Home > リスクマネジメント・ラボ 

リスクマネジメントの専門知識・事例を学ぶ

リスクマネジメント・ラボ

第7回 2012年10月
第6回 2012年8月
第5回 2012年6月
第4回 2012年4月
第3回 2012年2月
第2回 2011年12月

第1回 2011年10月













          
社会保険労務士 毎熊 典子  

7回 知らないではすまされないソーシャルメディアのコワさ
~TwitterやFacebookなどによるトラブルで泣かないために~

 ソーシャルメディアとは、TwitterやFacebookなどのユーザ間のコミュニケーションを主たる価値として提供されるサービスのことをいいます。2004年にサービスを開始したFacebookは、全世界の利用者数が既に9億5000万人を超えており、日本での利用者数も2012年9月時点で1500万人に達し、いまも急速に増加し続けています。また、インターネットメディア総合研究所が行った「インターネット個人利用動向調査2012年」によれば、2012年5月時点での日本のソーシャルメディア人口は、5060万人に達しています。

ソーシャルメディアの利用を増加させる要因としては、カメラ付携帯やデジカメの普及、ハードウェアの高機能化、スマートフォン利用者の増加などの環境的要因のほか、情報発信の楽しさやコミュニケーションの楽しさを知った利用者側の要因を挙げることができます。2011年3月11日に発生した東日本大震災の際にTwitterが人命救助に役立ったこともソーシャルメディア利用者拡大の一因となっているものと思われます。人間関係が希薄化する現代社会において、ソーシャルメディアは、個人同士の関係の希薄化を補うツールとして注目されており、高度情報化社会の中で、新たな社会的絆・経済的絆の構築に大きく貢献するものとして、今後もますます重要な役割を果たすことが期待されています。 しかし、その一方では、利用者がソーシャルメディアを利用して不適切な発言をしたために、いわゆる炎上が発生し、個人情報が晒されたり、誹謗・中傷を受けたり、さらには、利用者が勤務する企業にまでが非難の的となり、企業の名誉や信用が毀損されてしまうという事態が後を絶ちません。特に2011年には、大手ホテルのアルバイト従業員の女子大生が有名人の来店情報やプライベート情報をTwitterに投稿したり、大手スポーツ用品メーカーの新入社員の女性が自社の契約選手が店舗を訪れた際にその選手や家族を中傷する内容をTwitterに投稿して炎上するなど、従業員の投稿による炎上トラブルが相次いで発生し、新聞などでも大きく取り上げられるなどして、まさにネット不祥事の嵐が吹き荒れました。

 ソーシャルメディア上での不適切な発言は、発言者自身にも多大なマイナスの影響を及ぼします。個人情報の暴露や誹謗中傷の的とされるだけでなく、勤務先の就業規則違反を問われ懲戒処分を受けたり、第三者の権利を侵害したとして民事上の損害賠償請求を受けたり、内容によっては刑事上の責任を問われることもあります。たった一言の不適切な発言が、せっかくこれまで築きあげてきた自身のキャリアや人間関係を台無しにしてしまうこともあります。今夏行われたロンドンオリンピックにおいても、陸上女子三段跳びのパラスケビ・パパリストゥ選手がTwitter上で差別的な発言をしたとして、ギリシャオリンピック委員会の判断によりオリンピック代表から外されてしまいました。 ソーシャルメディアは、人と人とのつながりを豊かにし、個人の生活をより豊かなものにしてくれるツールですが、使い方を誤ると大きなマイナスの影響を発生させてしまうリスクのあるものです。ソーシャルメディアを楽しく使うためには、ソーシャルメディアの特性や機能・利用方法を理解して適切に活用する能力、すなわちソーシャルメディアリテラシーを磨くことが必須であることを忘れないでいただきたいと思います。


執筆者:毎熊 典子(まいくま のりこ)
 フランテック法律事務所所属社会保険労務士。慶応義塾大学法学部法律学科卒。
NPO法人日本リスクマネジャー&コンサルタント協会 評議員・認定上級リスクコンサルタント、
日本プライバシーコンサルタント協会認定プライバシーコンサルタント。日本広報学会 会員。
主な著書:「電子メールのリスク管理」(共著、ビジネス法務2007年5月号)、
「自社従業員によるネット不祥事への労務対応」(ビジネス法務2011年10月号)他。