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  1. 産業法務の視点から 平川博
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第49回停電対策

産業法務の視点から

平川 博氏

はじめに

現代社会はオール電化と言って良い程、電気に依存しており、停電が起きると、市民生活も企業活動も、全面的に機能マヒに陥ります。現状では、電力供給が復旧するまで、じっと待っているよりほかに仕方がありません。大規模な自然災害が起きれば、停電は広域化・長期化する傾向があります。
抜本的な停電対策は、大別すると、恒久的な電力の安定供給と、脱電気依存の2通りが考えられます。

1.恒久的な電力の安定供給に向けて

(1)公社制

すべての電力会社を公社化して、市区町村単位、都道府県単位、広域ブロック単位、全国単位という4段階で電力供給網を構成して、いつどこで停電が起きても、先ず近隣や周辺の市区町村から、それで不足する場合は都道府県から、更に不足する場合は広域ブロックから、最終的には全国から電力の供給を受けられる多姿勢を整備します。

(2)事業用電力と家庭用電力の分離

①事業用電力
事業用電力の発電は、広域ブロック単位で複数のダムや火力発電所のような巨大設備で行い、高圧線で送電するようにします。停電対策として、どの事業所も少なくとも3つの送電ルートを確保できるようにします。

②家庭用電力
太陽光や風力、バイオマス、ゴミ焼却等の複数発電を組み合わせて、地方自治体が市町村と都道府県の2段階で各家庭に電力を供給するようにします。停電対策として、どの家庭も少なくとも4つの送電ルートを確保できるようにします。

(3)自家発電及び蓄電
資力がある事業者や家庭では自家発電及び蓄電を行い、他の事業者や家庭が停電に陥ったときは余剰電力を供給するようにします。
因みに、「停電時の自家発電を考えるサイト」のTOPページ(2018年9月11日更新)では、「小型の蓄電池付太陽光発電システムはとっても良いぞ!」という見出しの下に、以下のように記載されています。

従来の蓄電池付きの太陽光発電システムは住宅とセットで販売されていることが多く、別売りのものでも費用がかなり高かったため、普及が進んでいませんでした。
しかし、技術の進歩によりマンションのベランダにもおけるくらい小型化し、価格もグッと下がったこと、今回の震災を機に、太陽光という自然エネルギーが緊急時に役立つと考えられて、一気に需要が伸びているのです。
実際に小型の蓄電池付太陽光システムは以下のメリットがあります。
・太陽が出ていれば、いつでも発電が可能。発電された電力はバッテリーに蓄電。(電気を貯めておける!)
・照明や携帯電話の充電など、最低限の電力を簡単に作り出せる
・サイズが小さく、持ち運びが可能(野外でも使用できる)
・自然エネルギーを利用しているため、ガソリンなどの燃料は必要なし
・地球に優しい
このように太陽さえ出ていれば、マンションのベランダくらいの小さなスペースでも簡単に電気を起こすことがきるので、停電などの緊急時には最適の発電システムと言えます。

(http://www.paetecpark.com/)

2.脱電気

停電になっても困らないようにする究極の方法は、電気に頼らないことです。今から僅か150年前まで、人類は電気を使わずに暮らしていたのです。確かに我が国のような先進文明国に住んでいると、もはや電気に依存しない生活は考えられませんが、地球上(特にアフリカ)には電気設備の無い未開発地や発展途上国が現存しています。

(1)電気を使わない冷蔵庫
①電気を使わない「折りたたみ式」の冷蔵庫
AF TECH【PRESIDENT Online[2017.10.3掲載]]

世界に目を向けてみると、冷蔵庫どころかそもそも電気が通っておらず、生活家電を何も持たずに暮らしている人々がいる。
OECDが2010年に発表した調査結果によれば、アフリカ大陸で電気を使える状況にない人は約5億8000万人にのぼる。…(中略)…こうした状況に対応するべく、マサチューセッツ工科大学出身者によるスタートアップ「Evaptainers」では、電気を使わない冷蔵庫「EV-8」を開発し、途上国を中心に普及を目指している。
「Evaptainers」によれば、アフリカでは約45%の食物が消費者のもとに届く前に腐ってしまっているという。同社ではこの課題を解決するべく、電力がなくとも機能する簡易版冷蔵庫の開発に着手。途上国における家庭用ニーズや、配送時の問題への回答のひとつとして製品を開発した。
この冷蔵庫「EV-8」は、水さえあれば機能する。メカニズムは自分の体を想像するとわかりやすい。人間の体は熱いと汗をかき、それが蒸発する時に体温が下がる。「EV-8」は、この「放射冷却」と呼ばれる仕組みを利用している。

(https://president.jp/articles/-/23225)

②電気を使わず食料品を冷やす<冷蔵庫>節電になってエコでいいですね
【電力自由化ライフHP[2017年4月11日更新]】

物を腐らせないためにも、冷蔵庫は必須のものであることは言うまでもありません。しかしながら、電気を使わなければものを冷やすことが出来ないと思い込んでしまうことは間違っているといえます。日本では電気があるのが当たり前ですので、工夫は必要ありませんが、電気のない国で行われている冷蔵の方法はとても活気的なものです。電気を使わなくてもものを確実に冷やすことが出来るからなのです。…(中略)…

食べ物を保存するのに不可欠な冷蔵庫。ただ安定した電気の確保が見込めない所では役に立ちません。でも、電気を使わずにモノを冷やす方法があるそうです。
それが Zeer Pot。必要なのはテラコッタの鉢と水、そして砂だけ。この装置は、暑くて乾燥した環境なほど効率的に冷却ができるそうですよ。
via 電気を使わないで冷やす冷蔵庫。必要なものは鉢と砂と水 : ギズモード・ジャパン

ナイジェリアの「Zeer Pot」や、インドの「Mitti Cool」など、電気を一切使わず食料品の鮮度を数日間保つことができるという「非電化冷蔵庫」がアジア・アフリカ地域で人気を集めているそう。いったいどんな仕組みなんでしょう?
どちらも仕組みは単純で、『気化熱』でモノを冷やしています。素焼きの陶器のツボに水を入れて、風通しの良い日陰に置いておくと、ツボの表面の細かい穴から水がにじみ出てきます。
それが乾いて水蒸気になる(=気化)際に熱が奪われるので、ツボや中の水が冷えるというわけです。そのまま水の中に野菜を浮かべるだけでもいいですし、Zeer PotやMitti Coolみたいに大きな陶器の中に小さな陶器を入れる二重構造にして、陶器の間に砂をしきつめて水を入れておけば、小さな陶器の中のものが濡れずに冷えることになりますね
via 電気を使わない冷蔵庫の仕組みとは | R25

■電力やガスに頼らない暮らしかたを後押しする冷蔵庫
インドで生まれた自然粘土でできた冷蔵庫「Mitticool fridge
このミッチクールフリッジが画期的なのは、なんといっても電力がいらないということ。生みの親であり、自然粘土を加工する工場を営むManshuk Prajapatiさん(以下、マンシュクさん)によると、野菜なら一週間は新鮮な状態をキープ、さらに乳製品も保管しておくことができるそうです。
使い方
とても簡単です。なんと、冷蔵庫上部にあるタンクに水を注ぐだけ。タンクに注いだ水が冷蔵庫内に染みわたり、暑い日にはその水が蒸発し庫内の食品を冷やしてくれるのです。マンシュクさん曰く、室温よりも約8度低い温度を維持できるのだとか。
via 目標は電気を使わない自然粘土ハウス!電力やガスに頼らない暮らしかたを後押しする冷蔵庫「Mitticool fridge」 | greenz.jp

■電気を使わないコカ・コーラの‟バイオ”冷蔵庫
コカ・コーラとレオバレットコロンビアは共同で電力を使わなくても冷たい飲み物を保存できる‟バイオクーラープロジェクト”を行いました。
バイオクーラーの仕組み

このバイオクーラーの冷却の仕組みは2つあります。
1つめは、水が蒸発することによる冷却効果、
2つめは太陽光を鏡で反射させることで、冷却ガスを液体化させ冷却機能を循環させるという仕組みです
via 電気を使わないコカ・コーラの”バイオ”冷蔵庫 | マーケティングカフェ

植物を使って、温度の調整をしているので、とても環境にやさしいといえます。なぜならば、植物は地球温暖化の原因と考えられている二酸化炭素を吸収して光合成の働きによって酸素を作り出すことはできるからです。植物の働きを活用すれば、温度をさげ、二酸化炭素の濃度上昇を抑えることができるので、非常に効率のよい電気の節約が可能になってくろのです。また、実がなる植物を使って冷却をおこなっていけば、季節ごとに植物の味覚を味わうこともでき、とても快適な生活にもなるでしょう。
http://denryoku-jiyuka.net/articles/5Oqjy

(2)電気のいらない洗濯機

節約になる!?電気がいらないポータブルな洗濯機「Drumi」がすごい

【feely[2015/04/30掲示(2018/02/04更新)]】

Yiregoが開発した足踏み洗濯機「Drumi」。電気いらずで持ち運びができる優れた洗濯機です。…(中略)…
サイズは、奥行きと幅が約38cm、高さが約56センチと洗濯機にしては超コンパクト。
アウトドアにも持ち運べるレベルのサイズ感です。コンパクトな割に、小さい衣類であれば1回の洗濯で、5〜8枚程度を同時に洗うことができます。
■超エコな足踏み洗濯機「Drumi」(Yirego)
この洗濯機の一番の特長は“電気がいらない”こと。回転ポンプを足で踏んで洗濯機を回転させるので、電気が全く必要ないのです。
所要時間も10分程度。…(中略)…
「Drumi」の中に5ℓの水と洗剤をいれて、足で回転ポンプを踏めば洗濯することができます。…(中略)…
排水に関してですが、下部についているボタンをおせば一瞬で外に水を流せるのも便利です。さらに、水を抜いた状態で回転ポンプを踏よろしくお願いします

(https://feely.jp/19234/)

この洗濯機は、足踏みが必要なため、下肢の障害者や傷病人は使用することができない点で難がありますが、タライと洗濯板よりも、停電対策用品として優れているように思われます。

(3)非電化生活

せこ三平(本名・山村玲生)氏が執筆した「ちょっとだけ不便、でも快適~目からウロコの非電化生活~」(「非電化工房」訪問記)【RÉALISER(レアリゼ) [2010-11-22掲示]】と題する記事では、発明家の藤村靖之氏が那須高原に創った「非電化工房」の見学会に参加した体験談が、以下のように記載されています。

 

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■見学会スタート
母屋でのオリエンテーションのあと、藤村さんの息子さんの、けんすけさんのご案内で、見学会が始まりました。全部をご紹介することはできませんので、その中からいくつか選んでみました。
まず、母屋の前にあった、非電化冷蔵庫。これ、原理は、天気予報でおなじみ、「放射冷却」だそうです。
天板は真っ黒に塗られていて、昼間は太陽光の赤外線を吸収しますが、夜間になると、逆に赤外線を放出し、この時に庫内が冷却されるとのことです。夜間の冷却で、大量の水を保冷し、昼も庫内を冷やしているということです。…(中略)…
この非電化冷蔵庫、モンゴルで大活躍のようです。羊の肉は、夏期は腐りやすく、遊牧民は大切な食糧を、泣く泣く捨てていました。…(中略)…藤村さんは、地元の企業家に、発明の権利を無償で与え、羊1頭分のコストで、非電化冷蔵庫をつくり、羊2頭分で売るという事業が成立したそうです。…(中略)…
■夢の非電化生活
ここでは、非電化でここまでできるのか、という驚きのアイテムを3点ご紹介します。
まず、非電化バイオトイレ。
バイオトイレは、便を微生物の力で分解して肥料にしますが、冬の間は、微生物の分解力を維持するために、ヒーターを使って土壌を温める必要があるそうです。そのヒーターに、電気を使わざるを得なかったのが、エコロジー派には難点だったのですが、藤村さんたちは、「潜熱蓄熱材」という素材を使うことで、太陽熱を利用し、非電化で40度の熱を保つ方法を開発しました。実際のトイレを使用しての実験は、この冬が初めてということで、実用化は目前ということです。
つぎに、非電化風呂小屋。
太陽電池で水を汲み上げ、太陽熱温水器で熱します。晴天時は、真冬でも太陽熱のみで入浴できます。薪やゴミを燃料にすることも可能です。すべてホームセンターで手に入る材料を用い、五右衛門風呂は廃品を修繕して利用、お弟子さん3人の手で、3週間かけてつくったそうです。費用は、15万円。
そして、真打ち登場、今回の一押し、非電化籾殻ハウス。
この家は、実際に女性のお弟子さんが、一人で住んでいるそうで、見学会があるというのであわてて荷物を運び出したんだそうです。この、断熱材に籾殻をたっぷり使ったセルフビルド・ハウスには、藤村さんが心を使った、4つの特徴があります。
すてきであること。
頑丈であること。
健康であること。
そして、0エネルギー。

非電化籾殻ハウス。断熱性に優れているので、夏は温度の低い床下の空気を取り入れ、冬は、ダルマストーブでちょっとあたためるだけで、冷暖房はOKということでした。

確かに外見はすてきです。三角パネル組立方式の、頑丈でシンプルなつくりは、みんなの視線をくぎ付けにしました。屋根はススキで葺かれ、てっぺんには風車で回る非電化天窓換気扇。 中に入ってみると、床面積は10平方メートルですが、案外広く感じました。
床には、室外が乾燥しているときのみ、自然に開いて、室内の湿気を防止する、画期的な「非電化換気孔」。これは、スプリングとナイロンのひもを使ってつくられたもので、同じ機能のものをコンピューター管理の電気仕掛けでつくると、コストが高くかかる上に、メンテナンスがたいへんだし、寿命もかなり短くなってしまうとのことでした。

(http://www.realiser.org/report/lifestyle/article/index.php?id=284)

同じく「非電化工房」で取材してフリーランスの小島和子氏が執筆した「電気に頼らない愉しさを追求する非電化生活」【JFS ニュースレター No.109 (2011年9月号)】と題する記事では、「豊かさを問い直そう」という見出しの下に、以下のように記載されています。

藤村さんの提唱する「非電化」とは、単に「電気を使わない暮らし」にとどまりません。エネルギーやお金に頼らなくても、技術をうまく使いこなして愉しく豊かに生きていこう、という哲学が背景にあるのです。
藤村さんの夢は、非電化工房を愉しさや豊かさ、そして幸せの選択肢がたくさんあることを見せるテーマパークにすることです。特に住宅。素人が建ててもステキで頑丈、健康にもよく、エネルギー消費ゼロという非電化ハウスを住宅展示場のように見てもらい、そうした家づくりがタダ同然の建築費でできることを示せれば、持ち家を諦めている若い世代に勇気が生まれるだろうと考えています。
世界的にエネルギー危機への認識が高まり、日本でも3.11以降、多くの人が電力供給のあり方に疑問を抱くようになった今、非電化に取り組む意義がますます重要性を増していると言えるでしょう。

(https://www.japanfs.org/ja/news/archives/news_id031326.html)

3.結語

今年の夏は、台風や水害、地震により、長期・大規模停電が各地で起きました。電気の供給が止まると、オール電化住宅では、炊事を始め、洗濯、給湯、照明、室温調節、通信等、日常生活に必要な電化製品の機能が全く使えなくなり、非常事態に陥ります。停電対策用グッズとしてアウトドア用品を備えておくにしても、限界があります。いつどこで長期・大規模停電が起きても困らないような社会システムを、産官学が連携して構築することが望まれます。

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