『ビジネスマンの為の地政学入門』
~地政学の視点でニュースを見る~
地政学の必要性
・なぜヨーロッパでは移民問題が起こっているのか?
・なぜ大国ロシアが小さなクリミア半島にこだわったのか?
・なぜ中国は海洋開発・進出を強行しようとするのか?
・なぜアメリカはこれまで「世界の警察官」であり、そして今その座を降りようとしてしているのか?
・なぜ中東での国情不安、内戦は起こっているのか?・・・
1877 露土戦争時の風刺画
2017年に入り日本の“周り”がキナ臭い。
特に北朝鮮による各種ミサイル発射のニュースはこの春、毎週のように報道されており、それに伴うトランプ新大統領のアメリカが空母やイージス艦を伴う艦隊を日本海に派遣したことで両国と日本・中国・ロシア・韓国などの周辺国を取り巻く断続的な緊張状態が今も続いている。
日本周辺の国際環境は年々厳しさを増して来ている、という認識はこのコラムをお読みいただいている読者においては言うまでもないだろう。(この認識がないとそもそも危機管理や安全保障の議論ができない)もちろんその主たる原因として近年の中国の政治的・経済的台頭が大きな変化として考えられるわけだが前述の北朝鮮の動向や韓国の政治的不安定さも含め、日本のいわゆる“隣国問題”が大きな“リスク“となってきているのが現状である。
そのような昨今の国際情勢の激変をとらえ、書店やネット媒体などで“地政学”という言葉が1年ほど前から徐々に注目を集めだしている。地政学とは、どんな学問なのか?結論から言うと読んで字のごとく「地理+政治」ということになるわけであるが日本ではこの学問はあまりメジャーではない。
もちろん自然科学ではなく社会科学ということになるのだが、日本でなかなか学ぶ機会がない。その最大の理由は地政学が戦争・軍事と密接に関係している、ということにあると思われる。ご存知の通り日本においては戦後、戦争・軍事研究は各団体や教育機関において禁止や自粛されてきたという歴史がある。
しかしながら、現状の日本を取り巻くこの“きな臭い”国際情勢において戦争や軍事をしっかりと見直し・再定義する必要があるのではないか、という一部日本国民の機運が昨今の地政学関連の書籍やネット配信の増加に見て取れる。逆を言えばまだまだ大手マスコミや学術界、教育界にはアレルギーがあるようではあるが・・
私は特に地政学者ではないので新しい地政学理論を提供するすべはないが、リスクコンサルタントとしての見地から、地政学とはどういった学問なのか?また地政学的な視点から昨今のニュースをどう読み解くべきか?ということを、“地政学を知ることは今後のビジネスマンとしての基礎的教養”である、という観点からなるべくわかりやすいコラムにできればと思っている。
地政学とは?
前述のとおり、地政学を端的に言うと「地理+政治」ということになる。もちろん、実際にはこんな単純な定義ではなく、学者や研究者によりその定義は様々に語られているのが地政学の現状である。世界的には地政学は学問上、国際政治学や国際関係論などに分類されることが多いといわれているがそもそも学問として成り立つのか?という指摘が多くあるのも事実のようだ。理由については追々述べることとするがざっくり言うと、政治的要素が入り込みすぎるために変数が大きすぎて体系化できないではないか、という議論があるためである。
いずれにしても、このコラムにおいては学問として成り立っているかどうかは問題ではなく、地政学的視点から世の中を見る、ニュースを見る、ビジネスを見る、という必要性があるのではないか、という観点でお読みいただければ幸いである。以下、地政学について、いくつかの政治家・学者、評論家の定義や考え方(ほんの一部ですが・・)を紹介してみたいと思う。
というか、そもそも地政学者はどれほどいるのか?が謎ではあるが。
*一国の地理を理解すれば、その国の外交政策が理解できる/ナポレオン・ボナパルト
*ひとくちに言って政治学の一種であることは確かです。常に地球を相手にする政治学だから地政学/政治学者 曽村保信氏
*それは「地理×軍事学」、地図を戦略的にみる見方/国際政治学者藤井厳喜氏
*国家間の対立を地理的な条件で説明するのが地政学/世界史講師 茂木誠氏
*世界中のエリートといわれる人たち、国家を率いる人たちの必須教養です。/憲政史家 倉山満氏
*地政学はリアリズム/詠み人知らず
などなど、各論人によって様々だ。表現や定義はいろいろだが共通するのはリアリズム(現実主義)ということだろうか。次回は、地政学とは?を掘り下げるとともに地政学的見方とは?について考えてみたいと思っている。
今月の地政学用語
① 「ランド・パワー」・・大陸国家(大国)/主にロシア、中国、フランス、ドイツなど
「シー・パワー」・・海洋国家(大国)/主に日本、アメリカ、イギリスなど