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  1. 普遍的リスク対策 乙守栄一
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第73回 恥の文化がもたらすリスク鈍化の現状

日本人は恥をかくということを徹底して嫌う風潮があります。面子を気にする、人に嫌われたくない、和が大事と、挙げれば恥を避けるためのイロハが次から次に出てきます。

恥を忍ぶということで、堪えることも一つの美徳として日本人は捉えてきました。

ここで視点をグローバルに変えたとき、西欧は罪の文化と言われます。内に秘めたことに違反していないか、人の心に住む神の御心に反していないか、必ず内なる心に聞くと言います。これを良心ともいい、この教えに反していないかということを自分自身に問いかけて行動します。

ここから云えることは、日本人は人と違うことを好まない、リスクは負わない、みんなが行なえば自分も追随するという国民性が読み取れます。異端児はとことん“いじめ”の対象としてみられ、同調しない、協調性のない人間としてレッテルを貼ります。学校から会社や役所といった組織に至るまで、大小、程度の差を問わず“いじめ”“ハラスメント”の類は行なわれています。

一つの国民性を見た時、これがメリットに転じた時、デメリットに転じた時、それぞれ存在していると考えています。バブル時など、景気の良い時は誰彼問わず、リスクという箍(たが)が外れ、勢いに乗じて相当な勢いで景気を押し上げていきました。一方、景気が一気にダウンすると一気に横並びに萎むという管理で縛る社会に戻ってしまいます。日が上れば花開き、日が沈めば花閉じる朝顔のように、この自然同調的な国民性は際立っています。

第二次世界大戦における敗戦は別にして、それまでは何処の海外勢力にも侵されなかった国、ニッポン。合議制というプロセスで物事を決める、右へ倣え、他人の意見は自分の意見、物静かであることの美徳、グローバルという荒波に打って出るにはどれも世界からは誤解を招く所作ばかリ。何をもって渡り歩くか?日本という全体同調主義が行き過ぎている現在、日本の“凝り”となって存在しており、海外から見ると茹でガエル状態になっています。

如何にこの事実に気づくか、まずは他人ではなく自分の本質的な意見を持つこと、何が正しいか他人の意見ではない、本質を語れる自分自身の意見を持つことが大切です。しかし、これを阻害するのが集団的な囚われの心理状態です。周りが見ているから恥ずべき行動をしない、周りが見ていないから恥ずかしく思わず、隠れて本来恥ずべき行動をしてしまう。

日本は古来、お天道さまが一人ひとりの行動を見ている、ということが言われていました。ここは日本古来の教えにも良心を大切にする、という点が備わっていました。いつの間にかこの良心の部分が抜け落ち、恥の文化だけが残ってしまいました。戦後復興から急速な勢いで経済を立て直し、発展を続けてきた日本。民度が高いということで近隣諸国からも憧れの的として見られてきましたが、今はどうでしょう?日本人だけが日本人のことを民度が高い、自画自賛してしまっていることに気づいていますか?タバコのポイ捨て、吸い殻が溜まっていれば堂々と道端でもポイ捨てを行なっている人を見かけませんか?このポイ捨ては恥ずべき行動と行なっている当人は思っていないのです。

不況に相俟って、今の日本人の大半は、どこか大手が動けば自分たちも動く、権威ある研究機関が証明しているならば我々も考える土台として “検討”してもよいといった、上目線でありながら、主体的な考えを持たず、先に動いてもし失敗したら“恥をかく”というリスクを取らない国民性がそのまま出ています。この国民性の総和が今の経済停滞、失われた20年、30年をもたらしているという事実に誰が気付いているでしょうか。今が良ければ、過去が良ければ、もうそのようなセリフは通用しません。恥ずべき文化は世界から見るととっくに恥ずべき醜態になっています。

時期を見据えた“恥の文化”、これを機にあらためて認識を捉えなおしてみませんか。

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