界で新しい医療用医薬品(先発医薬品、いわゆる新薬)を生み出した経験を持つのは、これまで欧州や米国、日本ばかりだった。しかし中国は近年、新薬の研究開発力を飛躍的に高めている。中国が米国に先んじてワクチン開発に成功する可能性も否定できない。
「最初にワクチン開発に成功した国が世界に先駆けて、その国の経済と世界的な影響力を回復するだろう」――。4月末、米国で医薬品の審査・承認を担当する米食品医薬品局(FDA)の元長官であるスコット・ゴットリーブ氏は、新型コロナウイルス感染症に対するワクチン開発の重要性について、こう見解を述べた。
米国がワクチン開発に血眼になるのは、世界で最も感染者数の多い自国民を救うのにとどまらず、ゴットリーブ氏が言及したように、世界の覇権争いの行方を左右すると考えるからとみられる。とりわけ意識するのが中国だろう。トランプ米大統領が「中国ウイルス」と連呼するほどに「敵視」するのが中国だ。


(https://www.nikkei.com/article/DGXMZO60224600R10C20A6000000/)

2.期待過剰への警鐘
ブルームバーグのCristin Flanagan記者が執筆した「米株式市場の過剰期待戒め ワクチン“9月準備”に専門家ら異議」(SankeiBiz[2020.5.6 10:12配信])と題する記事では、以下のように記載されています。


米株式市場では新型コロナウイルス感染拡大を防ぐワクチンの早期開発への期待が膨らんでいるが、専門家らの間には慎重な見方が根強く、過剰な期待を戒める声が出ている。

■「通常は数年必要」
SVBリーリンクのアナリスト、ジェフリー・ポージェス氏は調査リポートで「このようなコメントはワクチンがこれくらいの時間枠でできて当然と思わせてしまう。こうした結論は政策当局や投資家、開発者の判断や見通しをゆがめる」と指摘する。
強い期待感は米モデルナ、ノババックスやイノビオ・ファーマシューティカルズなどワクチン開発企業の株価を押し上げている。だが、新型コロナ拡大の前でさえ、いずれの企業も製品を市場に出すことに成功したことはなかった。…(中略)…
ハーバード大学医学大学院のマーク・ポズナンスキー准教授は、モデルナが最速で開発すると投資家が想定している可能性があるが、同社のメッセンジャーRNA(mRNA)ワクチン候補が安全かつ有効かどうかは少なくともさらに1年は分からないと話す。
SVBリーリンクのポージェス氏が指摘する問題点は、疫学者やエコノミストらが半年程度でワクチン開発が進むと見込んでいるとみられるが、広く使われるワクチンは同氏の「最も楽観的な」見通しでも2~3年かかる可能性が大きいことだ。…(中略)…

■完全な理解至らず
ワクチン研究者らはこうした欠点も承知している。ポズナンスキー准教授は「新型コロナウイルスに対する免疫反応の構成要素は何か、あるいはそれを達成するためにワクチンが厳密に何をする必要があるのか、われわれはまだ完全には理解していない」と明かす。
科学者が新型コロナに関してまだ解明できていない部分はあるものの、70余りのワクチンが開発段階にあり、ポズナンスキー氏は早期の実用化に期待を寄せている。
ポージェス氏も悲観一色というわけではない。「ソーシャルディスタンス(社会的距離)の維持や抗ウイルス薬の登場、ウイルス検査能力の拡大、免疫測定の開発、新型コロナ感染症の病態生理学・免疫学上のさらなる理解でパンデミック(世界的大流行)をめぐる先行き見通しは改善している」と述べた。


(https://www.sankeibiz.jp/macro/news/200506/mcb2005061012014-n1.htm)

3.学術論文
(1)予想外の功罪
『日経サイエンス』(2019年9月号[2019年7月25日発行]に掲載されている「ワクチンの予想外の功罪」と題する特集記事の冒頭では、以下のように記載されています。


18世紀末以来,感染症を予防するワクチンは多くの命を救ってきた。確立した医療技術と考えられがちだが,従来の“常識”に反する効果が報告され,議論を呼んでいる。1つは生ワクチンが様々な感染症に対する広範な防御能力をもたらしていることを示唆するデータだ。特定の病原体を撃退する適応免疫ではなく,より基本的な自然免疫を刺激している可能性がある。一方,初めて認可されたデング熱ワクチン「デングワクシア」を導入したフィリピンで,接種を受けた子供がその後デングウイルスに感染すると病状がむしろ重くなり,死亡例も出た。原因として「抗体依存性感染増強」という現象の可能性が指摘されている。


(http://www.nikkei-science.com/201909_047.html)

①自然免疫を刺激? 疫学データが示す可能性
M.W.モイヤー(SCIENTIFIC AMERICAN編集部)『日経サイエンス』(2019年9月号)


ワクチンはそれぞれ特定の病気を標的にしているが,ある一連の研究によると,一部のワクチンはずっと広範な防御能力をもたらしているようだ。特に生ワクチンは子供の総死亡率を50%引き下げる可能性があるという。この研究はアフリカのギニアビサウ共和国で2人のデンマーク人研究者が先導しているものだが,その結論は誇張されているとの批判も呼んでいる。


(http://www.nikkei-science.com/201909_048.html)

②デング熱ワクチンの混迷 抗体依村政幹線増強
S.ヤスミン(スタンフォード大学)/M.ムカジー(SCIENTIFIC AMERICAN 編集部)【前同】


毎年3億9000万人以上がデングウイルスに感染している。デングウイルスに初めて感染した人は大半が感染に気づかないが,再感染した場合には命を落とすことがある。デングウイルスへの再感染がなぜ初感染よりもはるかに致死的なものになりうるかについては,長年論争の的となっている理論「抗体依存性感染増強(ADE)」によって説明できる。
初めて認可されたデング熱ワクチン「デングワクシア」は,デングウイルスへの感染歴のない子供に対しては初感染と同じように作用するように見え,後に感染したときの症状を重篤化させている可能性がある。この現象とADEの関係についてはまだ結論が出ていない。


(http://www.nikkei-science.com/201909_058.html)

(2)ワクチンの弊害
帝京大学医療技術学部の入江宏教授が執筆した「医学における種痘の功罪」(『帝京京短期大学紀要』2016年発行[125頁以下])と題する論文では、「ワクチンの弊害」という見出しの下に、以下のように論じられています。


ワクチンは感染症以外の疾患を含め、疾患予防の上で重要であるが、効果のある薬に副作用があるように、ワクチンにも副反応とされる作用がある。治療薬では副作用は一般に投与目的以外の作用を指すが、ワクチンの場合は投与した物質に対する生体反応すなわち免疫を期待して投与するのであって、その作用も投与物質による化学作用によるものではなく、免疫学的機序によるものであることから、副反応といいワクチン接種に伴う目的以外の免疫反応を指している。
ワクチン接種で重要な点は事前に病原体を投与し、軽い疾患をおこし、人や動物に免疫をつけ感染症の流行時に症状を軽減したり、死亡を防ぐ予防にあるといえる。当然予防的にワクチン接種をうけただけでも発熱等、期待されない反応が生じるので、接種をうけた本人の状態が悪ければ軽い感染を生じさせるつもりが重篤化する例があることはやむをえないし、ワクチンの本来持つ意味を考えれば当然予想されることである。…(中略)…
そうした副反応の他にワクチンがもつ根本的な問題があることを述べたい。それはワクチンを接種することにより、その後、感染体に暴露した際に重篤化することや死亡が防げる代わりに本来の自然感染に見られないような病態を生じることが予想される。…(中略)…
天然痘予防のための種痘が人類を災禍から救ったことは重要であるが、ワクチン以前にはなかった感染経過の見られる病態を生じ、新たな疾患をおこす可能性がある。最近になり増加している疾患の中には小児期のワクチンのそうした副反応による可能性もあることが推定されている。


(http://www.teikyo-jc.ac.jp/app/wp-content/uploads/2018/08/journal2016_125-132.pdf)

4.ワクチンの効果持続期間
ワクチンの効果が持続する期間について、「がん免疫療法コラム」というサイトで掲示されている「免疫の記憶力<その効力と有効期限>」(Vol.63[2020.03.20投稿])と題する記事では、以下のように記載されています。


ある感染症に一度感染すると二度は感染しない、いわゆる「二度なし」という性質が免疫にはあります。この免疫の性質を利用して行われているのが予防接種です。病原体などから攻撃を受けた時の記憶を残す仕組みが、免疫には備わっています。これを「免疫記憶」と言います。今回は、この「免疫記憶」にスポットを当てたいと思います。また、「二度なし」が通用しない例外もあります。…(中略)…

■免疫記憶とは
人体に細菌やウイルスなどの異物が侵入してくると、T細胞やB細胞が活性化されて増殖します。そして、その多くは異物を排除しようと働き、役目を終えると死んでしまいます。ところが、一部の細胞は「記憶細胞」となりそのまま生き続けます。この「記憶細胞」の存在によって、多くの場合、一度かかった感染症には二度かからなくなる、もしくは、かかっても症状が軽くて済むのです。この「記憶細胞」には「メモリーT細胞」と「メモリーB細胞」があり、見張り番としてリンパ節などに留まります。
2回目の感染があると、これらの細胞が迅速かつ効率よく反応します。1回目の感染時には、免疫細胞はいくつかの過程を経て活性化されますが、2回目の感染時には「記憶細胞」の存在によってその過程が省略されます。具体的には「メモリーT細胞」と「メモリーB細胞」がそれぞれ「エフェクター細胞」と呼ばれる活性化された免疫細胞に変身し、その数を一気に増やすことで、迅速かつ効率よく反応することが可能となります。

■免疫記憶が機能しない、もしくは、一時的にしか機能しない例
先述のように一度感染する、その病原体に対して、その後も免疫が見張り番として警戒態勢が敷かれます。終生にわたって見張り番をすることができるタイプの免疫を、終生免疫(しゅうせいめんえき)と言います。はしか、みずぼうそう、おたふく風邪などに対しては、終生免疫によって人体を守ることが出来ます。
ところが、終生免疫のように免疫が一生ある病気から体からを守ってくれるケースと、そうでないケースがあります。
インフルエンザウイルスや赤痢菌などは頻繁に遺伝子変異を起こして形を変えるので、免疫が働きにくくなります。そのため、インフルエンザなどは予防接種を毎年受けなければならないのです。また、ヘルペスウイルスは神経に沿って移動して神経節に潜伏します。同じようにサイトメガロウイルスは骨髄系の幹細胞に潜伏することが確認されています。さらにT細胞への抗原提示やNK細胞の活性化を阻止しながら、免疫からの攻撃を回避しているという報告もあります。
なお、最近では、抗生物質などの薬剤によって短時間で回復する機会が増え、その結果、皮肉にも十分な免疫が得られないというケースもあると言われています。…(中略)…
一般的なコロナウイルスの場合、感染後に免疫ができますが、終生免疫という訳にはいかず、免疫反応は徐々に弱まっていきます。…(中略)…同ウイルスに対する「免疫の記憶力」がどの程度のものなのか、これはワクチンの有効性にも関わる問題であり、今後報告されるであろう研究成果の中で特に注視すべき項目と言えるでしょう。


(https://gan911.com/column/2447/)

5.結語
新型コロナウイルスの感染防止策としてワクチンの開発が期待されていますが、二度感染例が報告されていることから既に遺伝変異を起こしており、実用化の段階では効果が期待外れという事態になりかねません。ワクチンに頼らなくても、産官学が連携して、3密防止と衛生管理により、感染源を断つために全力を尽くすことが望まれます。

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