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  1. 負債相続-最前線 椎葉基史
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第5回 「負債相続難民」が生まれる背景2

「負債相続」最前線!

司法書士法人ABC 司法書士・椎葉基史 著

遺産分割の現場、相続争いの現場でも専門家による被害

前回は専門家の知識不足による相続被害は深刻な問題であると指摘しました。その中でも「連帯保証」、これが今、大きな問題になっています。
例えば、相続税を計算する現場においては、まず、引き継いだ財産がいくらかという遺産の総額を出します。その中から基礎控除3千万、相続人1人当たり6百万という相続人控除を引く。さらには、引き継いだ借金があればその借金を差し引いてその残りに相続税が課税されるというようになっています。ただ、ここで問題なのは、連帯保証人という立場も法律上は相続人に引き継がれるということです。いわば隠れた借金なのです。
しかしながら、その立場については債務控除の対象にはならないため、相続税を計算するときには差し引けないということになります。ですから、相続税の計算をする上では、ここに関してはあまり注目されず見逃されることも多くあるのが現状です。したがって、相続人の皆さんもここが話題に出ることが少なく、特に問題がないと思って見過ごしているという現実があります。

遺産分割の現場、相続争いの現場でも専門家による被害が出ています。
例えば、相続人である兄弟3人(長女・長男・次男)で相続した財産を分ける場合。この相続では借金もありました。長女は「財産は何も受け取らない。関わりたくない」ということで、長男と次男に一切を譲るということになり、専門家が入って手続きを進めました。専門家は「遺産分割協議書を作ってそこにサインしましょう」ということで、手続き上は「遺産分割協議」ということで終わらせてしまう。「私は何も受取りません」とサインして紙一枚で終わるわけです。そしてこの長女は、これで相続から一切逃れられたと安心しているんですね。
しかし、この遺産分割協議上で何も受け取らないということは、あくまでもプラスの財産を受け取らないといっているだけであって、借金自体はしっかりと相続されてきます。これは、法律上、「相続分の放棄」といわれる行為で、相続放棄ではありません。ですから、本来なら長女は家庭裁判所で相続放棄の手続きをしっかりと取った上で、残った相続人の間で遺産分割協議をしなければならなかったのですね。しかし今、専門家が遺産整理に関わっていて、こういった形で手続きを進めているケースはほとんどないと思います。ほとんどが、「相続分の放棄」と「相続放棄」をはき違えていて、この事例のように借金が相続されてしまうという現状があります。

相続人からすると、専門家が関与しているのに、まさかこんなことが起きているとは気付かない。ですから、相続対策から負債相続支援が抜け落ちている現状をもっと問題視しなければならないというメッセージを私どもは発信し続けているのです。(次回に続く)

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