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  1. 保健師が見る“今月のキーワード” 菊池希代江
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「生活リズムの変化」①食事と睡眠

コロナによる自粛の生活が強いられ、すでに1年以上経過しています。突然変化を突き付けられた人々の生活も、
それぞれ自分のスタイルに合わせながら、変化をプラスに転じた人とそうでない人、さまざまのようです。
健康診断は1年に1回、健康状態を把握するものですが、問診により生活習慣の変化も見ることができます。今回、某会社3450人の2019-2020年度の健診結果から、生活リズムにかかわる食事・睡眠・運動の3つの変化を見てみました。

◆生活リズムが改善した人
コロナ前とコロナになってからの変化の要因に通勤時間の問題があります。職種によって変化を受けない人もいますが、リモートワークが進んだことで、通勤時間が無くなった人は時間の使い方を工夫することで、生活リズムの変化に大きく影響を与えています。中でも顕著にみられたのは食事と睡眠です。終業後の時間が前倒しになったことで、夕食の時間が早くなり、就寝時間を早めた人が多いようです。

◆最も改善しやすい食事
生活の営みの中で、「食べること」は、大きくウエイトを占め、誰もがまず考えることの一つです。また同時に努力や忍耐など困難な取り組みの必要がなく、変化のつけやすいのも食事です。それらの理由から、コロナ禍に入り夕食時間が早くなり、食生活の改善が見られた人が約2割いました。
男性のメタボ(内臓脂肪の蓄積)の悩みどころに、夕食の問題があります。時間との戦いで仕事を切り上げても、帰宅すると21時を過ぎてしまう。でも家では食事を用意して待ってくれている人がいて、しかも食事は自分の好み。食べない理由がない。自宅に用意がなくても、行きつけの店やコンビニ弁当であっても同じことであり、夕食は多くの人にとって、お酒も加わり、「ほっとひと息できる時間」でもあります。この時間を確保するためには、阻むものは多くはないようです。
実際に夕食時間が早くなった男性144人のうち、体重が減少した人は39%、平均2.3kgの減少があり、腹囲が減少した人は41%で、平均3㎝の減少がありました。夕食時間が早くなることは、寝るまでの間に食べたものの消化時間が増え、寝ている間の脂肪の蓄積を減少させてくれます。おそらく、起きた時の胃もたれ感や、逆流性食道炎の軽減にもつながり、体への負担も軽くなったことでしょう。「体調が良くなった」という体感が得られることは、良い習慣が継続できる一番の要因になります。

◆睡眠時間と質の問題
生活リズムの変化の中で、2つ目に大きな変化は睡眠でした。夕食時間が早くなったことで、就寝時間を早められたことは、これまで睡眠時間の確保ができなかった人にはとても良かったことです。特に通勤時間が長くかかっていた人は、比較的睡眠時間を早くすることが容易であったことかと思います。もともと、就寝前にやらなくてはならない家事や趣味の時間などがあった方は、かえって夕食後と就寝時間の間が増えたことで、「ゆとり時間」が持てた人もいるかと思います。
そういった時間があることで、寝つきが良くなったり、睡眠時間が30分や1時間増えたことで睡眠の質が改善されたりした方もいるのかもしれません。
男女別にみますと、男女ともにコロナ禍に入り睡眠が改善された割合が多くなっています。女性は約10%の人が改善しており、睡眠時間の不足が解決策であったことも示唆されます。

一方で、睡眠は質の問題も多く、時間が確保できたからといって改善できないこともあります。コロナ禍による睡眠の質の悪化は問題視され、実際に良くなった人の半数の7%の人が悪化も見られています。要因には、テレワークが進んだことの弊害として、「オンとオフの区切りがつきにくくなった」という問題があります。仕事がエンドレスになってしまう、集中できない、昼夜逆転、ストレス、運動不足、コミュニケーション不足など、様々な因子が絡んでいることが考えられます。特に独居の方は心配ですが、家族と同居の方でもこの現象は見られています。
また睡眠の改善は生活習慣の改善だけでは見込めないこともあり、要因が特定できない場合や、メンタルが絡み合っている場合などもあり、医療機関の介入も必要なケースもあります。業務のパフォーマンスが落ちたことが散見され、睡眠状態が芳しくない場合は、要注意です。「眠れない」ことは脳の休息を妨げ、メンタルを悪化させます。メンタル不調の早期発見・早期介入にもつながる大事な指標でもあるので、軽視できない問題です。

生活リズムの変化において、食事・運動・睡眠の3つの変化を見ていきますが、運動は書ききれなくなりましたので、次回は「睡眠と運動」を予定したいと思います。

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