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  1. 外見リスクマネジメント 石川慶子
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第5回 清潔感のある服装は相手から支援を引き出せる実証データ

自分の服装が相手の行動を変えることを実証した研究について紹介します。結論は、「人は自分に似た服装の人を支援する」。そして、「清潔感のある服装をしていると人からの支援時間が長い」のです。

いくつかの研究がありますが、わかりやすい研究結果を2つ紹介します。グリーンとギレスが1973年に行った実験は、ネクタイ着用した調査員としなかった市場調査員による応諾率の結果です。被験者は、中流階級30名、労働者階級の30名、通りすがりの一般大衆40名の合計100名。ネクタイ着用をした調査員への応諾率は、中流階級93%、一般大衆70%、労働者階級55%。着帯着用しなかった調査員の応諾率は、中流階級27%、一般大衆40%、労働者階級65%。

彼らはこの結果について、中流階級の男性は日ごろネクタイを着用しているため、ネクタイを着用した調査員に類似性を見出し、好意的に反応したと考えました。相手の被服によって、要請しやすかったり、要請しにくかったりすることがあるのです。

私が服装マネジメントを提供したあるITベンチャーの社長は、「ベンチャーだからTシャツにジャケットだといいと思っていた。でもネクタイを着用するようになったら、値切られなくなった。服装の大切さを実感した」とコメントしていました。

一方、グリーンとギレスの実験結果で見逃していけないことは、労働者階級は、ネクタイ着用した調査員には55%であったのに比べて、ネクタイ着用していない調査員には65%とアップしている点です。このことは、ネクタイ着用をしていない人に協力を求める場合には、同じようにネクタイをしていない方が応じられやすいということです。相手がTシャツなのにこちらがネクタイをしているとかえって堅苦しさを与えてしまうといったことは容易に想像がつきませんか。つまり、人は自分に似た服装の人に好感を持つ。このことから、相手の服装に合わせてこちらも服装選びをする必要があると言えるのです。

清潔感のある服装による研究も紹介しましょう。ハレル(1978)は、女性調査員A子さんに2つのパターンの身だしなみで216人の男性に個別に接近して道を尋ねさせました。この時、自分を名乗るケース(自己開示あり)と名乗らない(自己開示なし)パターンも組み合わせました。その結果、髪を整えて化粧をし、パンツスーツできちんとした服装をして自己開示した場合には、92.04秒援助行為があり、自己開示しなかった場合には58.94秒。同じA子さんが、髪を整えず、化粧をせず、食べ物の汚れがついたよれよれの服装をして、自己開示した場合は、47.5秒、自己開示しなかった場合は、56.6秒。

自己開示しない場合には、清潔感があろう(58.94秒)とよれよれであろう(56.5秒)と、援助される時間はほぼ変わりませんでしたが、自己開示した場合には、清潔感のある身なりでは92.04秒と、清潔感のない服装47.5秒と明らかに差が出ました。このことは、自己開示のない不審者については人からの援助が受けにくく、自己開示に加えて清潔感があれば援助はされやすいということです。

人は見かけで判断してはいけない、といった言葉がありますが、身だしなみを整えて自らを名乗る行為は、人からの援助を受けられることが実証されている事実にも向き合う必要があるといえそうです。
参考文献:「被服と化粧の社会心理学」2003 北大路書房


下記リンクをクリックするとコラムと連動した動画を視聴することができます。
https://www.youtube.com/watch?v=zM4B05IDh_M

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