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リスクマネジメント・ラボ

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社会保険労務士 毎熊 典子  

第10回 女性が活躍する社会をめざして


最近、初の女性取締役誕生の記事を目にすることが多くなりました。日本航空では客室乗務員(CA)出身の大川順子氏(58歳)が女性で初めて取締役専務執行役員に、東京電力では佐藤梨江子氏(48歳)が内部昇格者として過去最年少の役員として初の女性執行役員に、それぞれ平成25年4月1日づけで就任するとのことです。パナソニックでも元経済財政相の大田弘子氏(59歳)を同年6月26日付で社外取締役に招く人事が発表されましたが、同社において女性が取締役に就任するのは初めてとのことです。

従前、日本では女性の登用が少ないことが指摘されています。日本の全就業者に占める働く女性の比率は42.2%で、米国、英国などの各国も45%前後ですので、欧米各国と比べてもほとんど変わりはありません。ところが、「管理的職業従事者」(企業の課長以上や管理的公務員など)について女性が占める比率は、ノルウェー、フランス、英国、米国、ドイツではいずれも40%を超えている一方で、日本の場合はわずか11.9%に過ぎず先進国の中では最低の水準で、シンガポール(34.3%)やフィリピン(52.7%)などのアジア諸国にも後れをとっています。

女性管理職を増やすためには何が必要なのか。経済同友会が平成24年10月に220社を対象に行ったアンケート調査では、「行政による育児支援のインフラ整備」を求める声が14.5%と最も多く挙がりました。日本では働く女性の6割が出産後に退職し、さらに第二子以上の出産になると、仕事をもつ女性の割合は27%台にまで落ち込みます。出産後においても女性が働き続けることができる環境を整備することが、女性管理職を増やすうえで必須と考えられますが、行政による育児支援のための環境整備はまだまだ進んでいるとはいえない状況です。こうした状況の中で、最近では、民間企業の間で出産・育児期の女性の支援が始まっており、今後こうした支援が拡大していくことが期待されます。

20数年前、私が社会に出た頃は、男女雇用機会均等法が成立したばかりで、一部の上場企業が新卒女子を総合職として採用し始めた時期でした。初めての総合職として迎えられる女性社員は、職場においても取引先でも好奇の目に晒されることが少なくありませんでした。女性を総合職として活用することすら疑問視する男性社員や上司らと仕事をする中で、彼らの信頼を得て、評価されるようになるためには、努力と忍耐力、そして時間が必要とされました。そうした環境の中で、弛まない努力を続け、時に自らの生き方に悩み、時に挫折しそうになりながらも、今日まで駆け抜けてきた女性達が、いまようやく、管理職として登用されて活躍する時代が来たことを感じています。

国際通貨基金(IMF)のラガルド専務理事は、自身の講演において「日本には未活用のよく教育された女性労働力というすごい潜在成長力がある。」とし、「女性の活躍」が日本経済成長のカギであることを指摘しています。また、デフレ脱却を目指す安倍晋三首相の経済政策であるアベノミクスにおいても、女性の活用が日本経済を押し上げる鍵を握ると言われています。

わが国における働く女性の歴史は浅く、女性の活用もいまだ手探り状態にあると言わざるを得ません。しかし、女性の活用は、日本においてのみならず世界においても必要とされています。いまは正に、働く女性に追い風が吹いている時代といえるのではないでしょうか。働く女性ひとり一人の弛まない努力と、それを支援する周囲の努力の積み重ねが、これからの女性活用の歴史を作っていきます。私も働く女性の一人として、多くの女性がそれぞれの人生の舞台において輝くことができる社会を築いていくために頑張りたいと思います。


執筆者:毎熊 典子(まいくま のりこ)
 フランテック法律事務所所属特定社会保険労務士。慶応義塾大学法学部法律学科卒。
NPO法人日本リスクマネジャー&コンサルタント協会 評議員・認定上級リスクコンサルタント、
日本プライバシーコンサルタント協会認定プライバシーコンサルタント。日本広報学会 会員。
主な執筆活動
「ソーシャルメディアにかかわるトラブル対応Q&A」(共同執筆、労務事情2011年10月)
「自社従業員によるネット不祥事への労務対応」(ビジネス法務2011年10月号)他