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ソーシャルリスク毎熊
          
毎熊典子 リスクマネジメント レピュテーション ソーシャル
特定社会保険労務士 毎熊 典子  

第9回 役員のソーシャルメディア利用に伴うトラブルを防止する方法は?


Q9.役員のソーシャルメディアの私的利用には、どのようなリスクがありますか。また、トラブルを防止するためには、どのような対策を講じればよいでしょうか。


A9.役員のソーシャルメディア利用には、情報漏えいリスクや不適切投稿による炎上リスクのほか、なりすましのリスクなどがあります。トラブル防止対策としては、「役員向けソーシャルメディアポリシー」の作成や誓約書の提出のほか、監査役が役員のソーシャルメディアの利用について定期的・継続的にチェックをする仕組みを整えることなどが挙げられます。




1 役員のソーシャルメディア利用が企業に及ぼす影響について

 
役員のソーシャルメディア利用に関しては、様々なリスクがあります。役員は、日常的に重要な企業情報を取り扱っており、職務上知り得た未公開情報をついうっかり漏らしてしまえば、守秘義務違反となる可能性があります。また、役員のソーシャルメディア上での発言に対するユーザの関心は高く、不適切な発言をすれば炎上を引き起こす可能性が非常に大きく、また、炎上が企業の評判(レピュテーション)や信用に及ぼすマイナスの影響も、一般社員が起こす炎上と比べて、より重大なものとなる可能性があります。

  
 他方、企業の役員を騙る「なりすまし」によるトラブルも少なくありません。役員がソーシャルメディアのアカウントを開設していながら、あまり運用していないような場合、役員の本物のアカウントの閲覧者数よりもなりすましアカウントの閲覧者数の方が多くなってしまい、ユーザがなりすましアカウントを本物だと誤認して混乱が生じることがあります。特に、なりすましアカウントが誹謗中傷を含む不適切投稿で暴走しているような場合には、一刻も早い対応が求められることとなります。

【役員のソーシャルメディア利用のトラブル例】

役員による
情報漏えい
2011年 5月 大手移動体通信会社の相互接続サービス開始について、関係する5社連名でのリリースを予定していた日の前日の夜に、うち1社の役員が翌日発表する予定であった内容を解禁情報と勘違いしてツイッター上で書き込んでしまった。
社長による
不適切投稿
2012年10月 アパレル通販会社社長がツイッター上で、利用者が送料や手数料が高いと発言したのに対して、「ただで商品が届くと思うんじゃねぇよ。お前ん家まで汗水たらして宅配会社の人がわざわざ運んでくれてんだよ。お前みたいな感謝のない奴は二度と注文しなくていいわ。」と発言して炎上した。
社長の
なりすまし
2009年 6月 インターネット広告代理店事業会社の社長のなりすましアカウントがツイッター上で登場し、約1000人のフォロワーを集めた。同社の社長は、自身のブログで「なりすましの方がいるみたい」と告知し、偽物と間違われないようにと、取得していた自身のアカウントを公開した。


2 トラブル防止対策について

  役員のソーシャルメディア利用に伴う情報漏えいや不適切投稿に対して、企業として講じ得るリスク対策としては、「役員向けソーシャルメディアポリシー」の作成が挙げられます。最近は、ソーシャルメディアポリシーを作成する企業が増えていますが、企業関係者向けのものとは別に、ソーシャルメディアを利用する際に役員として留意すべき事項について記載した役員向けソーシャルメディアポリシーを作成して、役員特有のリスクについて注意を促すことが効果的と思われます。そして、役員会等において役員向けソーシャルメディアポリシーの内容を説明し、ソーシャルメディアを利用する際にはこれを遵守する旨の誓約書を提出してもらうことで、役員の意識を高めることができます。  

 また、取締役のソーシャルメディアの利用については、監査役が定期的・継続的にチェックをして、問題になりうる点があれば、都度、指摘をする仕組みを整えることもトラブル防止につながるものと思われます。  

 なお、なりすましアカウントに対するリスク対策としては、役員の私的アカウントの公開・非公開の設定の見直しや、インターネット上の書き込みについて定期的・継続的にモニタリングを実施することが挙げられます。不審なアカウントを発見したら、投稿内容を確認し、自社関係者が関与していないことが確認できた時点で「自社とかかわりのないアカウントである」旨を自社のウェブサイトやアカウント上で告知するなどの対応を取ることが必要と思われます。

 





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