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第88回 防衛本能と自尊心から見るヒューマンリスクマネジメント

人間は肉体を身に纏った生き物であることから、「生きる」ということを最大限の目標に日々生活を送っています。その「生きる」(生命)を脅かされると、理屈を抜きに本能としての防衛本能が働きます。たとえば、ヒエラルキー社会において、同じ階層にいる人たちの行動パターンをみるとよくわかります。その同じ階層の中でも必ず古参兵のような人がいて、自分が一番かのように誇示する人がいます。俗にいう「マウント」を取る行為です。このマウントを取る人の言うことを聞かないと、「いじめ」という行為に発展することもあります。これは動物の集団でも同じことで、サル社会においても集団においては序列を形成するために雄猿はボスの地位を得るために勢力争いをします。歯をむき出して威嚇し、時には喧嘩をして手傷を負わすこともあるほどまでして、ボスの地位を獲得しようとします。これも本能と言えば本能で、テストステロンというホルモンの分泌度合が雄の場合は非常に多いこととも関係していると考えられます。

元来、人間は生物の中でも社会性を育んで生きていくことを選択して、今の時代まで滅びずに地球上で生命を育んできています。社会の中で生きていけなくなることそのものが、今の人間にとっては生命の脅威と感じられ、様々な醜い行動や挙動に出ることが考えられます。わかりやすく言い換えるなら、不安に感じることこそ生物的には生命の脅威と感じる、と捉えても良いかと考えられます。人は不安に感じたとき、怒るという行動に出ることがあります。これも一つの防衛本能です。不安を払しょくするための行動です。怒りっぽい人は常日頃不安だらけな人なんだと認識を置き換えるだけでも気が楽になるモノです。

ここで、防衛本能に自尊心というフィルターを掛けた結果はどうなるでしょうか。自尊心はよく高い、低いという言い方が為されます。自尊心の高い人は往々にして自分の能力で勝負をしようとし、自尊心の低い人は対人関係を強化することでそれぞれ脅威に立ち向かおうとします。この自尊心を脅威に貶めたとき、どういう結果になるでしょうか。自尊心の高い人が脅威に晒された時、他人からは傲慢、無礼、非協力的と見られます。一方、自尊心の低い人が脅威に晒された時、他人からは正直、温和、控えめと見られます。この結果からもわかる通り、日本においては集団主義的な流れが美徳とされることから、後段の自尊心の低い人が好まれるという傾向があります。逆に欧米は個人主義社会から考え、自尊心の高い人が生活をしやすい傾向にあるといえます。

ただ、日本人が総じて自尊心が低いかというと外面と内面に分けて考える必要があります。外面は謙虚で腰が低いと見せておきながら、実は内面はプライドが高いという人が結構いるはずです。このような人はかなり扱い難い人であることは想像に難くないと考えます。日本人には実際、このタイプが非常に多いです。組織の中で従順になっている一方、一歩組織の外に出て電車など通勤途中にイライラして怒りっぽい人、SNSでここぞとばかりクレーマーばりのコメントを書きまくる人、これらの行動は不安を解消するための行動になっているのです。自分より弱い存在を見つけて安心感を得ることで防衛本能を発揮しているのです。

いわば、人間も生き物として考えた場合、多種多様な環境や局面に応じて色々なホルモンが出てくる、それにより感情が揺さぶられ、生物としての防衛本能が起動する、その繰り返しです。生きている限りどうしようもないこれらの特性を如何に割り切り、冷静に見ることができるか、それそのものが生きている間の修行であり、自分を中心としたコミュニティを形成していくためのプロセスにもなっています。

ある一側面から捉えた自分なりの分析ではありますが、生物学的な行動をどう制御するか、これすなわち煩悩からの脱却、修行と言えなくもありません。心理学、社会学もサイエンスの一つです。サイエンスというと理系寄りと捉える人が多いですが、決してそうではありません。「証明され、体系を持ち、真理を表す知識」こそサイエンスの原点です。ここでいう真理を知ることができれば、自ずと人に対する見方も変わり、冷静に人とも相対することができるのではないでしょうか。

株式会社シー・クレド代表取締役
京都府立医科大学特任教授
乙守 栄一

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