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  1. わが国クレジットカードの歩み 風間眞一
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第9回 カード業界の再編

【バブル崩壊後も堅調な伸び】
1980年代後半に始まった平成景気が90年代に入って陰りを見せる。株価下落が続き、膨張を続けた株式市場が終焉を迎えた。“バブル崩壊”である。

景気後退や金融不安は企業の設備投資や個人消費の鈍化を招き、大手小売業の売上高も毎年前年割れを記録。経済の悪化は当然クレジット業界にも及ぶが、クレジットカードの取扱高は一時足踏みも見られたものの、バブル崩壊後もおおむね堅調な伸びを示した。消費低迷時ほど、カードが販売促進の武器として受け入れられた結果だろう。

カード業界はますます販売促進に励む。それを後押しするように90年代はクレジットカードの規制緩和が続き、カードの利便性は一層高まった。92年6月に銀行系カードのリボルビング払い解禁と信販系カードの地域制限の撤廃(「34年通達」廃止)が実現。95年4月には流通系・メーカー系カードの総合割賦(分割払い)も認められた。

一連の規制緩和によってカード会社の競争は一段と激化。買い上げポイントの還元やキャッシュバック、年会費無料化などの施策が講じられる一方で、旅行優待や飲食割引、家計診断といったカード機能外のサービス付帯も競うなど、顧客囲い込みを狙ったあの手この手の販促策が市場を駆け巡った。

80年代に本格化した提携カードの発行も、VISAやマスターカードなど国際ブランドの機能が付加されると、カードの汎用性や利便性は飛躍的に向上。カード会社が組む相手も消費関連企業はもちろん、広く非営利団体に及んだ。

カード市場の拡大は過度な競争も巻き起こす。年会費無料の常態化や加盟店手数料の引き下げ合戦のほか、キャッシングなどの過剰与信が高じて不良債権増に陥ったり、個人破産の急増に伴い貸し倒れ費用が膨らんだりして(注1)、カード会社の収支は厳しさを増した。次々と投入される特典・サービスはコストアップの要因となり、増え続ける新規会員や、EC決済などの新技術への対応は、コンピューターシステム経費の限りない上昇をもたらし、カード会社の負担は増加の一途をたどった。

【カード業界の再編、銀行の統合で促進】
一方、96年から2001年にかけて進められたわが国の金融制度改革は、広く金融界を席巻。デビットカードの取り扱いやキャッシュカードとクレジットカード一体型カードの発行が増えるなど、キャッシュレス決済の裾野が広がったほか、都市銀行の統合・合併や外資・異業種からの銀行参入、ネット銀行の出現など、わが国銀行業界は急速に変貌の時を迎えた。

銀行再編に伴い、カード業界では銀行系や信販系、流通系の垣根を越えた連携や、合併・再編が進んだほか、経営統合がカード会社の抱える諸問題解決への糸口ともなった。最初の例としては、JCBが97年11月に北海道拓殖銀行の破綻で銀行傘下のHCBを子会社化(後に合併)したことが挙げられる。

01年4月には、住友銀行とさくら銀行が合併して三井住友銀行(SMBC)が発足。傘下の住友クレジットサービスとさくらカードも統合して「三井住友カード」が誕生した。02年1月には、三和銀行と東海銀行の統合でUFJ銀行が発足。同月、三和銀系のフィナンシャルワンカードと東海銀系のミリオンカード・サービスも合併し、「UFJカード」が誕生した。その後、05年10月にUFJカードと日本信販の経営統合で「UFJニコス」が設立された。

05年10月には、UFJグループが三菱東京フィナンシャル・グループと統合して三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)が発足。MUFGが農林中央金庫と業務・資本提携したのを契機に、UFJニコスは06年10月に農林中金系の協同クレジットサービスを吸収合併。さらに、UFJニコスとディーシーカードが07年4月に合併し、「三菱UFJニコス」が誕生した。1年半で3回合併という目まぐるしいカード会社の再編劇となった。

そうしたさなか、07年4月にセントラルファイナンス(CF)がMUFGを離れ、三井住友フィナンシャルグループ(SMFG)と提携。08年2月にはSMFG傘下のSMBCがオーエムシーカード(OMC)を子会社化した。さらに、09年4月にCF、OMC、クオークが合併して「セディナ」が誕生。そのセディナが19年4月に三井住友カードの100%子会社となり、実質的に一つの事業体となってSMFGのカード部門を担う体制が整備された。

【独自の動きを見せたクレディセゾン】
独自の展開を見せたのは流通系のクレディセゾン。地銀などと組んで、銀行キャッシュカードとセゾンカード一体型カードの発行を推進する一方で、大手銀行とのアライアンスにも注力する。手始めに04年2月、りそなホールディングスと資本・業務提携をし、系列のりそなカードと組んで、「りそなカードセゾン」の発行に乗り出した。

続いて、クレディセゾンは04年12月にみずほフィナンシャルグループと包括的な業務提携契約を結び、翌年10月にみずほ系列のユーシーカード(UC)に資本参加。みずほ銀行のICキャッシュカードにセゾンカード機能を搭載した新カードを発行したほか、UCと会員獲得やカード発行、加盟店開拓・管理、プロセッシングなどの広範な業務で協働することで合意した(注2)。

クレディセゾンのパートナーシップは銀行に限らない。04年9月に髙島屋と組み「タカシマヤセゾンカード」を発行する一方、髙島屋クレジット(現髙島屋ファイナンシャル・パートナーズ)に出資。西武百貨店や緑屋をルーツとする同社がかつてのライバル企業と組むなど、従来の常識では考えられなかったが、加速する時代の変化が思い切った提携劇を生んだようだ。

21世紀の幕開けとともに、メガバンクを巻き込んだカード業界の再編が急速に進んだ。もとよりカード会社を取り巻く経営環境は絶えず変化している。新しい時代を見据えた各社の挑戦に終わりはない。

(注)
1 市場環境を見据え、多重債務発生防止の観点から改正貸金業法が06年12月に公布され、不適正与信または過剰与信防止を目的に改正割賦販売法が08年6月に公布された。
2 19年10月に包括的業務提携は終了。クレディセゾンは、UCへの出資を解消。「みずほマイレージクラブカードセゾン」の発行は継続。
掲載号 / 週刊金融財政事情 2020年3月23日号

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