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  1. 産業法務の視点から 平川博
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第76回 ワクチンの功罪(2)

【前編:2020年7月「第67回 ワクチンの功罪」】
1.総論
(1)ワクチンの種類
NHKの「新型コロナウィルス」という特設サイトの「ワクチンQ&A なぜワクチンが必要?効果は?」と題するウェブページでは、「新型コロナウイルスのワクチンではこれまでに使われた経験のない『遺伝子ワクチン』が実用化されました。ワクチンの種類はどのようなものがあるのでしょうか?」という質問に対する回答という形式で、以下のように記載されています。
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■生ワクチン
最も歴史のあるワクチンの1つが実際のウイルスや細菌の中から毒性の弱いものを選んで増やした「生ワクチン」で、「弱毒化ワクチン」とも呼ばれます。
毒性の弱いウイルスそのものを体内に入れることで、免疫の働きでウイルスを攻撃する抗体などを作り出します。
生ワクチンは効果が高いものも多く、はしかや風疹など従来からさまざまな病気に対して使われています。
一方で、たとえばポリオなどではまれに生ワクチンによって感染したケースがあり、課題になっています。
新型コロナウイルスでは、ワクチンメーカーの阪大微生物病研究会や東京大学などで研究や開発が行われています。

■不活化ワクチン
不活化ワクチンは、実際のウイルスをホルマリンで加工するなどして、毒性をなくしたものを投与するワクチンです。
季節性インフルエンザのワクチンはこの種類で、新型コロナウイルスでは、国内のワクチンメーカー、KMバイオロジクスなどが開発を進めています。
海外では中国のシノバックやシノファームなどが実用化し、中国などで接種が始まっています。

■VLPワクチン
ウイルスそのものを使わないタイプのワクチンも多く開発が進められています。
このうち「VLPワクチン」は、ウイルスそのものは使わず、ウイルスの表面に出ている突起の「スパイクたんぱく質」を人工的に合成したものを投与します。
「スパイクたんぱく質」は、ウイルスを攻撃する抗体の目印となるもので、人工的に作って投与することで、人に備わっている免疫の働きによって抗体を作り出す仕組みです。
新型コロナウイルスでは、大阪大学などで研究が行われているほか、アメリカなどでは数万人規模で安全性と有効性を確認する臨床試験が行われています。

■組み換えたんぱく質ワクチン
VLPワクチンと同様、ウイルスの表面にある「スパイクたんぱく質」を人工的に作り出すワクチンの1つが「組み換えたんぱく質ワクチン」です。
遺伝子組み換え技術を使って人工的にたんぱく質を作って投与することで、体内でウイルスを攻撃する抗体を作り出します。
新型コロナウイルスでは、国内の製薬大手、塩野義製薬が開発を進めています。
また、アメリカの製薬会社ノババックスのワクチンもこの種類で、開発が成功すれば武田薬品が国内向けに供給する予定です。

■mRNAワクチン
新型コロナウイルスのワクチンでは、人工的に合成したウイルスの遺伝子を使った「遺伝子ワクチン」が世界で初めて実用化されました。
国内で最初に接種が始まったワクチンも遺伝子ワクチンの1つ、「mRNAワクチン」でウイルスの表面にあるスパイクたんぱく質を作るための遺伝情報を伝達する物質、「mRNA」を使います。
人工的に作って注射で投与することで、体の中でスパイクたんぱく質が作られ、それに免疫が反応して抗体が作られます。
新型コロナウイルスの感染が広がる前には実用化されていなかった新たな技術で、開発にかかる期間が従来のワクチンより大幅に短縮できるのが大きな利点になっています。
アメリカの製薬大手ファイザーとドイツのバイオ企業ビオンテックが開発したワクチンやアメリカのモデルナが開発したワクチンがこのタイプです。
mRNAを使った医薬が実用化されたのはこれが初めてで、日本国内でも製薬大手の第一三共が、開発を進めています。

■DNAワクチン
遺伝子ワクチンの別のタイプが「DNA」ワクチンでDNAを人工的に作り出して、ワクチンとして接種します。
投与されたDNAは、体内の細胞の中で核に入り込んでmRNAを作りだし、そのmRNAによってスパイクたんぱく質が作られることで、抗体が生み出されます。
大阪大学発のバイオベンチャー企業、アンジェスのワクチンはこのタイプで、国内では最も早く、実際に人に投与して安全性や有効性を確認する臨床試験を始めています。

■ウイルスベクターワクチン
ウイルスのスパイクたんぱく質を作る遺伝子を、無害な別のウイルスに組み込んで、そのウイルスごと投与するワクチンです。
無害なウイルスが細胞に感染して、新型コロナウイルスのスパイクたんぱく質を作りだし、抗体が作られます。
イギリスの製薬大手アストラゼネカとオックスフォード大学が開発したワクチンやアメリカの製薬大手ジョンソン・エンド・ジョンソンのワクチン、それにロシアの研究機関が開発したワクチン、「スプートニクV」もこのタイプです。
日本国内でもバイオ企業のIDファーマが開発を進めています。
(2021年2月16日時点)
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(https://www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/vaccine/qa/detail/qa_01.html)

(2)ワクチンと予防接種の関係
ヒューマニティー幼保学園HPの「ワクチンと予防接種の違いは?子どもの大切な命を守るワクチン・予防接種」と題するウェブページでは、「ワクチンと予防接種の違いとは?」という見出しの下に、以下のように記載されています。
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ワクチンとは、感染症や伝染病などを引き起こす細菌やウイルスの一部を精製・加工によって毒性を弱めたもののことをいいます。予防接種とは、ワクチンをまだその病気に感染したことがない人の体内へ入れて、感染しないように免疫力を高めることを指すわけです。
ワクチン接種をすることで、万が一かかってしまっても症状を軽くすませる効果があります。また、本人がその病気にかからないようにすることで、まわりの人にうつさない効果もあります。そして、抗生物質の効かない耐性菌の出現を防ぐこともできるようです。
抗生物質の効かない耐性菌の出現を防ぐというのは、たとえばワクチン接種をせずに細菌から感染する病気にかかると、抗生物質が処方されます。もしもそれが繰り返された場合、体内では徐々に耐性ができて、抗生物質が効かない耐性菌が増えてしまうことになるのです。耐性菌による病気の治療は困難なので、ワクチン接種が重要になってくるわけです。
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(https://humanity0310.com/question/1070)
因みに、「ワクチン.net」というサイトの「予防接種とワクチンの役割」と題するウェブページでは、「ワクチンの役割『個人を守る』と『社会を守る』」という見出しの下に、以下のように記載されています。
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予防接種には、「個人を守る」と「社会を守る」の2つの役割があります。
予防接種を受けるとその病気に対する免疫(抵抗力)がつくられ、その人の感染症の発症あるいは重症化を予防することができます。
また、多くの人が予防接種を受けることで免疫を獲得していると、集団の中に感染患者が出ても流行を阻止することができる「集団免疫効果」が発揮されます。
さらに、ワクチンを接種することができない人を守ることにもつながります。
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(https://www.wakuchin.net/about/role.html)

2.各論
(1)帯状疱疹ワクチン
2017(平成29)年2月10日に開催された「第6回 厚生科学審議会(予防接種・ワクチン分科会 予防接種基本方針部会 ワクチン評価に関する小委員会)」で公開された「帯状疱疹ワクチン ファクトシート」(資料1-2)と題する文書の冒頭に記載されている要約では、「予防接種の導入により期待される効果、安全性、医療経済学的評価等」という見出しの下に、以下のように記載されています。
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(効果)
帯状疱疹ワクチン接種の目的は帯状疱疹の発症率を低減させ、重症化を予防することである。国内で認可・使用されている帯状疱疹ワクチンは、阪大微研の乾燥弱毒生水痘ワクチンであり、その有効性等については、同じ Oka 株を元に作製された ZOSTAVAX®で示されている有効性と同等であると考えられる。60 歳以上の 38,546 人を対象に行った ZOSTAVAX®の帯状疱疹発症予防効果を調べた研究では、接種後 3.12 年のサーベイランス期間において、帯状疱疹発症、PHN 発症、疾病負荷が、それぞれ 51.3%、66.5%、61.1%減少したと報告されている。また、50~59 歳の 22,439 人を対象とした別の研究では、ワクチン接種群の帯状疱疹発症阻止効果は 69.8%であった。

(持続性)
ZOSTAVAX®接種後の発症阻止効果の持続性については、接種後4~7年間では帯状疱疹発症とPHN 発症が、それぞれ 39.6%、60.1%減少し、疾病による死亡や損失した生活の質を示す疾病負荷は50.1%減少することが明らかにされた。
また、接種後 7~11 年間では、帯状疱疹発症と PHN 発症が、それぞれ 21.1%、35.4%減少し、疾病負荷が 37.3%減少したと報告されている。さらに、60 歳以上の176,078 人を対象とした研究では、ワクチン接種後1年以内の帯状疱疹発症阻止効果はワクチン非接種者と比較して 68.7%で、接種8年目ではその効果は 4.2%であったと報告されている。

(安全性)
帯状疱疹ワクチンの安全性について特段の懸念は報告されていないが、50 歳以上を対象とした国内臨床試験では、ワクチン接種後6~8週までの副反応の発現割合は 50.6% (5%以上[注射部位の発赤、そう痒感、熱感、腫脹、疼痛、硬結]、1~5%未満[発疹、倦怠感]、1%未満[紅斑、そう痒、関節痛、筋骨格痛、動悸、疼痛])であった。60 歳以上を対象とした大規模研究では、ワクチン接種群はプラセボ群と比較して接種後の有害事象に有意差は認められなかった。
北米と欧州で行われた50~59歳を対象とした無作為化二重盲検プラセボ対照比較研究では、ワクチン群で 63.9%(うち重度のものは 0.7%)に局所反応が認められた。また、全身反応では頭痛がもっとも多く(うちワクチン関連と考えられたものは3%未満)、頭痛を除外したワクチン関連の全身反応は、プラセボ群と比較し有意な差は認められなかった。
帯状疱疹ワクチン接種に関連した有害事象は稀である。また、米国 VAERS による調査では、帯状疱疹ワクチン被接種者では破傷風トキソイド含有ワクチン被接種者と比較して関節炎、脱毛症の発症率が高かった。
帯状疱疹の既往のある50歳以上の者に帯状疱疹ワクチンを接種した場合、局所反応発生率はプラセボ群より多いものの、重篤な有害事象は認められなかった。また、2回接種法による検討でも、重篤な有害事象の増加は認められなかった。
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(https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10601000-Daijinkanboukouseikagakuka-Kouseikagakuka/0000185900.pdf)

(2)インフルエンザワクチン
①効果と有効性
厚生労働省HPの「令和2年度インフルエンザQ&A」と題するウェブページでは、「Q.21:ワクチンの効果、有効性について教えてください」という質問に対する回答という形式で、以下のように記載されています。
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インフルエンザにかかる時は、インフルエンザウイルスが口や鼻あるいは眼の粘膜から体の中に入ってくることから始まります。体の中に入ったウイルスは次に細胞に侵入して増殖します。この状態を「感染」といいますが、ワクチンはこれを完全に抑える働きはありません。
ウイルスが増えると、数日の潜伏期間を経て、発熱やのどの痛み等のインフルエンザの症状が出現します。この状態を「発病」といいます。インフルエンザワクチンには、この「発病」を抑える効果が一定程度認められていますが、麻しんや風しんワクチンで認められているような高い発病予防効果を期待することはできません。発病後、多くの方は1週間程度で回復しますが、中には肺炎や脳症等の重い合併症が現れ、入院治療を必要とする方や死亡される方もいます。これをインフルエンザの「重症化」といいます。特に基礎疾患のある方や高齢の方では重症化する可能性が高いと考えられています。インフルエンザワクチンの最も大きな効果は、「重症化」を予防することです。…(中略)…
「インフルエンザワクチンの有効性」は、ヒトを対象とした研究において、「ワクチンを接種しなかった人が病気にかかるリスクを基準とした場合、接種した人が病気にかかるリスクが、『相対的に』どれだけ減少したか」という指標で示されます。…(中略)…
「インフルエンザ発病防止に対するワクチン有効率が60%」とは、下記の状況が相当します。
・ワクチンを接種しなかった方100人のうち30人がインフルエンザを発病(発病率30%)
・ワクチンを接種した方200人のうち24人がインフルエンザを発病(発病率12%)
→ワクチン有効率={(30-12)/30}×100=(1-0.4)×100=60%
ワクチンを接種しなかった人の発病率(リスク)を基準とした場合、接種した人の発病率(リスク)が、「相対的に」60%減少しています。すなわち、ワクチンを接種せず発病した方のうち60%(上記の例では30人のうち18人)は、ワクチンを接種していれば発病を防ぐことができた、ということになります。
現行のインフルエンザワクチンは、接種すればインフルエンザに絶対にかからない、というものではありません。しかし、インフルエンザの発病を予防することや、発病後の重症化や死亡を予防することに関しては、一定の効果があるとされています。
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(https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou01/qa.html#q21)

②副反応
引き続き厚生労働省HPの「令和2年度インフルエンザQ&A」と題するウェブページでは、「Q.33:インフルエンザワクチンの接種によって引き起こされる症状(副反応)には、どのようなものがありますか?」という質問に対する回答という形式で、以下のように記載されています。
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免疫をつけるためにワクチンを接種したとき、免疫がつく以外の反応がみられることがあります。これを副反応といいます。季節性インフルエンザで比較的多くみられる副反応には、接種した場所(局所)の赤み(発赤)、はれ(腫脹)、痛み(疼痛)等が挙げられます。接種を受けられた方の10~20%に起こりますが、通常2~3日でなくなります。
全身性の反応としては、発熱、頭痛、寒気(悪寒)、だるさ(倦怠感)などが見られます。接種を受けられた方の5~10%に起こり、こちらも通常2~3日でなくなります。
また、まれではありますが、ショック、アナフィラキシー様症状(発疹、じんましん、赤み(発赤)、掻痒感(かゆみ)、呼吸困難等)が見られることもあります。ショック、アナフィラキシー様症状は、ワクチンに対するアレルギー反応で接種後、比較的すぐに起こることが多いことから、接種後30分間は接種した医療機関内で安静にしてください。また、帰宅後に異常が認められた場合には、速やかに医師に連絡してください。
そのほか、重い副反応(注1)の報告がまれにあります。ただし、報告された副反応の原因がワクチン接種かどうかは、必ずしも明らかではありません。インフルエンザワクチンの接種後に報告された副反応が疑われる症状等については、順次評価を行い、公表していきます。
(注1)重い副反応として、ギラン・バレ症候群、急性脳症、急性散在性脳脊髄炎、けいれん、肝機能障害、喘息発作、血小板減少性紫斑病等が報告されています。
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(https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou01/qa.html#q33)

(3)BCGワクチン
①効果
厚生労働省HPの「結核とBCGワクチンに関するQ&A」と題するウェブページでは、「問4.BCGワクチンにはどのような効果がありますか?」という質問に対する回答という形式で、以下のように記載されています。
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BCGは結核を予防するために接種するワクチンです。その効果について、多くの文献を総合的に評価した結果、乳幼児期にBCGを接種することにより、結核の発症を52~74%程度、重篤な髄膜炎や全身性の結核に関しては64~78%程度予防することができると報告されています(Colditz et al, 1995)。また、一度BCGワクチンを接種すれば、その効果は10~15年程度続くと考えられています。
日本の結核患者の発生率は米国の4倍程あるにも関わらず、小児に限ると米国の小児の患者の発生率を下回っており、その一因は米国で広く接種されていないBCG接種の効果ではないかと言われています。
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(https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/bcg/index.html#Q04)

②副反応
引き続き厚生労働省HPの「結核とBCGワクチンに関するQ&A」と題するウェブページでは、「問6.BCGワクチンを接種することで、どのような副反応が起こりますか?」という質問に対する回答という形式で、以下のように記載されています。
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BCGは長きに渡り、世界中で安全に使用されてきたワクチンです。リンパ節の腫れや局所・全身の皮膚症状などの比較的軽度な局所反応は一定の頻度でみられますが、骨炎や全身性のBCG感染症、アナフィラキシーなどの重大な副反応の報告は稀です。
平成25年度は約90万人が接種されていますが、厚生労働省に届けられた定期のBCGワクチン接種に関する副反応報告数は174件で、リンパ節の腫れが74件と最も多く、次いで皮膚症状が40件報告されています。比較的重い疾患としては骨炎が10件、全身性のBCG感染症が2件報告されています。
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(https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/bcg/index.html#Q06)

3.新型コロナワクチン
(1)評価
研究開発の期間が余りにも短く、承認に慎重な当局の姿勢を反映するものとして、「2020(令和2)年10月2日に開催された「第17回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会」で公開された「ワクチンの有効性・安全性と副反応のとらえ方について」(資料3)と題する文書では、「新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)ワクチンの評価に関する考え方(概要)」(出典:医薬品医療機器総合機構HP掲載資料)という見出しの下に、以下のように記載されています。
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概要
〇感染症予防ワクチンの非臨床評価及び臨床評価については、「感染症予防ワクチンの非臨床試験ガイドライン」「感染症予防ワクチンの臨床試験ガイドライン」を参考にすることができるが、新型コロナウイルスワクチンは、mRNAワクチン、DNAワクチン、ウイルスベクターワクチンなど、新たなモダリティを用いた開発が進められている。
〇本指針は、2020年8月時点の状況を踏まえた上で、国内でのSARS-CoV-2ワクチンの開発のために求められる有効性及び安全性の評価について、薬事規制当局間の議論や感染症又はワクチン等に関する専門家との意見交換を経て作成した考え方を提示したもの。

有効性評価(抜粋)
➢現状においては、原則として、SARS-CoV-2ワクチン候補の有効性を評価するために、COVID-19の発症予防効果を評価する臨床試験を実施する必要がある。
➢その他の重要な評価項目として、ウイルス学的又は血清学的手法により確認されるSARS-CoV-2感染の他、動脈血酸素飽和度(SpO2)、酸素療法の要否、人工呼吸器又はECMOによる管理、死亡等のCOVID-19の重症度に関する項目の評価を行うことが想定される。
➢今後、他のSARS-CoV-2ワクチンの臨床試験において発症予防効果が確認され、発症予防効果に関連する免疫原性の指標が複数の試験で確認された場合には、当該ワクチンの免疫原性の結果を参考にできる可能性がある。

安全性評価(抜粋)
➢有害事象については、SARS-CoV-2ワクチン接種から少なくとも7日間に認められた特定の局所反応(腫脹、発赤、硬結、疼痛等)及び特定の全身反応(発熱、頭痛、倦怠感、筋肉痛等)並びに少なくとも28日間に認められた有害事象を収集することが求められる。
➢臨床試験においても、免疫原性の特性の解析に基づいて、Th1/Th2バランス、SARS-CoV-2抗原特異的抗体価、中和抗体価等に基づき、疾患増強のリスクを評価する。
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(https://www.mhlw.go.jp/content/10601000/000680224.pdf)

②効果
厚生労働省HPの「新型コロナワクチンについてのQ&A」と題するウェブページでは、「3.新型コロナワクチンの効果」という見出しの下に、以下のように記載されています。
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Q3-1 新型コロナワクチンの効果(発症予防、持続期間)はどうなりますか。
現在、国内外で新型コロナワクチンの開発が進められ、新型コロナワクチンの効果や安全性等については確認されているところです。
また、ファイザー社、モデルナ社、アストラゼネカ社は、開発中のワクチンを投与した人の方が、投与していない人よりも、新型コロナウイルス感染症に発症した人が少ないとの結果又は中間結果が得られたと発表しています。
臨床試験や接種が始まってから時間があまり経過していないことから、効果の持続期間については明らかになっていません。今後の情報が明らかになるのを待つ必要があります。

Q3-2 変異株の新型コロナウイルスにも効果はありますか。
一般論として、ウイルスは絶えず変異をおこしていくもので、小さな変異でワクチンの効果がなくなるというわけではありません。
また、ファイザー社のワクチンでは、変異株の新型コロナウイルスにも作用する抗体がつくられた、といった実験結果も発表されています。
承認申請がなされた新型コロナワクチンの審査に当たっては、変異株に関する情報も含め、引き続き様々な情報を収集しつつ、適切に有効性、安全性等を確認してまいります。
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(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00222.html#005)

②安全性と副反応
引き続き厚生労働省HPの「新型コロナワクチンについてのQ&A」と題するウェブページでは、「新型コロナワクチンの安全性と副反応」という見出しの下に、以下のように記載されています。
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Q4-1 ワクチンの安全性の確保のため、どのような取組をしていますか(審査の厳格性など)。
臨床試験では、有効性・安全性等に関するデータを収集するため、健康な方や患者さんに協力してもらい、開発中のワクチンを実際にヒトに投与して試験します。
その後、臨床試験の結果などに基づいて、ワクチンの有効性・安全性、品質についての審査が行われ、ワクチンが承認されます。
なお、国内で薬事承認されている、ファイザー社のワクチンにおける臨床試験の主な結果は、こちらに掲載しています。
また、国内のワクチンの接種の開始後は、副反応を疑う事例を収集し、専門家による評価を行っています。こうした結果を公表するなどして、安全性に関する情報提供などを行っていきます。
これまでの報告状況等は、こちらに掲載しています。こうした報告には、偶発的なものや他の原因によるものなど、予防接種との関連がない症状も含まれています。

Q4-2 これまでに認められている副反応にはどのようなものがありますか。
ファイザー社のワクチンでは、接種後に注射した部分の痛み、疲労、頭痛、筋肉や関節の痛み、寒気、下痢、発熱等がみられることがあります。こうした症状の大部分は、接種後数日以内に回復しています。
日本への供給が計画されている海外のワクチン(アストラゼネカ社、モデルナ社、ノババックス社が開発中のワクチン)でも、ワクチン接種後に、 ワクチン接種と因果関係がないものも含めて、接種部位の痛みや、頭痛・倦怠感・筋肉痛等の症状がみられたことが論文等に発表されています。(詳細は、副反応に関する審議会資料をご覧ください。)
また、海外で、まれな頻度でアナフィラキシー(急性のアレルギー反応)が発生したことが報告されています。もし、アナフィラキシーが起きたときには、接種会場や医療機関ですぐに治療を行うことになります。
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(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00222.html#009)

4.結語
ワクチンは医薬品である生物学的製剤の一種であり、適正使用を推進することによって、感染や重症化の予防という目的を達成することができるという観点から、一般市民のワクチンに対する過剰な期待や警戒心を煽るような政治的発言や報道は、言論や報道の自由という憲法上の権利によって正当化されるべきものではなく、公共の福祉を念頭に置いて慎むようにして貰いたいものです。

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