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  1. ビジネスマン/地政学入門 相馬清隆
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第2回目地政学的な見方とは?

『ビジネスマンの為の地政学入門』
~地政学の視点でニュースを見る~

少し前の2014年、ロシア軍がウクライナへ侵攻しクリミア半島を制圧した。その後いわゆる“民主選挙”によりロシアに編入されるという事件があった。冷戦後の世界でなぜ軍事侵攻により領土の確保にロシアが走ったのか?この問題を考えるとき、まさにロシアの地政学で見なければ理解できないだろう。

クリミア半島は歴史的にも大国、特にロシアとオスマントルコ帝国、イギリス、フランスなどに幾度となく戦場にされてきた歴史がある。それだけこの地は政治的・経済的・軍事的に重要な地域だと言えるわけだ。特にロシアにとってはこの地を抑えることは地政学的に首都モスクワの防衛や黒海艦隊を維持するために決して譲れない地域でもある。特にウクライナのNATO入りは絶対に避けたい問題でもある。西側諸国から見ればプーチン大統領による一方的な軍事侵攻と見えるわけだがロシアにはロシアの地政学上の戦略があるわけである。

さて、前回、地政学を一言でいうと「地理+政治」であると言ったわけだが、別の意味で言うと戦略論であるともいえる。地政学は地理的条件を加味した国家存続のための軍事学でもあり戦略はもともと軍事用語である。その意味において「地政学=軍事学=戦略論」(もちろん≒であるが)と言えるわけである。

現在、一般的に、“戦略”という言葉は広くビジネス上でも使われている。軍事用語としては「戦いに勝つために兵力を総合的・効果的に運用する方策」である。ビジネス用語としての戦略は様々に解釈されているが「組織などが運営していくための将来を見通した方策や目標を達成するためのシナリオ」と解釈される。ちなみに“戦術”と言えば、軍事用語としては、「戦いに勝つための兵士の動かし方などの実行上の方策」であり、ビジネス用語としては「目標を達成するための具体的な手段・実践計画」といったところ。

その意味においてクリミア半島はロシアにとって西側諸国と対峙するための戦略的地域であり、戦略拠点なわけである。

図は、英国の国際政治学者、コリン・グレイ氏の戦略の7階層図であるが地政学はこの図で言うところの大戦略にあたる。これに似た図や概念はビジネスの世界でもよく使われるものであるがその意味において地政学を深く理解することはビジネスにおける戦略的視点を身に着けることでもあると言えるわけである。

こと、ビジネスマンやリスクマネジャーの世界においても今後の日本の社会情勢が複雑化、広域化、グローバル化することを前提とすれば、戦略的思考は必要不可欠であろう。

具体的必要な能力として、高いリスクリテラシー/冷静な分析力/先見性/サバイバル能力等があげられる。さらに地政学は“動かない地図“を基本として国際情勢を見ていく。この点もビジネスに置き換えても思考の”軸“をどこに置くかという意味において地政学的視点が役に立つ。

戦略を立てる際は軍事においてはもちろんのことビジネス戦略においても政治・経済・文化・歴史・思想・宗教など多くの知識を大局的で複合的・長期的・俯瞰的に見る目が必要である。

更に言うなら地政学はサバイバルの学問でもある。“生き残り”戦略であり、そこには感情の入る余地はない。世界の政治家や名だたる経営者はまさにこう言った視点で世界を見ているのである。

この視点は現在の日本人が最も苦手とする思考であると言われている考え方でもある。今後もう一度、国として“鎖国”するなら、個人として引きこもって外界との接触を一切取らないのならこの視点はある意味必要ないかもしれない、そうでないのならやはり身に着けるべき視点だろう。生き残るために。

今月の地政学用語
③【ハートランド】・・ユーラシア中心部・中核地域(ロシア中心部)
④【リムランド】・・ユーラシア沿岸国、西ヨーロッパから中東、インドシナ半島までの東南アジア、中国大陸、ユーラシア大陸東部に至るユーラシアの沿岸地帯を指す

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