Home > リスクマネジメント・ラボ > ビジネスパーソンにこそ必用な財務知識とリスクマネジメント

リスクマネジメントの専門知識・事例を学ぶ

リスクマネジメント・ラボ


第4回 2006年1月
「事業部門・製造部門担当者編」

第3回 2005年12月
「販売・営業担当者編」

第2回 2005年11月
「会社内のポジションによる財務知識とリスクマネジメントのポイント」

第1回 2005年10月
「ビジネスパーソンが財務とリスクマネジメントを学ぶことの重要性」

著者プロフィール

 杉原 浩章  


第3回 販売・営業担当者編
はじめに

前回のメールマガジンでは役員・経理財務担当者が財務とリスクマネジメントを学ぶことの重要性についてのポイントを指摘しました。
今回からは、販売・営業担当者が獲得すべき財務知識とリスクマネジメントのポイントについて解説します。


販売・営業担当者が財務リスクマネジメントを学ぶ意味

現在、日本では、法人は約250万社あるといわれていますがその半数以上の会社が赤字です。1円でも利益を挙げることは大変な努力が必要です。

経営者も社員も全てこういう気持ちでいる会社とそうでない会社は大きく差がついてしまいます。 

会社が設立してから30年以上続く確率は数%だそうです。会社は原則として毎期、利益を上げ続ければつぶれることはありません。しかし、それだけ毎期利益を上げ続けることは大変なことですし、1円の利益にこだわることは会社を存続するための絶対的な条件といえます。

特に、販売・営業担当者は「売り上げ」を重視する傾向があり「利益」に関してはあまり重要視していないケースも散見されました。いいかえれば、経営者が販売・営業担当者へ利益重視のマネジメントを行っていないともいえます。

場合によっては、経営者自身が「売り上げ」のみを強調した結果、販売・営業担当者が安易な値引きや支払い条件などの変更に応じ、全く利益の上がらない売り上げの積み重ね、強いては商品代金の回収サイトが長期化し、場合によっては回収が難しくなった結果、資金繰りにも影響を及ぼしてしまい財務体質が悪くなる一方の会社は数多く存在します。


販売・営業担当者は本当の数字にこだわる事が重要

ある商品の売り上げが1000円だとした場合、10個ですと単価が100円。20個だとすると単価が50円となります。当たり前の事ですが、売り上げの数字を見たときにこのように分解する考え方が瞬時にできることが重要です。前回、「金額=数量×単価」の考え方を紹介しましたがこれが大変重要です。

売り上げの数量の増減によって利益は増減しますが、たとえば100個の売り上げが95個になったとしてもそれほど急激に利益が減ることはありません。しかし、単価が低くなるとこれは直接的に利益に影響します。

たとえば、同じ8000円売り上げとしても、1個100円の商品を80個販売し、1個あたりの利益が20円だった場合、利益は「160円」となります。同じ商品でかつ同じ原価の商品を80円で100個販売した場合、売り上げはおなじ8000円ですが利益は「0」です。さらに言うなら1個100円で70個販売し、売り上げが7000円になったとしても利益は「140円」ですが逆に同じ商品を1個90円で100個販売し、9000円の売り上げを達成したとしても1個10円の利益であれば「100円」の利益となります。

会社は最終的に「利益」を上げることが目的ですからこの場合、9000円で100個、8000円で100個販売した販売・営業担当者より7000円で70個販売した営業・販売担当者の利益貢献度の方が遙かに高いことになります。

先月も申し上げましたが、本当に当たり前の事ですが、売り上げの中身を瞬時に分解し本当に利益貢献度を「金額・売り上げ」と聞けば、すぐに「金額=数量×単価」、この式を思い起こす力が強いことは財務的にも大きな力が備わったといえるくらい大切でさらに利益ベースまで分解することが必要です。

また、このことを実践するためには、会社が儲け続けることができる仕組みを経営者も販売・営業担当者にもオープンにしていく必要性があります。

売上高の競争は単に売り上げだけの総額を見ていると判断を誤りかねません。会社が存続していく条件は売り上げだけが重要なのではなく最終的には「利益」だからです。ですから「増収減益」では全く意味がないのです。

また、商品の売り上げを上げるだけで販売・営業担当者の仕事は終わりではありません。販売先から商品代金を「速く・確実に」回収・「現金化」するまで会社にとって「売り上げ」の数字はなんら意味を持たないものであるからです。

売り上げの商品回収サイトは運転資金の調達に直結します。回収サイトが短ければ短いほど会社の運転資金に余裕ができ、資金繰りは好転します。


売り上げ重視から利益重視・キャッシュ(回収)重視の営業へ

販売・営業担当者の役割は会社が確実に儲かる仕組みを実行し続けることにあります。そしてその利益の実現は、販売先から確実に商品代金を回収することで実現され、この業務が販売・営業担当者の責任といえます。

これからの販売・営業担当者は商品を売るだけではなく、取引先が確実に商品代金を支払うことのできる財務体質であるかどうかも含め、取引内容を判断していく能力も必要となってきます。いきなり、好条件を提示されて商品を納品したとたんに、相手先企業の倒産などで商品代金が回収不能状態に陥ってしまっては売り上げを立てたことによって結果として会社に損害を与えてしまうことになってしまいます。

販売・営業担当者が売り上げだけではなく会社が利益を上げ続けるためには、商品知識、販売技術だけではなく、取引先の与信管理、回収条件の管理等の責任を果たしていくためには、財務リスクマネジメントの知識を獲得することは必須の条件といえます。

経営者・財務担当者の皆様も、販売・営業担当者の皆様と財務リスクマネジメントを共通の言語として利益を上げ続ける強い財務体質獲得を実行するため、是非、財務・マネジメントのスキルを獲得するための機会を継続的に社内・社外に設けることが必要です。