あの記者会見はこう見えた!
石川 慶子氏
2018年8月20日夜8時、日本バスケットボール協会は、インドネシアでアジア大会に参加していた男子バスケ日本代表選手の4名が現地で代表の公式ウェアを着用したまま歓楽街で遊行し、買春行為をしたとして謝罪会見を開きました。この会見に込めた三屋裕子会長の思いがひしひしと伝わる内容でした。ダメージを最小限にする危機管理広報としてお手本になりますので解説します。
座り方に強いメッセージ
8月16日のカタール戦の後、男子バスケ4選手は公式ウェアを着たまま歓楽街に出かけて買春。これを受けて、日本バスケットボール協会は、4選手を代表取り消しの処分を行いました。20日夜、行為の説明と謝罪、処分の発表を目的とした記者会見を行いました。出席者は中央に三屋裕子会長と技術委員長。両脇に二人ずつ4選手。冒頭で三屋会長が「言い訳ができない。だからこそ選手自ら説明させることにした」と、会見の意図を説明しました。これを受け、最年長の選手が「軽率な行為であった」と謝罪し、一同揃って17秒間頭を下げました。
私が着目したのは座り方です。4選手を中央に並べて、会長と技術委員長が両脇に座る選択肢もあったと思いますが、中央に会長と技術委員長。両脇に2名ずつ選手。ここに協会が責任をもってメッセージを発信する決意を感じました。選手自ら説明をさせるという苦渋の選択をしたものの、中央に座るのは会長。自分が矢面に立つという意味を感じました。
会見のタイミング
今回は、処分が決まってからの会見というタイミングもよかったと思います。以前、バドミントンの選手2名が賭博行為をしたということでスポンサー企業が処分決定前に記者会見を行ったことがありますが、その際には違和感を持ちました。記者からも仮定の質問が増えてしまい、21歳の選手は「これからどうなるのかわからない」と不安気に回答していました。タイイングが中途半端すぎて精神的ダメージが多き過ぎではないか、と感じました。見ていても納得というより不安が募ってしまう会見でした。ある意味、企業を守るための会見のようにも見えたからでしょう。
今回は、協会が主体となり処分発表とのセットでもあり、メッセージは明解でした。三屋会長のコメントは、恥ずかしい、としながらも再生の道を用意したいという親の心情、厳しさと愛情が混じったおり、心がこもっていたのではないでしょうか。多くの女性達の共感を得たと思います。ダメージコントロールができた会見でした。
会見のタイミングは非常に重要です。それによって会見で伝えるメッセージの組み立てが変わってきてしまいます。どのような言葉を選ぶのか、どのように見えるのか、そしてそのメッセージは伝わったか。さまざまな会見を自分ならどうするだろうかと考えながら見ることがリスクマネジメントにつながる道だと思います。
参考
スポニチ
https://www.sponichi.co.jp/sports/news/2018/08/20/kiji/20180820s00011000346000c.html
The PAGE
https://www.youtube.com/watch?v=v6qZHkiej9k
石川慶子氏:
著者:石川慶子氏
有限会社シン 取締役社長 日本リスクマネジャー&コンサルタント協会 理事 公共コミュニケーション学会 理事 日本広報学会 理事 公式ページ:http://ishikawakeiko.net/ 詳しいプロフィールはこちら |