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  1. 普遍的リスク対策 乙守栄一
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第82回 無私の境地によるリスク軽減の可能性

「無私」というとあまり耳にしない単語かもしれません。私利私欲のない状態とでも言いましょうか、エゴとは無縁の状態を指します。我欲を人前で出した場合、凡そ次のような状態になっていませんでしょうか。

長続きしない、うまくいかない、人が離れていく、理屈が自己中心的、他人のせいにする等。

我欲はリスクをどう低減しよう、という発想ではなく、リスクをタダで回避しようという発想になっています。リスク回避の主たるところはリスクファイナンス、すなわち保険で手当てということが主たる打ち手ですが、その保険料すら払わず(投資せず)、口先だけで人を利用することしか考えない、言い換えれば“輩(やから)”そのものです。

経営者目線で考えるとき、この我欲は大企業ほど統制が取れているとはいうものの、その企業のトップが我欲満載ならば、それは管理者層以下に瞬く間に伝播し、我欲満載の社風で満たされた法人となってしまいます。世のサラリーマンは、上司の言うことを聞かなければ左遷や降格という小さな小槌をチラつかされることで、結局上司のいう事に従う“サラリーマン(給与人)”という存在のまま、過ごすことを強いられることになります。

本題の「無私」という状態、これはどうすれば実践できるのでしょうか?禅などの行を行なうことで得られる悟りを開く必要があるのか?確かにそれも有効な手段の一つです。人間という存在に生まれてきたからには、だれでも雑念が浮かんできてしまいます。雑念と語る自分、雑念と戦う己、そういう時に如何に自己と向き合えるかが日頃から試されています。

自己実現と言われる熟語があります。肉体(自)は滅べど、魂(己)は永遠に続く、この輪廻転生を繰り返し、本来あるべき目的に如何に近づけていくか?魂としてのPDCAサイクルを廻していくようなものと考えると、無私の心境は一定整理ができるのではないでしょうか。

ここでいう私とは肉体(自)に当たります。私ではない己に目を向けること、これすなわち無私の境地に至るという理解になりますが、皆さんの理解は如何でしょうか。

客観的であれ、と言いますが、人間は五感で生きており、その五感で色んな情報をインプットして事象を把握しなければなりません。どうしても経験知、人の言ったことを元に物事を判断しがちです。それは裏返すと、網羅的な目線で物事を見ることができていないことの表れでもあります。

これまでも繰り返し申し上げてきました、本質を見極めるための目線、ここにすべてが帰結します。英語ではIssueという単語がピッタリくるでしょう。本質がどこにあるか?ここを見極めることで、無私の境地のインフラは出来上がってきます。

また、人は具体的な事象を当てはめないと不安になります。抽象的なこと(汎化したこと)を伝えても、その意味を理解できず、具体事例にばかり思考がぶら下がり、その通りにならなければその具体例を示した人のせいにする、ここに我欲の背景が隠れています。

具体例とは過去に実際に起きた結果そのものであり、そこに論理性を見出していないため、判断を誤ることになります。具体的な事象を2,3,4と並べてみたとき、それらの共通事象(法則性)を括り出すことです。経験則的ではあってもある種の行動とその結果が一致していることが分かります。また、事細かな科学的な立証とまでは行かずとも、事象の裏に隠されている現時点での期間限定ロジックという場合もあります。

本質を炙り出すことで、物事の判断を誤らない、自己にとって不利な時ほど威力を発揮する心境、それこそが無私の境地です。

本質という源泉を見つけ出す行為、すなわち遡るだけ遡って川の水源を見つけに行くが如く徹底的に追求し、腑に落ちたとき、それすなわち無私の境地に至るキーマテリアルを得たことになります。決して短絡的な判断にはならず、本質を見極めるベクトルが一定し、そのとおりただ実践することでリスクも大幅に低減できているはずです。人の意見に左右されない、尖った且つ幅広い思考回路を有する人財の育成は、組織として中長期的な目線で見ても、リスク発生/顕在化の予防に極めて有効な手段になるのではないでしょうか。

株式会社シー・クレド 代表取締役
京都府立医科大学特任教授
乙守 栄一

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