Home > リスクマネジメント・ラボ 

リスクマネジメントの専門知識・事例を学ぶ

リスクマネジメント・ラボ

第7回 2014年1月
第6回 2013年12月
第5回 2013年11月
第4回 2013年10月
第3回 2013年9月
第2回 2013年8月
第1回 2013年7月
ソーシャルリスク毎熊
          
毎熊典子 リスクマネジメント レピュテーション ソーシャル
特定社会保険労務士 毎熊 典子  

第2回  ソーシャルメディアの利用に関して就業規則の変更は必要か?


Q. 社員のソーシャルメディア利用に関して規制を設ける場合には、就業規則を改定する必要が
   ありますか?

A. ソーシャルメディアを利用した誹謗中傷や機密情報の漏えいを禁止することは、通常の就業
   規則に記載されている一般的な規定でも対応可能と思われます。ただし、ソーシャルメディア
   の利用に関して会社が定めるソーシャルメディアポリシーやガイドラインに違反したことを理由
   とした懲戒処分や、社員のソーシャルメディアの利用状況についてモニタリングを実施する場
   合には、その旨を就業規則に明記しておくことが必要となります。


通常、就業規則には、「職務専念義務」や「秘密保持義務」、「会社の名誉や信用を毀損しない義務」など、労働契約に基づき社員が会社に対して負うべき義務が定められています。就業時間中にTwitterやFacebook、LINEなどに夢中になって業務に支障を来たさないようにすること、業務上知り得た会社や取引先等の秘密情報を漏えいしないこと、不適切な書込みをして会社の名誉や信用に傷をつけないようにすることなどについては、就業規則上の既存の規定でも対応可能と思われます。

 一般的に、就業規則を変更することは、容易なことではありません。特に、上場企業や規模の大きい会社、労働組合がある会社などにおいては、難しいものと思われます。そこで、「就業規則の変更は難しいが、社員のソーシャルメディア利用に関して、会社として何らかのルールを設けておきたい」という場合には、ソーシャルメディアの利用に係る会社の方針を示す「ソーシャルメディアポリシー」や社員の行動指針としての「ソーシャルメディアガイドライン」を策定することをお勧めします。

 ただし、自社の社員がソーシャルメディアポリシーやソーシャルメディアガイドラインに違反したことを理由として懲戒処分を実施するためには、その旨が就業規則に明記されていることが必要となります。

 また、社員のソーシャルメディアの利用に関して、モニタリングを実施する場合においても、その旨を就業規則に明記しておくことが必要とされますので、この点について注意が必要です。


[社員のソーシャルメディア利用に関して就業規則に記載する事項の例]
① ソーシャルメディアの利用に際しては、業務上・業務外を問わず、会社が定めるソーシャルメディア
  ポリシーやガイドラインを遵守すること

② 会社が社員に対して、合理的な理由に基づいてインターネット上の書込み等について削除・訂正を
  求めた場合は、社員はこれに応じなければならないこと

③ 会社は、社員が業務上使用するパソコン、携帯電話、スマートフォン等の情報機器に関して、定期的
  または随時、監視・調査することができること

④ ①および②の規定に違反した場合は、懲戒処分の対象になりうること


執筆者:毎熊 典子(まいくま のりこ)
 フランテック法律事務所所属特定社会保険労務士。慶応義塾大学法学部法律学科卒。
NPO法人日本リスクマネジャー&コンサルタント協会 評議員・認定上級リスクコンサルタント、
日本プライバシーコンサルタント協会認定プライバシーコンサルタント。日本広報学会 会員。
主な執筆活動
「ソーシャルメディアにかかわるトラブル対応Q&A」(共同執筆、労務事情2011年10月)
「自社従業員によるネット不祥事への労務対応」(ビジネス法務2011年10月号)他

<著者プロフィールセミブログサイト>

 http://www.frantech.biz/article/13741871.html