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第8回 魅力の心理学-秀才の失敗は好感度が上がる?

「魅力」とは一体何なのでしょうか。広報の観点から考えると「魅力」とは、「人を惹きつける力」「好感を持たれること」になります。広報活動の目的が「理解、信頼、好感」であることからすると、なくてはならない要素ともいえます。リスクマネジメントの観点から考えても、好かれていると許される可能性が高まりますから、好感は自分や会社を守る役割を果たします。

たとえば、大好きなタレントが泥酔して大声を張り上げて人に迷惑をかけたといったニュースを見たら、一瞬嫌だなと思っても、羽目をはずしてしまったのかな、何か嫌なことでもあったのかな、と寛大に受け止めて評価が甘くなり、許したくなりませんか。反対に普段から嫌な印象をもっているタレントが泥酔して大声を張り上げたらますますイメージが悪くなって、二度と見たくない、と思うのではないでしょうか。

アロソン(1966年)が行った能力と失敗の関係を調査した結果もあります。秀才、凡才が共にコーヒーをこぼすといった失敗に対して好感度がどう変化したか。失敗がない場合には好感度に変化がないのに、秀才が失敗をすると好感度が上がり、凡才が失敗すると好感度が下がるといった結果になりました。秀才の失敗には親近感が持てるが、凡才の失敗は評判を下げるということ。別の事例で考えてみましょう。「時には弱さを見せることも大事」ですが、いつも弱弱しいと思われていたら、「しっかりしなさい!」と言われてしまいます。弱さを見せていいのは、相手からスキがない人、強い人と思われている時なのです。つまり、相手との日常的な相関関係で好感度は変化するといえます。

では、好かれるというのはどういった状況なのでしょうか。よくよく考えると案外難しいかもしれません。危機管理の研修で筆者が「平時から好感を持たれることは最大のリスクマネジメント」と説明した際には、「えー、そんな感覚もう忘れている!どうやったら好かれるのですか?」と50代の男性から質問がありました。「いい感じ」といった感覚が全くわからないのだとか。

このコラムではできるだけ客観的な情報を提供したいので、心理学的解説を試みます。アッシュ(1946年)やアンダーソン(1968年)らは、好かれる性格、嫌われる性格について実験をしています。青木が1971年に行った、20代から40代の大学生と勤労者に55個の性格表現語の調査結果は下記でした。

<嫌われる性格>
二枚舌を使う、他人のせいにする、醜い、人をあざける、人を軽蔑する、中傷する、告げ口をする、残忍な、でたらめな、意地悪な、不人情な

<好かれる性格>
親切、やさしい、頑張る、朗らか、明るい、責任感ある、努力する、寛大な、粘り強い、責任をとる、落ち着きのある、ファイトのある、一生懸命になる

この調査結果を見ると、自己中心的で自分を高く見せる、人を低く見せる人は嫌われ、明るく前向きで頑張る人が好かれることがわかります。

そうすると、「そんなのはわかっているよ。自分はどう見えるのかわからないんだ。どうしたらいいか」と研修で質問がきたことがありました。以来、筆者の場合には、ペアセッションで2人一組になってお互いがどう見えるのかをフィードバックし合ってもらいます。ある研修では、「自分では明るく清潔な印象を作っているつもりだったのに、隣の人には、ちょっと暗いし、あまり清潔な感じがしない、と言われて驚いた。今日の最大の学びでした!」と回答した大手ゲームメーカー30代の社員がいました。何事も自分のケースで体感しないと浸透しないのです。

全体の魅力ある雰囲気づくりについては、性格や能力だけではなく、外見も影響します。大坊は、人を惹きつける魅力として、化粧、眼鏡、ボディスタイル、服装、眉毛や顔形といった容貌を取り上げ、地域性や文化的比較の観点から研究をしています。国によっても好かれる顔形は違うのはその通りだろうと思います。時代によっても変化するでしょう。

魅力については調べると奥が深くて抜けだけない様相を呈してしまいました。心理学的アプローチにも限界があると感じます。人によって「魅力」は異なるため、好かれたい人に好かれるようにするにはどうしたらいいのか、今回は立ち止まって考える回でした。より具体的なスキルは順次解説していきます。

関連する解説動画

【外見リスクマネジメント基礎講座】(石川慶子MTチャンネル、RMCAコラボ企画)
第6回 魅力とは?
https://www.youtube.com/watch?v=vTbV5xLdqnM&t=19s

第7回 魅力についての研究本紹介
https://www.youtube.com/watch?v=ZgFdzj8TvrA&t=89s

第8回 弱さも魅力?
https://www.youtube.com/watch?v=nPUhHl-Zaio&t=127s

<参考図書>
「魅力の心理学」(ポーラ文化研究所 大坊郁夫 1997年)
「人をひきつける力」(サイエンス社 奥田秀宇 2003年)
「見せる自分・見せない自分」(サイエンス社 安藤清志 2002年)

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