Home > リスクマネジメント最前線!”リスクに強い企業を創る”

 

 


 
第1回 IT事業継続のエキスパート集団! ニュートン・コンサルティング   (2010年1月10日更新)
第2回 ネット上の風評リスクを「見える化」! 株式会社ガーラバズ  (2010年2月10日更新)
第3回 レコードマネジメントのスペシャリスト集団 データ・キーピング・サービス  (2010年3月10日更新)

第2回
 
ネット上の風評リスクを「見える化」! 株式会社ガーラバズ

インターネット上には、毎日24 時間休みなく膨大な情報が寄せられ、その情報は瞬く間に広範囲に伝播していきます。特に近年は、掲示板やブログなど消費者からの情報によって作り出されるメディアは、時にマスコミを動かすほどの力を発揮し、リアルな世界へも影響を及ぼします。その影響力は、「風評」という負の側面として表出することも多く、企業にとっては無視できないリスクとなっています。

今回は、インターネット上の掲示板の監視や誹謗中傷などのリスク管理を専門として事業を営む、この分野のリーディングカンパニーである㈱ガーラバズを訪ね、インターネット上における風評等のリスクの実態、ならびにそれらに対する先進的な企業の取り組み状況などをお話いただき、さらに、ガーラバズの提供する「リスクモニタリング」サービスについても詳細を伺いました。

(RMCA会報誌『RISK MANAGEMENT AGE』2009年1月号より転載)

★関連リンク
・企業サイト      http://www.galabuzz.jp/
・RRM研修コース   http://www.rmcaj.com/_rmca/guide/authorization/rrm_k.htmll


ガーラバズについて
まず、当社の成り立ちから紹介させていただく。当社は、2007 年12 月に㈱ガーラ(以下、ガーラ)の100%子会社として設立された。ガーラは、93 年設立、00 年8 月に大阪証券取引所ナスダック・ジャパン市場(現:ニッポン・ニュー・マーケット-「ヘラクレス」)に株式上場を果たしている。事業内容としては、オンラインゲームの開発やサービス提供に始まり、リスクモニタリング及び口コミリサーチなどを手がけ、さらに、コミュニティ制作、ASP サービス提供やモバイル向けコンテンツ事業までを営み、「世界NO.1 のグローバル・オンライン・コミュニティ・カンパニー」をビジョンに掲げる。

当社の主要事業である、リスクモニタリングサービス「e- マイニング」は、01 年1 月にガーラの新事業として開始したものであり、ガーラが、07 年11 月に当サービスを統括する「データマイニング事業部門」を会社分割化し、当社に承継されたものだ。

当社は、ブログや2 ちゃんねる、掲示板に書き込まれた様々な書き込み情報、つまりCGM(Consumer Generated Media =消費者生成メディア)やバズ(Buzz=口コミ)を独自開発の検索エンジンによって、自動収集し、顧客企業に役立つ情報を毎日報告するサービスをはじめ、企業のリスクマネジメントおよびブランディング強化を一貫してサポートするサービスを提供している。

広がるインターネット上の風評リスク

インターネット利用者数及び人口普及率の推移

ご存知の方も多いと思うが、インターネットの利用人口は情報通信白書によれば、平成19 年の末には8811 万人と推計され、人口普及率は69.0%と遂にほぼ7 割まで達した。インターネットの登場により、情報の流れは大きく変化した。インターネット登場以前は、企業などから新聞、ラジオ、テレビや雑誌という従来のメディアを通じて生活者に情報が届けられる、ある種一方通行の流れであったが、インターネットの普及により一方通行ではなく双方向のコミュニケーションになり、様々な立場からの情報発信も可能になった。特にインターネットを流れる情報が生活者一人ひとりに与える影響は計り知れない。もはや企業にとって、インターネットは既存のマスメディア以上に動向・ 実態を注視しなければならないメディアとなった。

「インターネット上の個人の発言=書き込み」の状況を調べてみると明らかに拡大傾向にある。インターネットの黎明期では企業や個人が運営するいわゆるホームページや参加者すべてが読み書きできる電子的な掲示板サービスが主流だったが、最近では「ブログ」、「SNS (ソーシャルネットワークサービス)」、「コミュニティサイト」に加え、「動画投稿サイト」など、いわゆる「Web2.0」時代の代名詞でもあるCGM(消費者が生成するメディア)が様々な形態として現れ、隆盛を極める勢いだ。依然として匿名性の高いメディアではあるが、「書き込み」情報への生活者、利用者の意識は年々高まっていることは間違いがない。

この「書き込み」つまり「ネット上の口コミ」が、企業や社会に及ぼす影響を認識するために、最近のものも含めた過去のいくつかの代表的な事例を紹介してみよう。

①東芝事件 ;発生1999 年9 月
福岡の会社員が「クレーマー」として扱われた東芝の相談窓口との会話を録音し、自身の告発ホームページで公開したところ、そのホームページへのアクセス数が1000 万を超え、マスコミでも大きく取り上げられた。東芝が対抗手段として告発ホームページの内容の一部削除を求める仮処分申請を行ったことで、今度は2,000 件もの批判電話が同社に殺到し、結局仮処分申請を取り下げ、記者会見で謝罪した。個人のホームページが中心となって、企業が大きなダメージを受けた代表的な事例。

②佐賀銀行事件 ;発生2003 年12 月25 日
「佐賀銀行が破綻するらしい」との情報を20 代の女性が知人26 人に携帯電話メールで送信。その情報がさらに連鎖的に多くの人に転送された。メールを受信し不安を感じた預金者が佐賀銀行のATM に並び始め、行列が行列を呼んだ事により、結果取り付け騒ぎが発生。1週間で450 億~ 550 億円の預金が流出。可視化された現実が、デマの信憑性を高めた。

③毎日新聞事件:発生2008 年夏
毎日新聞社が発行する海外向け英語サイト『毎日デイリーニューズ』において、日本の女性を貶めるような内容など、低俗な記事が5 年間にわたって大量に配信されていた事実が発覚。掲示板で書き込みが殺到し、その総数は23 万を超えた。さらにリアルな抗議行動に走る人も多数現れ、その後の毎日新聞の対応が反感を買ったこともあり、毎日新聞のWeb サイトに広告を掲載している企業に抗議電話が殺到し、結局全てのスポンサー企業が広告掲載をストップするという異常事態まで発生した。

これらは代表的な事例だが、実際には、企業・経営者・社員・製品に対する誹謗中傷情報、誤解を招きかねない風説や商標・著作権・特許権の侵害情報、さらには内部からの機密情報漏洩や不当な内部告発など、ありとあらゆるリスク情報がインターネット上に溢れかえっているのが実情だ。

進化のスピードが目覚しいインターネットの世界では、次から次へと新たな技術やサービスが現れると同時に、これらを悪用した意図的な攻撃や不当な妨害等も後を絶たない。米国You Tube の台頭に続き、日本でも独自の動画投稿サイトが出現し、企業は、テキストだけでなく違法動画の対応にも迫られる。 

企業の成長や存続を脅かしかねない「リスク情報=風評」を早期発見し、被害未然防止等の早期解決を図るためにも、企業は早急にインターネット上のリスクマネジメントに取り組むことが必要だ。

企業の風評リスク対策
前述したとおり、企業は、内部告発、不買運動、脅迫や情報漏洩に始まり、クレームや誹謗中傷など「情報」に関わるリスクに取り巻かれている。自社が発信した情報は勿論のこと、自社に関して他者から発信されている情報も把握しなければならないし、自社が公開した情報には責任を持たなければならない。情報の価値を決めるのは、情報の所有者や発信者ではなく、見た人の受け取り方次第だからだ。

攻撃する側つまり情報発信者は、たった一人でもローコストで企業に多大なる打撃を与えられる可能性があるし、これを防御する企業の側からみれば、たった数行の書き込みの情報だったとしても、ハイリスクな可能性を秘めた打撃を受ける恐れがある。だからこそ、インターネット上で流されている自社に関する情報を常日頃から管理することが必要だ。

インターネット上で掲示板などを通して言われなき誹謗中傷などの被害を受けた場合、法的措置を講じるという手段もある。確かに「プロバイダ責任法」(=正式名称:特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律)があるが、プロバイダの責任を限定したものに過ぎず、プロバイダに義務があるわけではないので常に被害者からの訴えに応じるわけではない。

つまり、企業にとって「情報発信者の特定」や「侵害情報の削除」が現時点では最善の対策ではないと言える。一番重要なことは、「誰」が書いたかではなく、「何」が書かれているか、「何故」書かれたのかを「知る」ことだ。

企業の風評リスク対策は、トラブルを未然に防止する対策としての「リスクマネジメント」ならびにトラブル発生時の緊急対策としての「クライシスマネジメント」の二つに分けられる。リスクマネジメントの最重要ポイントは、ネット上で何が起きているかを知ること、つまり発信された情報を「早期発見」することだ。知ることを怠れば、発見が遅れるし、さらに対応・対策も遅れ、結果的に企業に甚大なる被害を及ぼすからだ。

クライシスマネジメントでは、問題が生じた時に迅速に対応できる体制を事前に構築し、問題発生時には、適切な判断と迅速な行動により、被害拡大の防止を図ることが必要だ。いずれも「知ること」から対策は始まる。

リスクモニタリングサービス「e- マイニング」とは
顧客との信頼が大切である企業にとって“インターネット上での風説の流布” などが直接株価の下落等に大きくかかわってくる。インターネット上のリスク情報管理の優劣が企業の命運を分ける時代になってきたと言える。

これからの時代に対応すべく、当社ではインターネット上のリスク情報を早期に発見する最適のリスクモニタリングサービス「e- マイニング」を提供している。インターネット上に存在する膨大な情報の中から、リーク情報、企業の誹謗・中傷やデマ・噂にいたる企業のリスク情報を中心に探し出し、その情報を日々報告する。主に広報・IR 担当者向けの企業の風評・リスク管理サービスだ。 00 年1月のサービス開始以来、企業における関心の高さの現れか、反響を呼んでおり、東証1 部、2 部上場の各業界トップを含む大手有力企業が続々と採用し、導入企業は200 社を超えている。

当社のサービスは、独自の検索ロボットを使用し、顧客企業が指定したキーワード(企業名、役員名、製品名、サービス名等)の掲載されているページ(メールマガジンを含む)をチェックし、サイトのURL を、キーワードを含む引用文とともにまとめて報告する。よって、欲しい情報が入手可能であるとともに、時間・コストの無駄遣いをなくすことができる。

サービスの具体的な機能や特徴としては、顧客企業自身でキーワード設定の変更ができ、検索に際してはキーワードの類似語や伏字などにも対応し、当社独自の不適切用語辞書を使用し、差別用語・わいせつ用語・プライバシーの言葉などとともに書き込まれている情報の重要度を表示する「リスク度判定機能」がある。

実際に、「e- マイニング」を活用した事例が、数多くの企業から挙がっている。
・社外秘の情報を発見。社員の不適切な行動であることを確認し、社内処分した。
・商標問題、不具合情報や苦情・クレームを発見。
・相手側の改善、早期対応でトラブル拡大を防止、虚偽の情報拡散を防止した。
・Winny 上に社内データ漏洩の噂を発見。事実であったため、公式に謝罪報告した。

 

新たな事業展開と今後の取り組み
当社では、今まで「リスク情報」を発見する「e- マイニング」サービスを主として展開してきたが、変化の激しいインターネットの世界での新たなリスクにも対応できるように、08 年に入り、立て続けに新サービスをリリースした。

まず、8 月に「ネットリスクホットライン」を開始し、インターネットを悪用した誹謗中傷や業務妨害行為への対応戦略の立案、訴訟等の法的措置に必要な証拠収集、弁護士に対する技術支援まで提供することで、「e-マイニング」にて監視・報告された情報のその後の対応まで、一貫してサポートすることが可能となった。

次に、同じく8 月に開始した「ニコチューブチェッカー」は、キーワードによる動画サイトの一括確認による違法動画の迅速な発見と削除申請までを簡単に実行することを可能にした。

また、企業は、企業名・役員名・製品名・サービス名等での検索結果の上位に、自社に対する悪意を持った書き込み・ブログ等が表示されることによる信頼低下、業績悪化、内定辞退などの危険に曝されている。9月に立ち上げた「ランクチェンジャー」においては、検索結果に表示される悪意なサイトを上位結果から排除する。これまで対策手法が無かった検索結果によるレピュテーションリスク(風評被害、誹謗中傷)から企業の評判を守ることができる。SEO 対策にかけるマーケティング費用のROI を向上させることにも繋がる。

「e- マイニング」開始当初は、上場企業の広報・IR担当者が圧倒的多数を占めていたが、最近では経営企画室、法務・知財部、総務・人事部や営業マーケティング部署など他部署での利用も増加傾向にある。それだけ、ネット上のリスク情報が企業全体に及ぼす影響が無視できなくなっている証左だろう。

同時にリスク以外の活用事例も増えてきた。新商品やキャンペーンのリリース時における利用者の反応をフィードバック情報のひとつとして役立てているケースや、利用者の声を知ることで全社的な営業姿勢の転換が必要と気づいたケースもあるなど、マーケティングに有益な情報としても有効活用されている。

今後は、大企業ばかりでなく、より広範囲な企業にも当社のサービスを活用していただきたい。当社のサービスは、「e- マイニング」をはじめとしたインターネット上のリスクに対応するべくサービスを展開しているが、今後のインターネットの進化に合わせたサービスを広く提供することで企業のサポートとしてなくてはならない存在を目指したい。

当社のサービスを通じ、企業内においてインターネット上のリスクに対する知識や実務能力を備えた人材が一人でも多く輩出されることを切望します。

インターネット上のリスクをチャンスに変えることで、企業の存続と成長に寄与できる企業でありたいと強く思う。

(取材・編集 RMCA事務局)