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  1. 産業法務の視点から 平川博
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第80回 急務のプラごみ対策

1.はじめに
プラごみ(プラスチックごみ)による環境汚染の現状は、本連載の「第55回 深刻なプラスチックごみ問題」と題する記事で紹介したように、2016年に世界経済フォーラムは、
①過去50年でプラスチック素材の利用は20倍に急増し、今後20年で現在の2倍に増えるだろう
②海洋には1億5,000万トンのプラスチックごみがあると考えられており、そこから予測すると、2050年の海のプラスチックゴミは(重量で比較して)、海に住む魚より多くなるとレポートしました。(https://rmcaj.net/labo/hirakawa55/)

それから現在まで5年間に、企業や家庭がプラごみ問題の対策の一環とし脱プラスチックに取り組むようになって来ました。

ところでハフポスト日本版エディターの渡辺志帆氏が執筆した「7月はなるべく『脱プラ』しよう。参加者は推計3億人、運動が世界に広がる」(【ハフポスト日本版[2021年07月01日18時41分配信]】)と題する記事によれば、既に10年前の2011年にオーストラリアの一女性が7月をなるべくプラスチックごみを出さずに過ごそうという趣旨で始めた「Plastic Free July(プラスチック・フリー・ジュライ)」という脱プラ運動は、当初は40人ほどだった参加者は、企業や自治体も巻き込みながら徐々に増え、2020年には177カ国の推定3億2600万人が参加し、約90万トンのプラスチックごみ削減に貢献したとのことです。

(7月はなるべく「脱プラ」しよう。参加者は推計3億人、運動が世界に広がる | ハフポスト (huffingtonpost.jp)

このように、個々人が脱プラの意識を持って実践することは大いに望ましいことですが、自治体が回収するゴミ袋自体がプラスチック(ポリエチレン)であり、代替品が普及するまで時間がかかりそうです。またプラスチックのリサイクルが推進されていますが、焼け石に水の観があります。

2.プラスチック資源循環促進法の制定
(1)背景
環境省HPの「報道発表資料」というカテ中、「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律案の閣議決定について」(令和3年3月9日公表)と題するウェブページでは、「1.背景」という見出しの下に、以下のように記載されています。

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海洋プラスチックごみ問題、気候変動問題、諸外国の廃棄物輸入規制強化等への対応を契機として、国内におけるプラスチックの資源循環を一層促進する重要性が高まっています。

政府においては、プラスチックの資源循環を総合的に推進するため「プラスチック資源循環戦略」(令和元年5月)を策定し、本戦略を具体化するため、令和2年5月から令和3年1月までにかけて開催された中央環境審議会循環型社会部会プラスチック資源循環小委員会及び産業構造審議会産業技術環境分科会廃棄物・リサイクル小委員会プラスチック資源循環戦略ワーキンググループの合同会議における審議の結果を受け、令和3年1月29日に中央環境審議会から「今後のプラスチック資源循環施策のあり方について(意見具申)」をいただいたところです。

本法律案は、この意見具申に則り、多様な物品に使用されているプラスチックに関し包括的に資源循環体制を強化し、製品の設計からプラスチック廃棄物の処理までに関わるあらゆる主体におけるプラスチック資源循環等の取組(3R+Renewable)を促進するための措置を講じようとするものです。

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(https://www.env.go.jp/press/109195.html)

(2)3R+Renewable
このように、プラスチック資源循環促進法の主眼は、プラスチック資源循環等の取組(3R+Renewable)を促進することにあります。そこで、「3R+Renewable」とはどういうことかと言いますと、㈱キラックスHPの「『3R+Renewable』をカタチに~バイオプラスチックの先駆者 リスパック開発商品をご紹介~」と題するウェブページ(2021.04.05掲示)では、「1-2.基本原則『3R+Renewable』」を知ろうという見出しの下に、以下のように記載されています。

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プラスチック資源循環戦略【編集部註:令和元年5月31日に政府が策定】の重点戦略として、「3R+Renewable」という基本原則が発表されています。
3R…リデュース(Reduce)=ごみの発生を減らす
リユース(Reuse)=繰り返し使う
リサイクル(Recycle)=資源として再利用する
Renewable=再生可能な資源に替える
具体的には、下記のような目標が掲げられています。

【リデュース】
①2030年までにワンウェイプラスチックを累積25%排出抑制

【リユース・リサイクル】
②2025年までにリユース・リサイクル可能なデザインに
③2030年までに容器包装の6割をリユース・リサイクル
④2035年までに使用済プラスチックを100%リユース・リサイクル等により有効利用

【再生利用・バイオマスプラスチック】
⑤2030年までに再生利用を倍増
⑥2030年までにバイオマスプラスチックを約200万トン導入

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(https://www.kiracs.co.jp/blog/2029/)

(3)サーキュラーエコノミー
環境庁が作成した「【概要】プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律案」と題する資料では、プラスチックのライフサイクルを3段階(①設計・製造段階 ②販売・提供段階 ③排出・回収・リサイクル段階)に分け、プラスチックのライフサイクル全般で「3R+Renewable」の基本原則を導入して、サーキュラーエコノミーへの移行を加速させることが謳われています。

(http://www.env.go.jp/press/files/jp/115768.pdf)

ところで、「3R+Renewable」とはどういうことかと言いますと、「IDEAS FOR GOOD」というサイトの「サーキュラーエコノミー(循環型経済)とは・意味」と題するウェブページでは、以下のように記載されています。

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サーキュラーエコノミー(循環型経済)とは、従来の「Take(資源を採掘して)」「Make(作って)」「Waste(捨てる)」というリニア(直線)型経済システムのなかで活用されることなく「廃棄」されていた製品や原材料などを新たな「資源」と捉え、廃棄物を出すことなく資源を循環させる経済の仕組みのことを指します。…(中略)…

サーキュラーエコノミーの実現には、メーカー・小売・回収・リサイクル企業など幅広い業種の連携が必要となるほか、製品回収・リサイクルにおいては消費者の協力も必要となり、業界や立場を超えたあらゆる人々の協働が必要不可欠となります。サーキュラーエコノミーの推進を通じて様々な異業種・異分野連携が生まれ、地域のつながりの再構築や、オープンイノベーションにつながることも期待されています。…(中略)…

サーキュラーエコノミーは従来からある「Reduce(減らす)」「Reuse(再利用する)」「Recycle(リサイクル)」の3Rの考え方とは異なり、そもそもの原材料調達・製品デザイン(設計)の段階から回収・資源の再利用を前提としており、廃棄ゼロを目指しています。できる限りバージン素材の利用を避け、回収後のリユースやリサイクルがしやすいよう解体を前提としたモジュールデザインを導入し、修理や部品交換などを通じて製品寿命をできる限り長くするなどの取り組みが挙げられます。

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(https://ideasforgood.jp/glossary/circular-economy/)

(4)概要
経済産業省HPの「ニュースリリース」というカテ中、『プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律案』が閣議決定されました」(2021年3月9日公表)と題するウェブページでは、「2.本法律案の概要」【編集部註:原案通り成立】という見出しの下に、以下のように記載されています。

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(1)プラスチック使用製品設計指針
製造事業者等が製品設計等において努めるべき措置に関する指針を策定するとともに、当該指針に適合する設計を主務大臣が認定し、当該設計に基づき製造されたプラスチック使用製品の調達や使用を促進します。

(2)特定プラスチック使用製品の使用の合理化
特定プラスチック使用製品(商品販売やサービスの提供に付随して消費者に無償で提供されるプラスチック使用製品)の提供事業者がプラスチック使用製品廃棄物の排出の抑制のために取り組むべき措置に関する判断の基準を策定し、使用の合理化を求める措置を講じます。

(3)市町村の分別収集・再商品化
容器包装再商品化法の仕組みを活用したプラスチック使用製品廃棄物の再商品化等により、市町村及び再商品化事業者による効率的な再商品化を可能とする仕組みを導入します。

(4)製造・販売事業者等による自主回収及び再資源化
自ら製造・販売したプラスチック使用製品が使用済となったものについて、製造事業者等の自主回収・再資源化事業計画を国が認定することで廃棄物処理法の規定による許可を受けずに再資源化を実施できる仕組みを構築します。

(5)排出事業者の排出抑制及び再資源化等
排出事業者が排出の抑制や再資源化等の促進のために取り組むべき判断基準を策定するとともに、排出事業者等の再資源化事業計画を国が認定することで廃棄物処理法の規定による許可を受けずに再資源化を実施できる仕組みを構築します。

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(https://www.meti.go.jp/press/2020/03/20210309004/20210309004.html)

3.プラスチック資源循環促進法の施行
(1)施行期日
プラスチック資源循環促進法の附則第1項(施行期日)により、「この法律は、公布の日から起算して1年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する」と定められています。字義どおりに解釈すれば、「公布の日」が令和3年6月11日ですから、政令で定める施行期日は、最も遅ければ令和4年6月10日となりますが、ネット情報では来春(特に4月)になるであろうという予測が多くなっています。

(2)プラスチック使用製品設計指針への対応
プラスチック資源循環促進法の第7条(プラスチック使用製品設計指針の策定等)第1項及び第5項により、プラスチック使用製品の製造を業として行う者(その設計を行う者に限る)及び専らプラスチック使用製品の設計を業として行う者(以下「プラスチック使用製品製造事業者等」という)は、主務大臣が策定するプラスチック使用製品設計指針に即してプラスチック使用製品を設計するよう努めることが義務付けられています。

同法第8条(プラスチック使用製品の設計の認定)第1項により、プラスチック使用製品製造事業者等は、その設計するプラスチック使用製品の設計について、主務大臣の認定を受けることができます。そして同条第6項により、主務大臣が設計認定をしたときは、当該設計認定に係るプラスチック使用製品の情報が公表されます。この公表が設計認定を受けるインセンティブとなります。

(3)特定プラスチック使用製品の使用の合理化
プラスチック資源循環促進法の第28条(事業者の判断の基準となるべき事項)第1項に基づき、主務大臣は「特定プラスチック使用製品提供事業者」が、特定プラスチック使用製品の使用の合理化によりプラスチック使用製品廃棄物の排出を抑制するために取り組むべき判断基準を策定します。この条項中、特定プラスチック使用製品というのは、プラスチック製のスプーンやフォーク、ストロー等のように、商品の販売又は役務の提供に付随して消費者に無償で提供されるプラスチック使用製品で、いわゆる「ワンウェイ(使い捨て)プラスチック」のことです。

因みに、「Foodist Media(フーディスト・メディア)」というサイトの「飲食店のプラ製フォークなども有料化へ。『プラスチック資源循環促進法』が成立」と題するウェブページでは、「飲食店に対しては、無料配布しているプラスチック製の使い捨てフォークやスプーンを有料化もしくは紙製や木製のものへ変更するよう求める。対策を取らない店舗には政府が改善を勧告・命令。従わない場合は50万円以下の罰金を科すという」と記載されています。
(https://www.inshokuten.com/foodist/article/6132/)

(4)市町村の分別収集・再商品化
従前は市町村が廃棄物処理法(正式な題名は「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」)に基づき、一般廃棄物(いわゆる「家庭ごみ」)を収集して来ました。条例により一般廃棄物の一部が「分別ごみ」に指定されていますが、分別の基準は市町村によってマチマチです。この基本的枠組みに変更はありませんが、プラスチック資源循環促進法の施行後は、同法第31条(分別収集等)第1項第1号により、「当該市町村の区域内においてプラスチック使用製品廃棄物を排出する者が遵守すべき分別の基準」が策定されることになります。

ところで、平成7年に制定された容器包装リサイクル法(正式な題名は「容器包装に係る分別収集及び再商品化の促進等に関する法律」)により、プラスチック製の容器や包装は、その他の家庭ごみと分別して収集され、リサイクル工場で再商品化される制度が確立しています。プラスチック資源循環促進法の施行後は、プラスチック使用製品廃棄物も家庭ごみと分別して収集され、リサイクル工場で再商品化されることになります。

(5)製造事業者等による自主回収及び再資源化
平成3年に制定された資源有効利用促進法(正式な題名は「資源の有効な利用の促進に関する法律」)により、事業者が自ら回収し、再資源化することが可能な製品については、事業者に自主回収及び再資源化の判断の基準を示し、取組を促進する「指定再資源化製品」という制度を設けられています。

ところが、「指定再資源化製品」として政令で指定されている製品は、パソコンと密閉型電池だけです。そこでプラスチック資源循環促進法では、プラスチック使用製品の製造・販売事業者が使用済となったものについて作成した自主回収・再資源化事業計画を、国が認定する制度が設けられています。この認定を受けると、プラスチック使用製品の製造・販売事業者は、廃棄物処理法の規定による許可を受けずに再資源化を実施できることになります。

(6)排出事業者の排出抑制及び再資源化等
平成7年に制定された容器包装リサイクル法の改正(平成19年4月施行)により、レジ袋等の容器包装を多く用いる小売業者に対し、国が定める判断の基準に基づき、レジ袋等の容器包装を多く用いる小売業者に対する排出抑制を促進するための措置が導入されています。

プラスチック資源循環促進法の施行後は、プラスチック使用製品の排出事業者が作成した再資源化計画を、国が認定する制度が設けられています。この認定を受けると、プラスチック使用製品の排出事業者は、廃棄物処理法の規定による許可を受けずに再資源化を実施できることになります。

3.プラスチック資源循環促進法の問題点
(1)日弁連会長声明
日本弁護士連合会(日弁連)の荒中会長が本年5月21日に発表した「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律案についての会長声明」と題する文書では、以下のような問題点が指摘されています。

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当連合会は、本年3月18日付けで、「今後のプラスチック資源循環政策についての意見書」(以下「意見書」という)を取りまとめ、①リデュース(発生抑制)の徹底を図ること、②熱回収の割合を限りなく低減させること、③拡大生産者責任及び事業者責任を徹底した循環型社会にふさわしい統一的な法制度を整備すること、④プラスチックに使用される有害化学物質を規制することを含む政策を実施すべき旨の意見を述べたところである。

本法案は、プラスチックの資源循環の促進について、事業者の自主性に任せ、行政指導を重視するものであるが、このような手法は過去の例に鑑みれば実効性が乏しく、プラスチック問題の抜本的解決とはならないことが強く懸念されるところである。…(中略)…

また、本法案は、プラスチック資源について、容器包装に係る分別収集及び再商品化の促進等に関する法律(以下「容器包装リサイクル法」という)によるルートを活用した分別回収を市町村に行わせることを想定しているが、これは回収・リサイクルのうちで最も費用のかかる分別・回収コストを市町村の負担としているという現状の容器包装リサイクル法の問題点を固定化することになる。…(中略)…

さらに、本法案は、プラスチックに使用される有害化学物質の規制について何らの規定も置いていないが、意見書の④のとおり、…(中略)…生産段階からの規制を導入すべきである。

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(https://www.nichibenren.or.jp/document/statement/year/2021/210521_4.html)

(2)減プラスチック社会を実現するNGOネットワークの共同宣言
「減プラスチック社会を実現するNGOネットワーク」のメンバー及び賛同24団体が本年6月4日に発表した「『プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律』成立に際してのNGO共同提言」では、「対策の対象がプラスチック使用製品のライフサイクル全体にまで拡大した点を評価」しながらも、以下のような問題点を指摘しています。

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プラスチック新法の導入に際し、無償提供されるプラスチック製品の削減のためのポイント還元措置に補足的に触れられているものの、過剰なプラスチックの生産の大幅削減や、再使用(リユース)の促進には踏み込まず、結果として資源循環も担保できない内容です。…(中略)…

プラスチックを積極的に代替品に切り替える動きが進みますが、必要不可欠ではない使い捨てプラスチックは生産や使用そのものを大幅抑制すべきです。また、バイオマス由来や海洋生分解性の代替品が持続可能性の担保がないままに「環境に配慮して設計されたもの」としてむやみに推進されると、新たな環境・社会問題を助長するおそれがあります。

プラスチック新法では、新たに市町村によるプラスチック使用製品廃棄物の一括回収が実施されますが、分別回収と再商品化に伴う費用はすべて自治体負担となり、…(中略)…製造事業者や使用事業者に必要不可欠でない製品の生産や流通を抑制するためのインセンティブが無いため、プラスチック製品の削減にはつながらず、大量生産されたプラスチック製品が、熱回収を中心とした焼却や輸出により処理されることで、今後も地球温暖化要因となるCO2の大量発生や、プラスチックごみの環境流出が続きます。

他にも、プラスチック使用製品に使用する有害化学物質などによる、人の健康・生態系への悪影響が懸念されます。また、特に自然環境への流出の可能性が高い漁具や農業用器具においては、流出防止や漁具流出後の回収のための管理制度が確立していません。さらに、製品の廃棄前の段階で発生する一次マイクロプラスチックの海洋流出は年間130万トンに及び、日本を含む高所得国ではプラスチックの海洋流出の62%を占めると推定されています。しかしながら、プラスチック新法にはこれらへの対策が盛り込まれていません。

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(https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000040.000039807.html)

4.結語
プラスチック資源循環促進法には、弁護士会長及び減プラスチック社会を実現するNGOネットワークが指摘するような問題点が数多くありますが、プラごみ対策に関連する法律が場当たり的に制定されていて、継ぎ接ぎ細工の観を呈しています。そこでプラスチック汚染問題の抜本的な解決のために、NGOネットワークが提言するように、「プラスチック汚染問題全体を包括した基本理念となるような『基本法』を早急に制定」することが望まれます。

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