私は業界に先駆け、いち早く、借金などのマイナス財産の相続を指す「負債相続」で困窮する人(=「負債相続難民」)の救援に乗り出し、現在までに1500件以上の相談に対応してきました。
このコーナーでは、「負債相続」についての基礎知識や具体的な事例を紹介します。
いよいよ「リオデジャネイロオリンピック2016」が8月5日から開催されます。世界中から大勢の人がブラジルに集まり、4年に一度のスポーツの祭典が約1カ月にわたり行われます。
では、「相続」に関する制度は「世界」ではどうなっているのでしょうか。
第1回はオリンピック開催にちなんでその違いを探ります。
◆2大主義
相続の制度について、世界では2大主義というものがあって、大きく分けて2つの考え方があります。1つは日本と同様で、相続が発生すると財産も借金も原則全て相続人に下りるという制度です。「包括承継主義」といいます。
もう1つはアメリカやイギリスのように「管理清算主義」という考え方があります。具体的にいいますと、アメリカやイギリスでは相続が始まると、いったん人格代表者という財産管理人の立場になるかたが間に入って、まずプラスの財産から負債等の清算を行います。
そして、余った財産を相続人に引き継がせる制度です。そこでもし債務超過になって負債が残れば、そのときはその負債を引き継がなくてもよいというかたちで、しっかりと最初に清算を行うというのがアメリカやイギリスの制度になっています。ですから、原則的に相続人が負債を背負うという制度にはなっていないのです。アメリカ、イギリスに関しては、もともと個人主義の考えが強く、負債はそもそも一代限りだろうという発想があります。
◆日本にはない相続人を守る、制度設計
それでは、日本とドイツとフランスという3つの国を比較してみましょう。この3つは財産全てが相続人に引き継がれ、当然負債も引き継がれるのですが、日本とフランスとドイツでは制度が全く同じなのかというと状況が異なります。
例えば日本であれば、基本的に3カ月を過ぎてしまうと財産、借金を含めて自動的に相続人に相続されるというようになっています。しかし、フランスでは仮に3カ月を過ぎても、もし後日になって負債が発覚すれば、そのときは、その段階で相続放棄をするための救済措置が制度で設けられています。