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読んで学ぶリスクマネジメント

リスクマネジメント関連書籍の書評・内容紹介

 
書  名 平成関東大震災
副書名 いつか来るとは知っていたが今日来るとは思わなかった
内容紹介 ある日の夕方突然発生した東京湾北部を震源とするマグニチュード7.3の大地震。一人のサラリーマンが、都庁から墨田区の自宅に帰るまでの体験を通じ、首都直下大地震の際に生起すると考えられる状況と東京都等の対応、防災上の現状と問題点について解説する。読むうちに基礎的な防災知識が身につくシミュレーション小説である。
著編者等 福井 晴敏 (フクイ ハルトシ)
発行所 講談社

書  名 目からウロコの防災新常識
副書名 あなたと家族の命を守る
内容紹介 防災アドバイザーにして防災システム研究所所長である山村氏。現場第一主義を掲げる氏が、長年の防災・危機管理に関する経験と最新の情報、災害の分析を通じて得た知見を基に、火災、新型インフルエンザ、水害・土砂災害、竜巻・落雷、地震、津波などに遭遇した場合の対応行動について解説する。正に「目からウロコ」である。
著編者等 山村 武彦(ヤマムラ タケヒコ)
発行所 ぎょうせい

書  名 災害危機管理論入門
副書名 防災危機管理担当者のための基礎講座
内容紹介 シリーズ「災害と社会」の3巻目。災害危機管理の理論から地震、豪雨、火山の災害の特徴と対応の事例、自治体の災害対策本部の対応や復興計画作成のあり方、企業の危機管理戦略、災害危機管理のための訓練・演習体系と手法などについて基礎的に解説。自治体や企業などの首長や管理者、そして危機管理担当者必読の書である。
著編者等 吉井博明(ヨシイ ヒロアキ)、田中 淳(タナカ アツシ)編
発行所 弘文堂
㈱総合防災ソリューション 危機管理業務部長 山本忠雄
 

書  名 『BCPができたら次の一手がこれだ! あなたが主役のやさしいBCM 』
副書名  
内容紹介 「危機対応力をアップする演習・訓練の入門書 !」
 大きな災害が起こったとき、事業への影響を最小限にとどめて早期復旧をはかるための計画、いわゆるBCPを作る企業が増えています。しかし、せっかくBCPを作っても、これをどう防災や組織の災害対応力の向上に活かし、役立てていけばよいか分からないと嘆く企業も少なくありません。

 本書では、BCPを最も効果的に運用または活用する鍵は、形式的な手続き論や文書管理論ではなく、「演習・訓練の実践」にあるとの考えに立ち、BCPの良し悪しの検証や、社員の役割・責任の意識付け、実地体験による行動力の向上など、さまざまな目的や用途に役立つ演習・訓練のシナリオ作成、実施方法などのノウハウを分かりやすく紹介しています。

 本書を読めば、これまで義務的、形式的に参加していた無味乾燥な演習・訓練のイメージが一変することでしょう。
著編者等 昆 正和
発行所 日刊工業新聞社
 
 
 
 
書  名 改定新版 「実践 危機管理読本」
副書名 リスクマネジメントの基本からマスコミ対応まで
内容紹介 リスクマネジメントや危機管理は、すでに多くの著書・論文も発表されているが、基本的な考え方と実践的な対策、広報対応までを一冊に分かりやすくまとめたものが少なく、それを意図した実践書である。
著編者等 藤江俊彦
発行所 (株)日本コンサルタントグループ
 

 
書  名 もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら
内容紹介 本書の著者はアイドルグループAKB48のプロデュースにも携わった経歴をもつ放送作家で、登場人物もAKB48のメンバーがモデルになっているそうです。一見すると最近流行のライトノベルのようですが、中身は経営学の入門書です。ドラッカーの『マネジメント』の導入書といったほうがいいかもしれません。高校野球の女子マネージャー、みなみちゃんがチームを甲子園に出場させるという目的を達成するために、問題にぶつかる度にドラッカーの『マネジメント』を読み返し、その意味するところを一所懸命考えて実践していくという設定で、随所に『マネジメント』の一節が引用されています。ドラッカーの理論は企業経営のみならず、もっと身近な日々の生活においても実践しうるものであるということを気づかせてくれる一冊です。
著編者等 岩崎夏海
発行所 ダイヤモンド社
 

 
書  名 日本でいちばん大切にしたい会社
内容紹介 著者は、6000社を超える企業を調査・研究したうえで、真に正しい経営を実践している会社は、どんな環境においても着実に成長を続けているといいます。そして、経営者が心すべき「五人に対する使命と責任」を尽している会社こそが、本当にいい会社だといいます。「日本でいちばん大切にしたい会社」として本書で紹介されている8つの会社は、社員の7割が障害者であるチョークメーカー、社員の幸せのために戦わない経営を貫いて48年間増収増益を続けた寒天メーカー、世界中からお客様が集まる日本一辺鄙な場所にある義肢装具メーカーなど、いずれも自分たちにしかできない仕事をしているオンリーワン企業ばかりです。社員らの幸せをいちばんに考えて会社経営に取り組む経営者と、そういう経営者が運営する会社に勤務することを誇りに思い、そこで働くことを生きがいとする社員らの姿には、感動を覚えずにはいられません。
著編者等 坂本光司
発行所 あさ出版

書  名 日本でいちばん大切にしたい会社2
内容紹介 「日本でいちばん大切にしたい会社」の第2弾です。本書では、患者さんがまた入院したくなる絶対ノーと言わない病院、日本でいちばん休みが多い不況知らずの中小メーカー、社員は先着順で採用、給与は「年齢」序列という世界一の歯車メーカー、新入社員研修で目の不自由な方と四国巡礼の旅をすることで本当のやさしさを学んでもらうという自動車販売会社など、第1弾につづく大切にしたい8つの会社が紹介されています。本書を読んで思うことは、真に正しい経営をしている会社には、必ず真に正しい経営理念があるということです。
著編者等 坂本光司
発行所 あさ出版
 

 
書  名 みるみる身につく決算書完全攻略ノート
内容紹介 「営業の仕事は商品やサービスを販売することで、代金回収は管理部の仕事。」そんな風に誤解されている方は、新人営業マンに限らず意外と多いのではないでしょうか。お金を払う気のない相手に物やサービスを提供するだけなら誰でもできます。きちんと代金回収までして初めて、営業としての職務を果たしたといえるのではないでしょうか。
本書は取引先から債権回収を確実に行うために営業マンが必要とするノウハウについて書かれたリスクマネジメントの本です。取引先の決算書をきちんと読み取ることができれば、不良債権発生リスクを低減することができますし、ときには積極的な販売攻勢に打ってでることも可能になります。
債権回収のリスクマネジメントに興味のある方にお勧めの一冊です。
著編者等 井口秀昭
発行所 角川SSC
 

 
書  名 民法でみる知的財産法
内容紹介 本書は、タイトルにあるように知的財産法を民法の視点から見てみたものです。
そこで、本書は知的財産法の基本となる民法の原理原則に触れた後に、その原理原則から、理論上、知的財産法をどのように理解すべきかを説明するという構成をとっています。
また、理論的な説明にとどまらず、実務上重要度の高いと思われるライセンス契約についても説明がなされており、実務上も有用な一冊といえます。本書を読み、民法の原理原則から知的財産法を理解することによって、知的財産権に関する様々な問題についてのリスク分析やリスクヘッジが可能となるように思われます。
著編者等 金井高志
発行所 日本評論社
 

 
書  名 「苦情」対応力「お客の声は宝の山」
内容紹介 西武百貨店のお客様相談室長やNPO法人歯科医療情報推進機構事務局長を務め、苦情・クレームを知り尽くした著者がこれまでに経験した1600件の経験に基づく苦情・クレームへの対処法をまとめた本です。
小売業やサービス業の苦情・クレームだけでなく、学校や医療業界での苦情・クレーム、性同一性障害当事者からの苦情など、様々な苦情・クレームに対する実体験に基づいた対応策が満載です。
著編者等 関根眞一
発行所 講談社
 

 
書  名 どこまでやったらクビになるか
副書名 サラリーマンのための労働法入門
内容紹介 裁判で争点になった実例と架空のケースをおりまぜながら、日常的に起こる職場の問題に適用される法的なルールが分かり易く解説されていて、法律に関する知識がない方にも読み易い内容となっています。
我が身を守る法律を知っておくことは、とても大切なことです。職場のトラブルに適用される法律に興味のある方にお勧めの一冊です。
著編者等 大内伸哉
発行所 新潮新書
 

 
書  名 少年リンチ殺人
内容紹介 著者は、2件の少年リンチ殺人について、事件の発生の経緯(複合的な環境要員)、具体的に行われた暴力(発言)、その後の少年たちへの処罰、親・学校・地域のつながりなどを徹底的な取材に基づき克明に記述しています。  
その描写はあまりにも「克明」であるが故に、時に陰鬱な気持ちや、あまりにも些細なすれ違いから発生した事件によって、被害者がその時受けた恐怖や被害者家族の無念を思い、やり場のない気持になります。
しかし読後には本書と同年代の子供を持つ親や、学校の先生には是非読んで頂き、学校や「溜まり場」で交わす些細なやりとりの積み重ねや連鎖が最悪の場合どんな悲惨な事に繋がるのかという事に対し、イマジネーションを働かす事が出来るようになって欲しいという気持ちになりました。
本書はリスクマネジメントの専門書ではありませんが、「学校」「地域」「家族」のリスクマネジメントに役立つ一冊であると思います。
著編者等 日垣隆
発行所 新潮文庫

書  名 トラブルにならない 社員の正しい辞めさせ方給料の下げ方
内容紹介 本書はかなりショッキングなタイトルが目を引きますが、リーマンショック以後の長引く世界的不況の中、会社を存続させるために、 社員の給与を下げたり、あるいは解雇せざるを得ないと悩まれている経営者の方は少なくないかと思われます。
本書は、会社を守るために信念をもって行動することの大切さと、トラブル発生のリスクを抑えた問題解決の方法を教えてくれるお勧めの一冊です。
著編者等 井寄奈美
発行所 日本実業出版社
 

 
書  名 日本でいちばん働きがいのある会社
内容紹介 世界44カ国で「働きがいのある会社」ランキングを展開するGreat Place to Work(R) Instituteの日本代表の著者が、今春の『日経ビジネス』でも掲載された、我が国の2010年度の“働きがいのある会社”となったベストカンパニーの取り組みを詳述している。
年間の退職率が30%となる事態に直面するなかで、役員が腹を割った合宿で一枚岩になり、「人」とそのつながりの大切さを再認識したサイバーエージェント。3社合併時に「楽しくない」職場だった、どん底の状態から社員自らが“会社を変えたい”と立ち上がった東京海上日動システムズ。
各社の試行錯誤の連続と個性溢れる人事制度など、現場の息づかいを肌で感じることができる描写にいつの間にか惹き込まれてしまう。
「企業は人なり」の真意を深耕できる一冊。
著編者等 和田彰
発行所 中経出版
 

 
書  名 リスク・リテラシーが身につく統計的思考法
内容紹介 現代人が『自分の身に何かが起こる可能性=リスク』(本文訳)を見極める為のヒントを、医療を中心とした極めて身近な事例や、哲学の大家やナポレオンなど歴史上の人物のエピソードや名言(?)を交え分かり易く説き起こす、統計学の入門書です。
私たちは日常生活の中で100%正しい判断をする事は出来ません。必ず判断を誤る事があるかと思います。そのうちのいくつかの背景には誤解を導く巧妙な仕組みや、それを生む文化的・歴史的背景、コミュニケーションリスクが潜んでいます。
「一回限り起こる物」「条件付の物」「相対的な物」「絶対的な物」評価・比較の仕方によって、確立(数字)はいかようにも捉えられます。それを知れば、的外れな考え方から脱出し、リスクを正しく捉え判断する明晰な頭脳を手に入れる事が出来ます。
この本にはそのヒントが数多く、多彩に盛り込まれています。
また、読み物としても飽きさせない造りになっており、リスクを相手に分かり易く説明する大切さについても多くを学べる目からウロコの一冊です。
著編者等 ゲルト・ギレンツァー著 吉田 利子(訳)
発行所 早川書房
 

 
書  名 雇用社会の25の疑問 労働法再入門[第2版]
内容紹介 本書では、雇用社会において「常識」とされがちな事項を、学者である筆者が「懐疑」の精神で考え直し、労働法の規定や判例などを引用しながら平易な文章で解説しているので、とても楽しく労働法にアプローチすることができます。
全体が「第1部 日頃の疑問を解消しよう」、「第2部 基本的なことについて深く考えてみよう」、「第3部 働くことについて真剣に考えてみよう」の3部で構成されていて、第1部では、「女子アナは裏方業務への異動命令に従わなければならないのか」という問いかけからジェネラリストとスペシャリストの相違について説明し、また、「会社は美人だけ採用してはダメなのであろうか」という問いから、採用に自由について解説しています。
また、第2部では、「正社員とパートとの賃金格差はあってはならないものか」、「定年制は年齢による差別といえるのであろうか」などの問題について、筆者の考察に基づく解説がされています。
さらに、第3部では、「キャリア権とはいかなる権利か」、「派遣で働くことは悪いことなのか」、「ニートは何が問題なのか」などのテーマが取り上げられていて、これから就職活動をする学生の方にとっても、興味深く、かつ示唆に富んだ内容となっています。
現在の日本の雇用社会について少しでも疑問に思うことがある方、労働法を楽しく学んでみたい方にはお勧めの一冊です。

文責:フランテック法律事務所 社会保険労務士 毎熊典子
著編者等 大内伸哉
発行所 弘文堂
 

 
書  名 危急存亡時のリーダーシップ 「生死の境」にある組織をどう導くか
内容紹介 2010年8月に起こったチリ鉱山落盤事故での救出劇は、危機管理・リスクマネジメントにかかわる成功例として、皆様の記憶にもまだ新しいのではないかと思う。本書は、まさにそうした生死にかかわる緊急時(限界状況、生死の境にある状況)におけるリーダーシップのあり方について、様々な実例を元にまとめられたものである。

著者は米国陸軍士官学校(ウェスト・ポイント)の行動科学リーダーシップ学部教授であり、様々なインタビューを通じて、生死にかかわる多様な場面でのリーダーシップを分析した。インタビューの対象は、FBIのSWATチームのチーフ、イラクでの米軍機甲部隊指揮官、山岳登山ガイド、ウェスト・ポイントでの全米パラシュート・チャンピオン・チーム等々、極めて多岐に亘っている。

チリ鉱山落盤事故では33人全員を無事帰還させたリーダーの指導力が賞賛された。そこではリーダーの示した、多数決の採用(一人一票制)や明確な指示、冷静・正確な情報分析など様々な要素が指摘されている。本書の中でも、危急時に組織を結束させ、リーダーシップが上手く発揮された背景の例に、コミットメント、エンパワーメント、責任、コミュニケーションを挙げている箇所がある。危機に挑む企業、危急に瀕する組織にとって必要なことや緊急行動パターンなど、ビジネス組織への応用・示唆にも富む内容となっている。例えば、本書の中でも示されているFEMA(連邦緊急管理機関)元長官のハリケーン・カトリーナ時の部下に対する失言メールは、リーダーがリスクを部下と共有できず、危急型リーダーの対極の姿として印象的である。(部下が非常事態及び具体的な緊急要請を訴えているのに対し、「最新情報をありがとう。何か特にして欲しいことはありますか。」とメールで応えるだけの対応を行った。)

もちろん、優れたリーダーシップが発揮されるには、優秀なリーダーの存在だけでは不充分で、優れたフォロワーの存在が必須である。チリ鉱山落盤事故でも、救出された一人が語った「すべてのことを多数決で決めた。一人のリーダーがいたのではなくて、33人みんながリーダーだったと思う。」という言葉にも、実は危急時のリーダーシップの一面が表出していると思われる。 
  
一方、どの場面でも共通するのはコミュニケーションの重要性であり、危機管理広報に携わる方々にも参考になる1冊だと思う。

千葉科学大学 危機管理学部 木村栄宏

著編者等 ト-マス・コールディツ
発行所 生産性出版
 

 
書  名 「事務ミス」をナメるな!
内容紹介 この本は、ヒューマンエラーの研究者である著者が「事務ミス」を分析しなおし、ミスに強い組織を作るための具体的な方策を紹介した書籍である。ヒューマンエラーの類書は多いが、具体的な解決策にここまで踏み込んで書かれているものはそう多くない。本書の前半部では、「ミス」としてどのようなものがあるか、さまざまな面白い事例を挙げながら紹介されている。後半部では、具体的な「ミス」をなくすための方法論が、身近なものから組織論まで幅広い内容で非常に詳細に述べられている。

本のタイトルは「事務ミス」となっているが、実際は単なる事務ミスのみの内容ではなく、業務プロセスに関わる問題を取り扱っているといってよい。仕事からミスを取り除くテクニックや、そのための体制作りの方法論が本書のテーマである。

本書で挙げられている様々なミス防止策は多岐に渡るため、読んで重要だと思ってもなかなか変更できないような事柄もあるが、普段と違った観点から自分たちの業務プロセスを見直してみた時に、当然と考えていた手順の重要性や、ミスを招きやすい非効率な手順などに改めて気づくことができると思う。全体的に、説明が豊富な具体例とともに述べられていて非常に読みやすく、ヒューマンエラーの問題やミス予防策の考え方について、事務ミスという非常に身近なトピックを通じて理解することができる良書である。

千葉科学大学 危機管理学部 粕川正光

著編者等 中田亨
発行所 光文社新書
書  名 民法でみる法律学習法: 知識を整理するためのロジカルシンキング
内容紹介

ロジカルシンキングは、ビジネスパーソンであれば当たり前のように身についているものです。法律には「なんだか難しそうで分からない」というイメージがつきまといますが、ビジネスパーソンが本書を読めばそのイメージは一変するはずです。本書は、法律を勉強したいと考えているが、そのイメージから二の足をふんでしまっているビジネスパーソンにお勧めです。また、本書では、ロジカルシンキングの概要についても分かりやすく触れられていますので、「ロジカルシンキングはこれから」というビジネスパーソンには、ロジカルシンキングと法律の勉強方法を一緒に学べてしまう一石二鳥の構成となっています。

 
  著者等 金井 高志
  発行所 日本評論社
書名 「3.11東日本大震災に学ぶ 図解 統合リスクマネジメントの実践」

内容紹介

3.11東日本大震災発生と原発事故以降、幾度と無くあちこちで繰り返された言葉「想定外」、その言葉に憤りを感じた方々の数は無数にのぼるだろう。「想定外」と言う言葉は、決して免罪符であってはならない。そうした中、「想定外」や「未曾有」という言葉自体が飛び交うこと自体が、リスクマネジメント意識がないことを表わす証左であるという強い意識をベースに書かれているのが本書である。
本書は、有名な多摩大学大学院教授(元三菱商事役員でシャーロック・ホームズの研究でも高名)の河村幹夫氏による、大学院での「統合リスクマネジメント論」の講義素材を、一般向けに大変わかりやすく編集されたものである。全99ページとコンパクトで読みやすく、  かつ全ページオールカラーである(但し、題名に「図解」とあるほどには図表は多くない)。
東日本大震災発生後、早ければ1ヶ月経つか経たないうちに、経済学者たちは次々に  復興に関する書物を上梓された(例:岩田規久男「経済復興」筑摩書房、竹森俊平「日本経済復活まで」、伊藤滋ほか「東日本大震災復興への提言」東京大学出版会、等々)。一方、日本経済新聞「今を読み解く」(2011年9月4日)の中で、“震災復興に必要で生かすべきは経営学にこそ求められるかもしれないのに、あまり出版されていないが、そうした中で経営学者による数少ない書籍のひとつがこの本である”といったような文脈で紹介されていたのが本書であり、早速入手した。
今般の大震災から得る教訓や示唆も含めて述べられているが、内容構成としては、はじめに:今問われるリスクマンジメント力、第Ⅰ章;リスクとは何か、第Ⅱ章:統合リスクマネジメントの実践、第Ⅲ章:統合リスクマネジメントの課題-CRO(最高リスクマネジメント戦略責任者)の創出に向けて、となっている。ナイトの名著「リスク、不確実性、および利潤」(1921年)以降のリスク概念や、企業経営に想定外は無いこと、1697年のブラックスワンの出現、攻めのCOOと守りのCROが両輪であること、BCPの備え(一家のBCPを作っておく必要性も)、危機管理に最も重要なトップのリーダーシップ、青(前進リスク)・黄(注意リスク)・赤(停止のリスク)のアンケート実施、等々、既存のリスクマネジメントに関する知識の再確認と、企業のみならず自分自身や家庭のリスクマネジメントはどうか、といった観点を持って読むと良いと思われる。また、CROへの意識付けも重要視されている内容なので、CROの方々も「初心にかえるために」という読み方も可能であろう。
以上

  著者等 河村 幹夫
  発行所 多摩大学統合リスクマネジメント研究所
書名 リスクの社会心理学 --人間の理解と信頼の構築に向けて
著者等 中谷内 一也
発行所 有斐閣
内容紹介 東日本大震災以降、日本におけるリスクというものに関するイメージは一変したといえよう。震災以降、人間がリスクとどのように向き合ってゆくかの問題は、リスクマネジメントに携わるもののみならず、一般市民にとっても重要な関心事となっている。自然災害や科学技術などのリスクに対処してゆくためには、人間を理解することが必要であり、心理学の観点からリスクの問題を考える重要性はきわめて高いといえる。本書は、リスクに関する社会心理学的なトピックを取り扱ったものであり、リスク情報を利用してリスクに対応する上で、幅広い分野において有効な情報を得ることができる内容となっている。本書は大きく二部構成となっており、第一部「リスク認知」では、個人のリスクに関する反応やそれに関する心理学的な要因に関する解説が行われ、第二部「リスクと社会」では「リスク情報の社会的伝播」「マスメディアの問題」「リスクコミュニケーション」など、リスクに関する社会的な反応や取り組みについて取り上げられている。それぞれの章が、非常にコンパクトにかつ読みやすい形でまとめられており、リスクに関する理解を深める上で役に立つであろう。関心のある章をご一読いただき、それから他の章の内容に読書を広げていただければよいかと思う。 本書の特徴の1つは、本書が東日本大震災の後に企画・執筆されたものであり、ほとんどの章において東日本大震災が取り上げられているという点にある。震災に関する自らの経験を踏まえることで内容についてより深く理解することができると思われる。身の回りのリスク事象やリスク情報の活用についてどのように向き合うべきか考えてみたい方はぜひご一読いただきたい。
書名 リスクにあなたは騙される「恐怖」を操る論理
著者等 ダン・ガードナー
発行所 早川書房
内容紹介  1万メートル上空を飛ぶ飛行機から飛び降りたときのリスクはどのくらいか。金融工学ではこの場合のリスクはゼロである(確実に死亡するので、リスク=不確実性は無いと考える)。では、飛行機自体のリスクはどう考えるか。9.11テロの後、人々はテロによるハイジャックでの死亡を恐れ、運行再開後、 ほとんどの航空便はがら空きとなった。飛行機に乗るのを控え、例えば車へ乗り換える人が多かったからだ。
 9.11後、世界の航空会社の収益が悪化したことは、記憶に新しいだろう。 しかし、飛行機は車より危険なのだろうか。この本では、まず、テロ発生後の1年間で飛行機から車へ交通手段を切り替えた直接の結果として車の衝突で死亡した米国人は1595人、これは9.11の不運なフライトの総搭乗員数の6倍である、といった研究の紹介から始まっている。
 我々が「頭」ではなく「感情」(筆者は「腹」と言う言い方をしている)でリスクを理解することで、逆に恐怖から実際の危険に陥ってしまうひとつの例である。 本書は、我々がリスクを判断する際に、いかに心理的なバイアスに陥っているか、あるいはメディアによっていかに恐怖を操られてしまうのかなど、多様な実例により説得力を持って訴えかけてくる。 リスクに対する認識は、対象に関する知識が既にあるか無いかでも、感覚は大きく変わる。例えば愛煙家にとってはタバコのリスクは「十分知っているんだけど恐くない」かもしれないが、地震や火災などの自然災害、あるいは犯罪被害など、特に実際に経験したことがない方にとっては、「よくわからないし、とても恐ろしい」だろう。リスクに対する認知については「リスクセンス」(ジョン・F・ロス、集英社新書)によって啓蒙が進み、行動経済学によって知識は深まった。更に本書により、「未知のリスクへの恐怖」を「理解したリスク・知っているリスク」に変え、恐怖に操られてリスクに騙されることが無いように、じっくり考える時間を持つことが必要ではないだろうか。