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第3回 非言語コミュニケーションと外見研究

外見リスクマネジメント
石川慶子氏

なぜ、私が「外見」という言葉を使うのか。それは、「非言語」だと学術的になってしまうと感じたからです。かといって「見た目」では、軽々しい響きになってしまいます。ここでは、いったん学術的な定義をおさえておきましょう。

代表的な著書が「非言語(ノンバーバル)コミュニケーション」(新潮選書 2011年 初版1987年)。
著者であるマージョリー・F・ヴァーガスは、言葉以外の数多くの方法が対人コミュニケーション用の信号として使われているとしており、非言語として9つの種類を提示しています。

  1. 人体(性別、年齢、体格、皮膚の色といった身体的特徴)
  2. 動作(姿勢や動き)
  3. 目(目つき)
  4. 周辺言語(パラ・ランゲージ、音声上特徴、声の質)
  5. 沈黙
  6. 身体接触
  7. 対人的空間
  8. 色彩

私が最初に影響を受けたのは、大坊郁夫です。彼の書いた「しぐさのコミュニケーション」(サイエンス社 2002年 初版1998年)は、繰り返し読んでいます。大坊の特徴は、「親しみを表現する視点」でコミュニケーションをとらえている点です。コミュニ―ションチャンネルは、音声的と非音声的の2つに分けています。大坊は、音声的の中に「言語」「近言語(声の高さ、速度、アクセント、間の置き方、タイミング)」を分類。非音声的には、「身体動作(視線やジェスチャー、表情)」「空間の行動(対人距離、着席位置)」「人工物(被服、化粧、アクセサリー)」「環境(家具、照明)」の4つを分類しています。ほぼマージョリーと同じです。この他、「被服と身体装飾の社会心理学」(北大路書房 S・B・カイザー 1997年)、「被服と化粧の社会心理学」(北大路書房 高木修監修 2003年)のように装飾に焦点を当てた研究もなされています。

深田博己は、自著「インターパーソナル・コミュニケーション」(北大路書房 2005年 初版1998年)の中で、非言語コミュニケーションの種類を「身体動作(ボディランゲージ)」「空間行動(対人距離)」「準言語(声の大きさ、言葉遣い、間、沈黙)」「身体接触」と大きく4つに分けています。特徴的なのは、被服が入っていない点でしょう。先行研究ではカバーされているのに、抜けているのは不思議です。ユニークなのは深田のまえがき。「私たちは、対人コミュニケーションを通して他者の意見や行動を変え、他者の持つ印象を操作し、他者を欺き、他者と交渉し、他者の噂話を楽しむ」とし、コミュニケーションにおける相互影響について深堀しています。コミュニケーションを3つのタイプ「相互作用」「意味伝達」「影響」で整理している点も実務では参考になります。謝罪で許されるには5つの要素「罪悪感」「事実認識」「自分への非難」「悔悛」「補償」が必要だとしていますが、ここに非言語要素がないのがやはりやや違和感があります。対人コミュニケーションを分類することに精力を使い切ってしまったのかもしれません。

奥田秀宇は、「人をひきつける心」(サイエンス社 2003年 初版1997年)で、魅力の成分を整理し、数値化しようと試みています。魅力には、「感情」「認知」「行動」の3つの成分があり、人と快不快の感情がある。快といった心地よい感情を持つと相手のことが好きだと認知し、好きになると一緒にいたいといった行動になる、と解説しています。ユニークなのは、快不快に影響を与えるのが、温かさ、冷たさといった性格と能力の見え方だとしています。失態の有無と好意度の調査では、「秀才も凡才も失態がない場合には好意度に変化はない。秀才が失態した際には好意度が上昇したのに対し、凡才が失態すると好意度が低下。優秀過ぎても好意は減少する。人は自分より優れた人を尊敬する一方、自分と同じ位の能力の人に親近感を覚える傾向がある」としています。外見と容貌について記載していますが、外見を身体的特徴としてのみとらえているため、表層的な記述が目立ち残念です。

非言語コミュニケーションは活発に研究されていますが、なかなか奥が深いといえます。分類、実験による数値化は参考になりますが、マネジメント実務において大切なのは現実的な問題解決です。危機管理やリスクマネジメントも言葉や分類にこだわると先に進めません。さあ、次に行きましょう。

<外見リスクマネジメント基礎講座(石川慶子MTチャンネル)>
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