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第66回中小零細企業のブランド構築と地域活性化

1.はじめに

千葉科学大学教授 八角憲男 著

日本の現状を高齢化率でみれば,平成26(2014)年10月1日現在,26.0%(前年25.1%)となりその割合は「高齢社会」を超え,すでに「超高齢社会」に突入している。また,「日本の将来推計人口」によれば,超高齢社会と人口減少の早さは,ますます加速すると見込まれている。こうしたこれまでとは異質の社会を迎えようとする今,新しい社会では,どのように経済力の維持やその形成が求められるのか,それは現代社会の必須の課題である。

千葉科学大学が存在する銚子市においても,人口減少や人口流出傾向が深刻化し,その取り組みが地域における最優先課題となっている。こうした状況をどのように克服することで,地域活性化に繋げていったらよいか。

本稿では,地域に存在する中小零細企業が,経営成果を生み出す条件として,「コーポレートブランド構築」が必須と捉えている。そこで,その必然性とオン・ブランド実践の難しさ,さらに経営のあるべき姿を示し,事例研究に取り組んでいる。

2.コーポレートブランド構築の必然性

企業の競争力を決定づける要因が,有形資産から無形資産にシフトしていることは,内外の研究から明らかにされてきた。そうした研究成果によって,企業が保有する資産のうち無形資産こそが企業価値を決定づけるとの見方が定着してきた。無形資産の中でも代表的なものが,企業のブランド価値である。しかし,ブランド価値は評価が難しく財務諸表には認識されない。しかし,その価値評価を試みるものとして,2002年に経済産業省のブランド価値評価研究会よりブランド価値評価モデルが開発された(以下,「経済産業省モデル」)。これは大企業向けのモデルであり,当時は画期的なものとして関心が高まったが,大きな広がりを見せるには至らなかった。しかし,中小零細企業向けのブランド価値評価モデルを検討する際には,経済産業省モデル開発の際に出された様々な発想は応用できる部分が多い。

2.1 ブランド価値評価モデルとインプリケーション
ブランド価値評価モデルは,公表財務データのみにより作成する,いわゆる経済産業省モデルと公表財務データにマーケティング要素を加えた通称,日本経済新聞社モデルが代表的なモデルとされる。両者とも大企業向けのものであり,特に中小零細企業向けのブランド価値評価モデルは存在しない。ブランド価値評価モデルが企業経営にとって有用だとされるのは,「測定できるものはコントロールできる」という意味が大きい。

全企業のうち中小・小規模事業者の数が99%となっているわが国においては,中小企業向けのブランド価値評価モデル,またはブランド構築に繋がる業務改善シートなどが開発されることで,ブランドコントロールや業務改善に期待がもてるのである。

2.2 中小企業の業績低迷とブランドの役割
「TKC経営指標(BAST)」(TKC会員(税理士・会計士)の関与先企業の経営成績と財政状態を分析したもの)によれば,さまざまな業種があげられ黒字企業の割合が算出されている。それによれば,ほとんどの業種では赤字企業が多くみられ,黒字企業の割合は低い。その「赤字」の累積は倒産要因となるが,企業倒産の原因別動向をみれば,第1位は「販売不振」であり,2位以下の倒産原因を圧倒し全体の7割を超えている。その「販売不振」の状況を好転させるものとして,中小零細企業のブランド構築の必然性が存在するのである。なぜなら,ブランド構築を実現させることで,企業は長期間かつ安定的に収益が確保できるからである。

3.オン・ブランドの実践が試される中小零細企業

各企業が顧客に伝えるキャッチフレーズは,顧客との約束事と考えることができ(ブランドの約束),その多くは簡潔にまとめられている。各企業に存在する経営理念も「ブランドの約束」と捉えることができる。ブランドを構築する企業は,平素の企業活動の中でブランドの約束と実際のサービスとが一致していること(オン・ブランド)が最低限の取り組みとなる。しかし,企業が顧客から信頼を獲得するために必要な「オン・ブランド」は,現実には容易ではなく,それが実践されない現場(オフ・ブランド)も少なくない。
企業経営は,さまざまな経営資源が力強く組み合わされ展開する。経営環境が激変する時代には,それに対応するため,経営学,法律学,会計学、経済学,心理学,社会学など広い範囲による関係諸科学を総動員することが重要であり,まさに企業経営は総合格闘技といえる。つまり,企業が経営成果を実現させるためには,総合格闘をした上で,他社との関係において差別化を図ることができれば,競争優位も実現する。結果として経営成果(業績拡大)が大きく期待できるというものである。

4. ゼミナールよる地元の中小企業研究

ここで,銚子市の最重要観光資源の一つである「銚子電気鉄道株式会社(以下,「銚子電鉄」)のブランド構築について,公表データをもとに,銚子電鉄のコーポレートブランド構築の研究に取り組み考察を試みたい。

公表データによれば,銚子電鉄では,平成25年に経営改善計画が策定された。第1に現状の整理と目指すべき方向性,第2に鉄道事業の経営改善に向けた取り組みが打ち出されている。本研究では主として,経営改善計画に示された,①具体的施策の中の「愛される会社になるための取組み(社員の意識改革)」と②財務調査,業務調査等により明らかとなった現状及び問題点と改善策のそれぞれの一部についてが考察の対象となる。

5. 考察までの経過

銚子電鉄の公表データから,何が事実として理解できたか。またそれをもとに,具体的にコーポレートブランド構築をどのように進めたらよいか。以下の2つの視点を中心に八角ゼミナールで議論を進めている。

5.1 収益獲得のための発想力と学生の感性
銚子電鉄の収益部門には,鉄道業と副業による収益が存在する。経営改善計画の財務面の問題点の中に,収益の悪化や鉄道部門の赤字拡大という記述がある。八角ゼミナールでは,収益につながるシーズをより多く収集するため,学生の感性で議論が展開されている。

5.2 中小企業が覚醒するインナーブランディング
ブランディングには,アウターブランディングとインナーブランディングがある。前者は,顧客に対して行うことで知られている外向け(取引先や地域社会など)をさし.後者は,経営幹部や社員など組織内に向けたブランディングであり,近年,中小企業も関心を寄せている。

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