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リスクマネジメント・ラボ

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社会保険労務士 毎熊 典子  

4回 「職場のパワーハラスメントの予防・解決をめざして」

厚生労働省は、2012年3月15日に「職場のパワーハラスメントの予防・解決に向けた提言取りまとめ」を公表しました。これは、同年1月30日に、厚生労働省の職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキング・グループから報告書が提出されたことに基づくものです。

同報告書では、職場のパワーハラスメントの概念が示され、また、パワーハラスメントに当たる可能性のある行為として、6つの行為類型が示されましたが、パワーハラスメントに当たる行為が整理されたのは、今回が初めてです。

都道府県労働局に寄せられる「職場のいじめ・嫌がらせ」に関する相談件数は、2002年度は約6,600件であったのが、2010年度には6倍の約39,400件となっており、年々増加しています。また、2010年度に行われた「仕事のストレスに関する全国調査」では、労働者のうち、約17人に一人(約6%)が「職場で自分がいじめにあっている(セクハラ・パワハラを含む)」と回答し、さらに約7人に一人(約15%)が「職場でいじめられている人がいる(セクハラ・パワハラを含む)」と回答しています。

他方、中央労働災害防止協会が実施した調査では、「パワーハラスメント」が企業にもたらす損失として、「社員の心の健康を害する」(83%)、「本人のみならず周りの士気が低下する」(70%)、「職場の生産性を低下させる」(67%)、「十分に能力発揮ができない」(59%)という回答がなされており、これらの調査結果からも、職場のパワーハラスメントの問題が大きな問題となっていることがわかります。

提言では、企業や労働組合、職場で働く一人ひとりに向けて、職場のパワーハラスメントをなくすための予防・解決に向けた取組について示されていますが、その中で、「職場のパワーハラスメントは、上司からだけでなく、同僚間や部下から上司にも行われる。つまり、働く人の誰もが当事者となり得るものであることから、いま、組織で働くすべての人たちがこのことを意識するよう求めたい。」としています。

そして、報告書では、パワーハラスメント対策に取り組むある企業の人事担当役員の次の言葉が紹介されています。
全ての社員が家に帰れば自慢の娘であり、息子であり、尊敬されるべきお父さんであり、お母さんだ。そんな人たちを職場のハラスメントなんかでうつに至らしめたり苦しめたりしていいわけがないだろう。

私は、この言葉を読むたびに、胸が一杯になります。そして、本当にそのとおりだと思います。パワーハラスメントをなくして誰もが働きやすい職場をつくるためには、企業としての取組が重要であることもさることながら、そこで働く一人ひとりが、お互いを尊重し、思いやり、そして支え合うということが、何にも増して大切であると思っています。

 

「職場のパワーハラスメントの予防・解決に向けた提言取りまとめ」
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r98520000025370.html

「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキング・グループ報告について」
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r98520000021i2v.html



執筆者:毎熊 典子(まいくま のりこ)
 フランテック法律事務所所属社会保険労務士。慶応義塾大学法学部法律学科卒。
NPO法人日本リスクマネジャー&コンサルタント協会 評議員・認定上級リスクコンサルタント、
日本プライバシーコンサルタント協会認定プライバシーコンサルタント。日本広報学会 会員。
主な著書:「電子メールのリスク管理」(共著、ビジネス法務2007年5月号)、
「自社従業員によるネット不祥事への労務対応」(ビジネス法務2011年10月号)他。