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  1. 普遍的リスク対策 乙守栄一
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第27回 現状打破と産みの苦しみ

普遍的リスク対策

ヒューマインド 乙守栄一 著

現状打破、というと思い通りにならない事象から理想の姿に向けて移ろうとする行為を指します。しかし、世の中そう簡単には問屋は卸さないと申しましょうか、色々なしがらみが付きまとってきます。

究極のリアリストは現状を見据え、石橋を叩いて叩いて叩きすぎるぐらい叩いた挙句、何も生みだせない結果となります。時流に乗り遅れ、気づいた時には慌てふためくという構図となってしまいます。一方で究極の理想主義者はどうか?あれこれ色々なアイディアが湧いてはそれを行動に起こそうとし、周りに応援者を募ります。しかしながら、理想に走り過ぎるがあまり、時代あるいはニーズが追い付いてこないという結果になり、陽の目を見ないままサービスが提供できずに終了することになります。

2017年から先に日本へ求められる要件は理想主義先行であることは間違いありません。これほどの変化の激しいグローバル社会にリアリストが先行していては、ますます後塵を配してしまうことは明らかです。

ビジネスにおいてもまずインフラを形作ってしまうものが勝ちとよく言われます。言い換えれば標準化、スタンダードを作り上げてしまい、世の中としてそれを使わざるを得ない状況になればある意味、その分野を抑えたことに等しくなるわけです。
理想とは目指すべき方向とでも言いましょうか、目的と言い換えても良いかもしれません。決してたどり着くことのない目指すべき方向性。その理想に向けて日々行なうべきことを達成させていき、目標という形でコマメに到達度(達成度)をチェックすることが現実的です。

簡単に書いていますが、ここに最大の難敵、妨害が付いてきます。妨害の種類は数多存在します。現状変化したくない人たちの最大限の抵抗、これが大多数を占める組織では何事も成すことができません。労多くして実り少なしです。

現状変化したくない人たちは蟻地獄にハマっていく獲物のようにもう抜け出せなくなってしまっています。茹で蛙状態になっているということに気付かずに平平凡々と日々何事もなく過ごす組織。自分さえよければよいという発想を持つ人が巣食っている組織に存在するのは過去のみで、未来の絵姿は存在しません。
そこを手っ取り早く治すのは経営者の意識改革以外に良薬・治療法は存在しません。いくら社員がボトムアップで訴えたところで出る杭が打たれる組織では何事も変化が起きないからです。

事業承継と叫ばれて久しいですが、事業そのものを後に託す人に移行することだけが手段としてハウツーが伝えられていますが、そもそもは変えるべき意識は変えることまで含めて承継しなければ、真の意味で次世代へのバトンタッチができません。

先代で変えられていない意識の部分があるのであればそこも併せて進取の気性に満ち溢れた組織風土に変化させる、ここのマインドがセットになることが必要です。100年を超える企業は地道ではありながらも永年の“想い”を大事にしてきています。それだけ顧客から愛されてきている企業が結果として生き残ってきています。

何が大事か?再三これまでお伝えしてきている、時代に臨機応変に対応できる経営方針のあり方です。本業として変えてはならないところは変えず、変えるべきところは変えるということです。本業とは何か?事業としてこれまで行なってきた柱となる事業です。
東京証券取引所でも本業で如何に稼いでいるか?投資家への投資指針の一つとして、ROIC(投下資本利益率)基準を基に評価・表彰する動きが出てきています。いくら経常利益が黒字とはいえ、本業を蔑ろにした利益では永続性が見えないからです。このあたりはバブル期に痛い目に合って十分理解されているはずですが、世の大半の企業は売上数値重視、利益偏重の意識に変わりはなく、そこが企業横断的なサプライチェーンの動きを鈍らせていることの大きな要因です。ある会社がやる気を出しても、その繋ぎとなる会社がやる気のない会社であればそこが律速段階(ボトルネック)になるからです。

変化に敏感に対応し、且つ軸のぶれない会社同士のコワーク、そして両社に明確な互恵関係があること、これらの連鎖がうまくいっている企業群はある意味、安泰です。
類は友を呼ぶ、これは良いようにも捉えられますし、良くないようにも捉えられます。決して個人だけを指すのではなく、法人にも十分に当てはまる文言です。

現状打破、産みの苦しみは人生に付き物です。茹で蛙のままでいるのか?自分の理想を目指し、行動を起こすためのありとあらゆる手段を考えそれを実行するのか?自分の気持ちに正直になった時、その答えは自ずとわかるはずです。

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