あの記者会見はこう見えた!
石川慶子氏
関西電力は役員が金品を受領していたことを受け、9月27日に記者会見を行いました。これほど「不誠実」という言葉がぴったりとあてはまる会見を久しぶりに見ました。どのように不誠実であったのかを分析します。
質問に向き合わない態度
クライシスコミュニケーションとは、起きたことに対してどう向き合うのか、の説明責任を果たす活動であり、ここで失敗するとダメージが広がります。今回の関電の記者会見は、起こしたことに対する反省が全く見られない、質問に真摯に向き合う姿勢が全くない会見でした。
具体的なやりとりを記載します。私がもっとも唖然としたのは、自分達に不都合な質問に対しては、用意した文書を繰り返して読んでいたことです。起こしたことへの姿勢どころか、質問に対してさえ向き合っていない。
記者「処分者がいるのに公表しなかったのはなぜですか」
社長「(手元にある文書を淡々と読み上げる)ある特定の人物から金品を受領し、個人が保管。儀礼的なもの以外は返還しました。発注プロセスには問題がなかった。預かったことは不適切であるため関係者の処分を行った。今後再発防止策を確実に実施していく」
記者「質問に対する答えになっていない。改めてお聞きします。公表しなかったのはなぜですか」
社長「そのような判断の下、社内処分をして再発防止を講じていくということ」
記者「質問の答えになっていない。改めてお聞きします。なぜ公表しなかったのですか」
社長「違法ではなかった。不適切ではあったことから、社内で判断した」
このように記者が同じ質問を3回繰り返していました。この前にも別の記者が同じ質問をしているので4回されていることになります。模擬訓練であれば、この後にさらに質問を続けます。「要するに、隠すためだったのですね」と。
公表しなかっただけでなく、公表しなかった理由についても「文書を読み上げている態度」がいかにも不誠実です。では、どうすればいいか。このような時には公表しなかったことを「率直に反省する言葉」で回答する必要があります。誤った判断であったことを自ら認め、そこに向き合い、真摯に反省する態度こそが信頼回復の第一歩になるからです。
過去の慣例を断ち切る勇気
クライシスコミュニケーションという考え方の起源は、100年以上前に遡ります。PRの父アイビー・リーがクライアントである鉄道会社が事故を起こした際に、会社は「過去の慣例に従って隠蔽しようとした」ところ、彼はそれを止めさせて記者を現場に呼んで事故現場を見せました。その姿勢に対して会社の評判が上がったことから、説明責任を果たす活動としてクライシスコミュニケーションの考え方が広がりました。
金品を受領することが過去の慣例であってもそれを断ち切る勇気が必要です。関電は過去の慣例を断ち切ることができなかったこと、処分しながら公表しなかったこと、そして公表しなかったことを真摯に反省する言葉を述べることができなかったこと、3つの失敗を露呈した会見と見えました。
判断を誤るリスクは誰にでもあります。この誤りに向き合い、反省の言葉を述べる誠実さを持つことの大切さを改めて感じました。
【参考サイト】
記者会見動画 ノーカット ANNニュース
https://www.youtube.com/watch?v=Jzkww4kjJA4