1.内職
(1)歴史
「内職手作業《お家で出来る内職》」というサイトの「内職の歴史・昔から現在」と題するウェブページでは、以下のように記載されています。
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内職の歴史は非常に古く江戸時代から存在したと伝えられています。
元々は農家のお嫁さんなどが(出産や病気などで)キツイ畑仕事などが出来ない時に、納屋で(わらじ)や(簑)などを作るために手作業や手加工などで軽作業を行い出来高に応じてご近所の方と物々交換などでお米や金品を受け取とっていたのが内職の起源と言われてます。…(中略)…
江戸時代頃から農民が農業の傍ら内職をする時代がやって来ました。当時でも原料や器具さえあれば農村でも副業的に仕事をする事ができました。…(中略)…
昔の人は色々な技法を学び、いずれ、問屋商人が生産者に資金や原料や機械を前貸しして生産を行わせるようになりました。問屋商人はその製品を買い上げて街で販売するという生産形態が時代とともに発達していきました。当時では家内工業といいまして農民は自給自足の農業経済から家内工業に本格的に転職する人もいました。
19世紀になると、間屋制家内工業の生産性に可能性を感じた問屋商人が工場などを建設していきました。それに伴い仕事内容は、それぞれ、専門性に分かれて分担されていきます。【これを手工業的分業といいます】…(中略)…
しかし、まだ電話などもない時代で契約農家によっては病気で数日寝ていたり材料がなくなったなど敏速な連絡ができない、また織機などの機械が故障して仕事を中断してしまった事が考えられます。限界を感じた問屋制家内工業の経営者はこの問題を解決するために工場を建て奉公人を工場に集め材料・原料・機械を一括管理する画期的な手法・方法を考え出しました。…(中略)…
昭和20年あたりでは内職はお年寄り専門の仕事となりました。病気で働きに行けないお年寄りなどが空き時間に軽作業をすると同時に内職は貧しい人がする仕事というイメージが定着してきました。
しかし、戦後昭和30年代以降、高度経済成長になりますと、急激に20代の女性、内職さんを希望する人が増えました。手土産品の加工・袋詰め・あて名書き・機械部品の検査・小物その他・軽作業など。内職さんが増えた理由として終戦後から徐々に子どもを出産する女性が増えた影響で4人兄弟・5人兄弟があたりまえの時代になりましたので仕事と子育てを自宅で両立する必要がでてきました。当時の内職さんは、旦那さまが出勤したあとに、一日あたりの時間6~8時間頑張って内職収入を生活の足しにしていたようです。
平成にはいってからは以前より生活レベルが上がった影響で、ちょっとした生活費の足し、お小遣い稼ぎ、余暇や趣味を楽しむ目的で副収入を得るために若い内職さんが増えてきました。
2000年以降の現代ではインターネットが普及した影響でパソコン内職が主流になりつつあります。…(中略)…
近年では昔ながらの封筒のあて名書きのような手作業求人よりもパソコンでデータ入力など在宅ワーク内職の求人数が増えてきてます。昔では内職さんは貧しいというマイナスイメージがありましたが、今では若い人から高齢者まで大人気のお仕事になってきてます
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(http://777.mods.jp/rekisi.html)
(2)家内労働法
内職には請負と雇用の両面があり、形式的に自営業者として業務委託契約が締結されていますが、実質的には労働契約に準じる労働条件が定められています。このような観点から、内職には昭和22年に制定された労働基準法が適用されず、長年にわたり日陰に放置されてきましたが、漸く昭和45年に家内労働法が制定されました。厚生労働省HPの「家内労働について」というカテ中、「Ⅰ 家内労働法の概要」と題するウェブページでは、以下のように記載されています。
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1 家内労働手帳
委託者は、家内労働者との間のトラブルの発生を防止するため、仕事内容、報酬等の委託の条件を明記した家内労働手帳を委託、物品の受領又は工賃支払のつど、家内労働者に交付しなければなりません。家内労働手帳は伝票式の様式が定められています。
2 工賃支払いの確保
(1)工賃は、原則として、現金で、その全額を支払わなければなりません。
ただし、家内労働者の同意がある場合には、郵便為替の交付、銀行その他の金融機関に対する預金又は貯金への払込みによって支払うこともできます。
(2)工賃は、家内労働者から製品を受け取ってから1か月以内に支払わなければなりません。
ただし、毎月一定期日を工賃(計算の)締切日として定めている場合は、その工賃(計算の)締切日から1か月以内とされています。
3 最低工賃制度
最低工賃とは、ある物品について、その一定の単位ごとに工賃の最低額を決めるものです。厚生労働大臣又は都道府県労働局長は、一定の地域内で一定の業務に従事する工賃の低い家内労働者の労働条件を改善するために必要があると認めるときは、審議会の意見を聴いて、家内労働者と委託者に適用される最低工賃を決定することができます。最低工賃が定められている業種・地域にあっては、委託者は最低工賃額以上の工賃を支払わなければなりません。
4 安全及び衛生の確保
仕事による災害を防止するために必要な措置を講じなければなりません。
5 届出
(1)委託状況届の提出
委託者は、委託する仕事の内容や家内労働者数などについて、家内労働法にいう委託者になった場合には遅滞なく、それ以後は毎年4月1日現在の状況について4月30日までに、委託者の営業所を管轄する労働基準監督署に届け出なければなりません。委託状況届はオンライン電子申請も可能です。
(2)家内労働死傷病届の提出
委託者は、家内労働者又は補助者が委託した業務に関し、負傷したり疾病にかかったりして、4日以上仕事を休んだり死亡した場合には、速やかに委託者の営業所を管轄する労働基準監督署に届け出なければなりません。
6 帳簿の備付け
委託者は、家内労働者の氏名や工賃支払額などを記載した帳簿を備え付けておかなければなりません。また、この帳簿は最後に記入した日から5年間保存しなければなりません。
※令和2年4月1日より施行された家内労働法施行規則の一部を改正する省令(令和2年厚生労働省令第62号)により、帳簿の保存期間が3年間から5年間に延長されましたが、この改正の内容については、経過措置により、令和2年4月1日以後に締結される委託に関する契約に係る帳簿の保存期間について適用されます。
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(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000099622.html)
2.在宅勤務
(1)黎明期
『瓦版』という働き方と天職を考えるウェブマガジンの「なぜ在宅勤務は会社を救うのか」(2014年3月6日投稿)と題する記事では。㈱テレワークマネジメント代表取締役・田澤由利氏とのインタビューに基づき、以下のように記載されています。
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■なぜいま在宅勤務なのか
在宅勤務は、文字通り、家で勤務するワークスタイル。離れた場所で働く「テレワーク」のひとつの形態(雇用型かつ在宅型テレワーク)を指す。日本でも25年近く前から試験的に取り組む企業があり、決して新しい働き方というワケではない。過去に国が推奨し、拡大機運もあったが、十分な理解が得られぬまま失速した前例もある。そうした中、なぜいま再び、在宅勤務に関心が集まっているのか。
「会社にとって最大のリスクは、人材の流出。いま政府は女性の活用を打ち出していますが、女性は結婚・出産・育児といったライフイベントで休職や離職を余儀なくされます。さらにこれからは高齢化によって、女性に限らず介護で管理職が休む、退職するといった事態も増加していきます。その他、災害による事業継続の困難というリスクも東日本大震災で再認識することになりました。テレワーク(在宅勤務)はこうした問題を解決する重要なソリューションだからです」と田澤氏は解説する。…(中略)…
「在宅勤務を導入するとなると、多くの企業担当者は“うちは在宅勤務できる仕事がない”とおっしゃる。それは、資料作りやレポート作成など、通常業務から専用の作業を切り出すことを考えているからなんですね. …(中略)…そうではなくて、通常の仕事を自宅でやる。そうした発想の転換がなければ、当然業務は枯渇してしまいますから、本格導入がうまくいくはずはありません」(田澤氏)。
過去に普及がうまくいかなったのは、業務の切り出しを前提に在宅勤務導入を考えていたのが大きな原因という。もちろん、社会全体として十分に活用するだけの設備が整っていなかったという背景もある。…(中略)…
■中小企業ではわずか1.2%の導入率
総務省の「平成24年通信利用動向調査」を元に算出したところ、国内の在宅勤務導入企業は4.4%。資本金50億円以上の大企業に絞ると13.6%。資本金1000万円未満の企業ではわずか1.2%にとどまっている。
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(https://w-kawara.jp/interview/rescue-company/)
(2)働き方改革
「テレワークナビ」というサイトの「在宅勤務とは? 働き方改革関連法案施行で増える新しい働き方」(2019年07月09日公開)と題するウェブページでは、以下のように記載されています。
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残業時間の上限規制など、働き方改革関連法案が順次施行され始め、それにともなって働き方改革に対する関心もさらに高まりを見せつつある現在。働き方改革の方法の1つとして注目されるのが、「在宅勤務」です。…(中略)…
田澤由利氏著の「在宅勤務が会社を救う」のなかで、在宅勤務が注目される背景として、以下の3つが挙げられています。
―国が導入を後押し―
国が在宅勤務を含む「テレワーク」の普及に本腰を入れていることが、まず背景の1つとしてあります。とくに「アベノミクス」の成長戦略のなかにテレワークという言葉が組み込まれたことで、その認知度は広がっていったといえます。
もちろん言葉として組み込まれただけでなく、例えば「時間外労働等助成金(テレワークコース)」など、助成金による具体的な支援もスタートしています。
―女性の継続雇用―
少子高齢化にともなう現役世代(20代〜60代)の比率の低下で、今後はますます働き手が不足していくなかで、育児と両立しながらでも女性が活躍できる環境を整備する必要性があるというのも、背景の1つです。
子育てと両立しやすい在宅勤務の導入は、企業においても今後人材の確保がままならなく状況を打開するための有効な手段なのです。
―ICT環境の発達―
最後3つ目は、在宅勤務を可能とするテレビ会議システムなどのツールの普及、またそういったツールをこれまでよりも低コストで利用できるなど、ICT環境が発達してきたことも背景の1つです。
**********************************************************************(https://www.nice2meet.us/what-is-work-from-home)
(3)在宅勤務制度の導入状況
東洋経済オンラインの「就職四季報プラスワン」というサイト」中、「『在宅勤務制度がある会社』主要550社リスト」(2020/03/01 5:15配信)と題する記事では、以下のように記載されています。
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■働きやすさ実現のために在宅勤務を導入
『就職四季報』では、企業がどれだけ働きやすい環境を整備しているかを見るために、「在宅勤務制度の有無」について以前から調査をしている。今回、2021年版に掲載されている1303社の中から、在宅勤務制度がある会社を抽出した。有事の際も含めて、以前から働く人のことを考えている会社だといえるだろう。…(中略)…
■業種で偏りも
今回の調査結果では、1303社中550社が在宅勤務を導入していた。割合にすると42%になる。下表の通り、業種別の採用社の割合をランキング形式で掲載したが、コンサルティング業(8社)、シンクタンク業(6社)は在宅勤務の導入が100%になっている。それ以外で採用社の割合が高いのは、通信サービス業(88%)、非鉄業(71%)、生命保険業、自動車業(各70%)などだ。
一方、スーパーやホテルは1社しか導入していない。店舗などの現場でサービスする会社にとって、導入が進みづらいといえる。また、マスコミもテレビ(23%)、新聞(16%)と低く、ラジオ・通信社に至っては、導入している会社がなかった。
**********************************************************************(https://toyokeizai.net/articles/-/333710)
(4)コロナ対策
①行政の取組
厚生労働省HPの「働き方改革推進支援助成金(新型コロナウイルス感染症対策のためのテレワークコース)」(2020年8月20日アクセスとだいするウェブページでは、「新型コロナウイルス感染症対策のためのテレワークコースの助成内容」という見出しの下に。以下のように記載されています。
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■概要
「働き方改革推進支援助成金」(※令和元年度までは「時間外労働等改善助成金」に名称変更予定)に新型コロナウイルス感染症対策を目的とした取組を行う事業主を支援する特例コースを時限的に設けます。
<令和2年4月28日より助成対象を見直しました!> 令和2年2月17日以降の取組について ・受け入れている派遣労働者がテレワークを行う場合も対象とします。 ・パソコンやルーター等のレンタル・リースの費用(※)も対象とします。 ※事業の実施期間内(5月31日まで)の経費であり、かつ、同日までに支出されたものに限る。 |
(1)対象事業主
新型コロナウイルス感染症対策としてテレワークを新規(※)で導入する中小企業事業主
※試行的に導入している事業主も対象となります
<対象となる中小企業事業主>
労働者災害補償保険の適用中小企業事業主であること
(2)助成対象の取組
・テレワーク用通信機器(※)の導入・運用
・就業規則・労使協定等の作成・変更
・労務管理担当者に対する研修
・労働者に対する研修、周知・啓発
・外部専門家(社会保険労務士など)によるコンサルティング 等
※シンクライアント端末(パソコン等)の購入費用は対象となりますが、 シンクライアント以外のパソコン、タブレット、スマートフォンの購入費用は対象となりません。
ただし、レンタルやリースついては、5月31日までに利用し、支払った経費については対象となります。
※派遣先である場合、派遣労働者も対象となります。ただし、その派遣労働者を雇用する派遣元事業主が、その派遣労働者を対象として同時期に同一措置に付き助成金を受給していない場合に限ります。
(3)主な要件
事業実施期間中に
・助成対象の取組を行うこと
・テレワークを実施した労働者が1人以上いること
※ 少なくとも1人は直接雇用する労働者であることが必要です
(4)助成の対象となる事業の実施期間
令和2年2月17日~5月31日
※交付申請後、テレワーク用通信機器の納品の遅延等により事業実施期間内に取組を行うことが困難な場合、事業実施期間は、「6月30日、又は、交付決定若しくは事業実施計画変更承認の決定の日から2か月を経過した日のいずれか遅い日」まで延長されます。
(5)支給額
補助率:1/2(1企業当たりの上限額:100万円)
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②民間企業の取組み
㈱エス・ピー・ネットワークが2020年5月20日に発表した「新型コロナウイルスの影響による在宅勤務(テレワーク)実態調査(2020年)」と題するプレスリリースでは、「調査結果」という見出しの下に、以下のように記載されています。
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【調査結果】
(1)在宅勤務を実施している企業のうち、在宅勤務制度がある企業は全体のおよそ2/3(65.8%)。1/3(34.2%)は制度がないまま在宅勤務を開始。
現在、在宅勤務を実施している企業の6割以上が、すでに制度として在宅勤務を導入しているという結果となりました。他方、「正式に制度化されていない」まま在宅勤務を導入している企業も34%に上っており、新型コロナウイルス感染症の拡大及び、国や自治体の緊急事態宣言などに応じて、制度を整える間もなく在宅勤務に移行している可能性が見受けられます。
(2)7割以上(73.9%)が新型コロナウイルスの収束後も、在宅勤務を継続したほうが良いと回答。
「新型コロナウイルスの動向が落ち着いた後も、働き方の1つとして、在宅勤務を継続したほうが良いと思いますか」との質問には、「1.在宅勤務を継続したほうがよい」、「2.部分的に継続したほうがよい」とした回答が73.9%という結果になりました。
(3)働き方の変化以外で、現在最も気になることは「収入(給与・賞与)」が4割(41.3%)で最多。「健康・体調」「メンタルヘルス」への不安もそれぞれ2割程度。
「働き方の変化、在宅勤務の状況」についてのアンケートの前に、「現在最も気になること」を調査したところ、「収入(給与・賞与)」が41.3%で最も多い結果でした。
続いて、「健康・体調」が17.3%、さらに「漠然とした不安感」「心理的な変調」「孤独(コミュニケーション不足)」を合わせると4割近い割合となっており、身体の健康やメンタルヘルスへの影響も注目しなければいけない問題と言えます。…(中略)…
(4)通常勤務(出社)と在宅勤務の働きやすさは「変わらない」とした回答が最も多い。
働きやすさの変化は、全て在宅勤務となった場合、在宅勤務と出社の両方がある場合のいずれも「変わらない(全体23.9%)」が最も多い結果ですが、平均値は「全て在宅」が+0.014、「在宅と出社の両方」が-1.112で、両方の働き方をしている人が全て在宅の人よりも働きにくさを感じていることが分かりました。
働きにくい(-1以下)を選択した層に注目すると、「在宅ができない部署との不公平感、軋轢」、「在宅扱いだが実質自宅待機(何もできない)」、原則的に在宅勤務をしているものの、「押印や経費精算」、「当番制」、「出社しなければできない業務がある」といったことに従業員が働きにくさや不満を抱えやすいことがうかがえます。
(5)情報セキュリティ、労働環境に課題あり。課題を解決することが「新型コロナウイルス対策」→「働き方改革」としての在宅勤務への移行には不可欠
在宅勤務を月1日以上している人を対象に、「在宅勤務時に障害となっているもの」を調査したところ、紙の資料が手元にないなど、業務上必要な資料がないこと(37.5%)が最も大きな支障になっているという結果でした。
また、「正式に制度化されていない」企業の回答者では2割以上(22.8%)が「特にない」を選択しており、制度が整わないまま在宅勤務に入ったことで、サイバーセキュリティや個人情報の取扱い、資料の持ち出しなどのリスクを包含した状況である可能性が考えられます。
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(https://www.sp-network.co.jp/news/press-release/COVID19-telework-survey.html)
3.結語
我が国の在宅勤務には、伝統的な手作業中心の内職と、現代的な通信システムを駆使するテレワークの2種類があり、いずれも通勤から解放され、育児や介護との両立を可能にする道が開かれる点でメリットが大きい反面、法整備が立ち遅れています。働き方改革の一環として在宅通勤を推進するのであれば、通勤を前提として構成されている従来の労働法を抜本的に改正することが急務です。