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  1. 普遍的リスク対策 乙守栄一
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第60回 成績主義の弊害とその対処について

これまで、成績主義はいろんな弊害を産み出してきました。

学校では5-1、A/B/C、秀・優・良・可・不可、等これらの数字・記号・文字に一喜一憂されたご経験の方も多いかと思います。これらは他者より如何に優れているか?同一基準・尺度上に人を並べ、評価し、優劣を図る教育現場の現況です。

戦後、GHQの施策によって日本の教育カリキュラムは大きく内容が改訂され、戦後直後は黒塗りをした教科書を目の前にしながら、学校教育を行なった実状を耳にします。欧米の自由主義を日本に根付かせるため、これまでの思いやり、道徳観に満ちたカリキュラムは悉く戦犯の根源と見なされ、取り除かれていきました。

教育というモノは恐ろしいもので、娯楽が世間で蔓延するとそれに沿って時流も大きく様変わりし、よりよい生活をするために、という目標が目的化され、日本人の嗜好が物欲、所有欲にどんどん置き換わっていきました。高級車、一戸建ての家といったモノへの“目的化”が大手一流企業への就職羨望、そこに至るプロセスが一流大学、一流進学小中高への進学といった形で、幼児期から競争に晒されてきました。

バブル景気までは、経済で日本は世界一を目指す勢いでいたところ、バブル崩壊以降は、日本においては目指すべきターゲットが目の前から急に消え去ってしまいました。何を目指すべきか、訪れた不況の中、売り上げを達成することが簡単にはいかなくなると、今度は締め付け・管理の方向に経営の舵を切り出します。

内部統制、情報統制といった形で、ガバナンスを社内へ如何に効かせていくか、経営陣の目線は内側に向き出しました。社規社則による締め付け、社員一人ひとりを客観的という名ばかりのゴマすり評価スキームを構築していきます。忖度できる人材ほど出世が約束される、目的を見失った自己保身の塊のような人たちだけが、自分の今いる地位を守ることに固執し、次なる人財を育てなくなりました。その影響、煽りを受け、日本からは事業承継、後継できる人財がいなくなり、技術は安かろうことを求め、海外へと繰り出し、どんどん技術流出を招きました。その結果、日本の地場産業から長年培ってきた貴重な技術資産が失われていきました。

2020年、新型コロナ騒動を発端に、顕著に症状が出始めます。特に日本の大企業は日本における永遠の技術神話に縛られ、事あるごとにちょっとした製品に対してもメイドインジャパンを求める傾向が極めて強いです。世界的に認められたメイドインジャパンのブランド力、その背景としては優れた品質、安全性、抜きん出ていると。しかしながら、時すでに遅く、井の中の蛙にある実態、茹でガエル状態になっている日本の平和脳の人たち、いい加減に目を覚ましましょう。

過去の栄光にぶら下がり続けたところで、過去は帰ってきません。今とそこから先に控える未来にどう立ち向かうか、横並び主義で他人と比較することでしか教育を受けてこなかった人たちには、残念ながら感性を研ぎ澄ます教育は施されていません。

暗雲立ち込める日本の将来、コロナ渦が拍車をかけている不透明感、目指す“的”をなくした人たちが、目指すべき目線を隣人との比較に向けています。その結果が、誹謗中傷、いじめ、自分より立場の弱いものを見つけて、それを蔑み、安心するという負のスパイラルがこれまでの成績主義の犯してきた過ちです。

伸びやかな成長期に、個性を抑えつけた教育を受け、目的を見失った金太郎飴人材にとっては非常に危うくなっています。他人を蹴落とすことには幾ばくもの罪悪感を持たず、責任の取り方を露知らず、如何に逃げ切るかしか考えない、対策放置魔と化しています。

如何に対処していくか?文部科学省の教育方針(成績を付け、偏差値教育を施す)は簡単に覆すことはできません。この方針に幾ばくとも疑問に思う教員の方々がいるならば、この教育方針を利用しながらも、感性を磨く教育、施してあげてください。個性は伸ばせば伸ばすほど、その個人が光り輝きます。今のフィギュアスケートの羽生結弦選手が、プレゼンテーション練習で大きく今後の人生において芽が出たように、既存の枠組みだけを利用した教育では千里馬も千里馬たる人生を開くことが出来ません。名伯楽たる人たちが如何に世に出るか、ここが大きな成績主義教育を受け続けざるを得ない中での唯一の解決策ではないかと考えます。

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