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  1. わが国クレジットカードの歩み 風間眞一
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第8回 カードの安全性向上への取り組み

【CAT、CDの相互利用が進展】
クレジットカードの本格的な普及が始まった1980年代以降、カード業界ではカードの不正利用防止に向けた動きが活発化した。第一弾は、CAT(Credit Authorization Terminal=信用照会端末)の利用だ(写真)。CATは、カード会社のコンピューターと加盟店を電話回線で結び、販売承認や売上伝票作成を自動化したもので、加盟店の売上処理を迅速化するほか、カードの安全性向上にも大きく貢献した。(出所)『JCBカードの半世紀』(JCB社史制作委員会編)

CATを使った信用照会の機械化は、80年9月にシステムを稼働させた国内信販(現楽天カード)の例などがすでに存在したが、銀行系カード業界や信販業界では、共同設置に向けた検討が鋭意進められた。

銀行系カードは81年6月に検討委員会を発足し、システムの標準化やルール作りに取り組んだ。信販会社や流通・メーカー系カード会社にも端末の共同利用を呼び掛けたが、信販業界でも同様の検討が始まっていた。だが、困ったことに、銀行系がCATとカード会社をつなぐネットワークシステムを電電公社(現NTT)が開発した「CAFIS」に決めたのに対し、信販系は通商産業省(現経済産業省)の推奨もあって、日本IBMの決済ネットワーク「CATNET」を選んだ。

異なるシステムでの混乱を避けるため両者で話し合い、83年8月にCATNETを共同センターの一つとしてCAFISと接続することで決着。84年5月からCAT端末の共同設置・共同利用が開始された。その後、CAFIS以外の加盟店ネットワークも稼働。大手小売業では自社のPOSレジとCAFISをつなぎ、汎用カードの信用照会にも使えるPOS‐CATの取り扱いが可能となった(注1)。

また、キャッシングに必要なキャッシュディスペンサー(CD)の相互利用も始まった。銀行系カードでは、85年7月に各社保有CDの共同利用を開始し、87年3月には銀行のCD・ATM(現金自動預払機)の利用も認められた(非銀行系は92年6月に認可)。信販業界でもCDの共同利用が進んだが、消費者の利便性を考えると銀行系や信販系、流通系の垣根を越えたCDの相互利用が必要とされ、全面開放するかたちで今日に至っている。

さて、CATやCDの利用に必須なのは磁気カード。72年12月にキャッシュカードの銀行規格が定められ、CDを使って現金の自動払い出しが可能となったが、カード業界では80年以降の国際カードブランドとの提携もあり、クレジットカードの磁気化が不可欠になった。81年12月に磁気テープ(ストライプ)の共通仕様が定められたことにより、カード券面への磁気ストライプ装着が進んだ。

【偽造防止へホログラムやCVV・CVCを導入】
磁気カード発行が定着する一方で、その弱点を突いた偽造などの犯罪も増加。偽造は磁気化前にも存在したが、券面エンボス(会員番号や有効期限等の刻印)の不正作成など稚拙な偽造・変造が多く、磁気化は本来有効な防犯対策のはずだった。

ところが磁気テープ自体の偽造や盗難カードに別人の磁気データを書き換える不正も出回り、新たな対応を求められた。そこで84年に登場したのが偽造防止のためのホログラム(立体写真印刷)付きカードだった。

さらに磁気テープの中にVISAなら「CVV」と呼ばれるチェックデジット(照合暗号枠)がエンコード(情報入力)され、91年11月から海外オーソリゼーション(信用照会・承認)でカードの真正性チェックに大いに効果を発揮。翌年2月から国内の信用照会にも活用され、またマスターカード陣営も94年10月に同様の「CVC」チェックを開始した。また、裏面サイン欄に磁気テープに記録されていない3桁または4桁のセキュリティコードを印字。ネット通販でクレジットカードを利用する際、この番号を入力することで、決済の安全性が高められた。

ホログラムやCVV・CVCチェックで偽造対策は万全と思われたが、ホログラム付きカードで偽造が見つかったほか、磁気テープ上の情報をスキミングし、抜き取った情報を生カードに書き込み、本物と見まごう偽カードを作るなど犯罪も多発。カード業界は抜本的な対策を迫られ、信用照会業務のセキュリティー強化やICカード(注2)の導入が講じられるようになる。

信用照会のセキュリティー強化策としては、コンピューターを使いカードの不正使用を販売時点で検知するシステムが挙げられる。住友クレジットサービス(現三井住友カード)が97年7月に導入した「ファルコン」や日本信販(現三菱UFJニコス)が同年10月に稼働した「プリズム」などが代表例だ。

【官民を挙げて進むカードのIC化】
偽造カード対策の切り札として推進されているのがカードのIC化だ。2000年12月に日本クレジットカード協会(JCCA)がICカードの持つ高いセキュリティー性を活用するため、ICクレジット決済の国際標準である「EMV仕様」(注3)に準拠したICカード対応端末の標準仕様を公開したのが契機となった。カード会社でICクレジットカードの発行が本格化し、03年7月からはJCCA主導で加盟店へのICカード対応共同利用端末の設置が始まった。

15年3月にはカード会社や加盟店、決済代行業者、端末メーカーなどに行政も参画して「クレジット取引セキュリティ対策協議会」(事務局:日本クレジット協会)が発足。今年3月末までに「カードの100%IC化」「決済端末の100%IC対応」を目指し、環境整備が進められている(注4)。

国の観光推進策もあって、海外からの訪日客が増えている。欧米に比べてIC取引率が低いわが国クレジットカードの安全・安心を高めるため、カード業界の一層の努力を望みたい。

(注)
1 CATのほか、伝票印字機能がないS‐CATやギャザリング(売上データ収集)機能付きのG‐CAT、IC対応した決済専用端末CCTなども登場。
2 プラスチックカードにIC(集積回路)チップを内蔵したもの。磁気カードの100倍近い情報量を収納でき、セキュリティー機能に優れ、偽造されにくい。ICチップの組み込まれたクレジットカードでは、対応加盟店で決済する際、サインの代わりに暗証番号を入力する。
3 98年にユーロペイ、マスターカード、VISAでまとめられたICカードの統一規格。
4 16年12月に成立した改正割賦販売法で、カード会社だけではなく加盟店にもカード情報の保護が義務化された。協議会によると、18年12月末時点でカードのIC化率が82.0%、CCT端末のIC対応率が75.4%。

掲載号 / 週刊金融財政事情 2020年3月16日号

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