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  1. 普遍的リスク対策 乙守栄一
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第29回自信を持つということ

普遍的リスク対策

ヒューマインド 乙守栄一 著

自信を持つ、簡単なようでいて実践するには非常に難しいこの言葉。意味はそのまま、自分を信じる、ということです。3月21日(水)、NHKニュース9のあるコーナーの登場者、映画「ウィンストンチャーチル ヒトラーから世界を救った男」で主演ゲイリー・オールドマンの特殊メイクで第90回アカデミー賞のメイクアップ&ヘアスタイリング賞を受賞された“辻 一弘さん”へのインタビューが行われていました。その中の言葉に、ご自身が「他人の言うことを聞かない、従わない」というフレーズがありました。今の日本は暮らすには非常に楽である、危険を冒さずとも楽に暮らしていける風潮が若者の目指すべき夢を失くしてしまっていると。確かに、大学生の就職状況を見ていても、大企業志向に拍車が掛かっています。

大企業に勤めた経験・環境から離れてみて分かる実態もあります。大企業という巨大組織で働くということ、大人数だからこそできる目標(ベクトル)に向かう事業を成し遂げる醍醐味は確かにあります。しかしながら、その大人数の中でも若いうちは大抵の場合、一つの歯車にしかなり得ません。上司の言う通りに忠実に目の前のタスクをこなす、一定の範囲で成果を着実に上げられればまずは組織の中では可もなく不可もなく評価は得られることでしょう。

しかし、このことは上記“辻 一弘さん”の言われたこととは真逆になっているという事実にお気づきでしょうか?「他人の言うことを聞かない、従わない」という人生を歩んで、誰も成し遂げたことのない世界に身を置くこの孤独感との戦い、それを味わいながら、留まることなく続けてきたことがアカデミー賞受賞という世界も認める自分の立ち位置を築き上げて来られたのです。

私がこれまでずっと思い描いてきた“個と組織”の実態を、このインタビューによる語りの中から震撼とさせられました。

組織において“個”を強調しすぎると、組織には合わないということで異端児扱いとされてしまいます。一方で、組織の中で“個”を埋没させてしまうと、定年まで自分をどこかに置いてしまわないといけない人生になってしまいます。
自分のやりたいこと、組織の理念に共感してその会社に是が非でも自分を投影して全力を注ぎたい、これを実践できている人はほんの一握りです。大半は組織が魂を吸い取り、或いは社員が魂を吸い取られたと他責にする場合が殆どです。
他責にするということは自分を信じていない、と言うことです。他人の言うことを信じる、その結果、自分の想定通りの結果にならないため、他人・他事象の責任にしてしまうのです。

稼料(造語ではありますが)と給料の違い、お判りでしょうか?給料とは会社より賃金として給わるもの、という意味合いがあります。一方で、稼料は自分で稼いだお金、という自分に紐づく表現になります。能動的とでも言いましょうか。能動的とは自ら進んでということになります。
給料として賃金を給わるということは、良い悪いは別にしてその組織の理念なり行動指針・計画に準拠する責務を伴います。そこに苦言を呈する、上司や同僚の気に入らないことを愚痴としてこぼす、組織の経営者からすればそれはあり得ないことです。社内の風土が醸成されていないといえばそれまでですが、少なくとも組織の一員であるからには、そこに従うのが使命であることには違いありません。

その組織の一員であることの意味が見いだせないのであれば、さっさと次のポジションを見つけるために転職すればよいのです。ある人は転職が社内でいう異動の感覚と同じである、として次から次へと移っていました。それもキャリアとして自分の中に明確に描き出せていることから起きる行動です。自信があるのです。
組織の中で正論を振りかざすも実際の行動に移さない(移せない)のも、自信の無さの表れです。評論家タイプとでも申しましょうか、行動に移すための具体案も持ち合わせていない、意見は人の受け売りであるならばそれは何も自信でもなんでもありません。これまで経験をしたことのない、特にイノベーションを伴うものであるならば、なおさら他責は厳禁です。

これまでの教育は尖った逸材を育てることなく、横並びで同じような平均タイプを育てることに主眼が置かれてきました。出る杭は打たれる方式で、横を見ながら一斉に仲良く進みましょうという、大企業にとってはとても都合の良い人財育成スタイルでした。何も考えず、周りに流されながら楽に人生を歩んでいく、とは言いながらもどこか個々人に不安・不満が潜在的に隠れており、それがストレスや他責言動・行動といった形に変化し、醜い事件事故が起きている事実もあります。本当の意味で“人として頭を使うこと”を忘却してしまい、考えられない・判断できない、総じて自信がない人が世の中に溢れ出てしまった結果と言わざるを得ません。

シンギュラリティポイントとして2045年が間もなく迫ってまいります。人の知能と人工知能(AI)のレベルが置き換わるとき、日本人は自信を取り戻せているのでしょうか?自分がどうあるべきか?ということさえAIに委ねてしまうともう自信を持つ人は日本から消えてしまうことは否めません。一刻の猶予もありません、この記事を目にしていただいた皆様から他の方へお伝えいただく話題の一つとして、一人ひとり自信を持つこととは何なのか?今一度、振り返ってみてみませんか?

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