日本リスクマネジャー&コンサルタント協会
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理事長挨拶

リスクリテラシーを備え、新たな一歩を

荒木洋二

新年あけまして、おめでとうございます。

2020年は世界も日本も、新型コロナウイルス感染症の一色に染まり、暗たんたる感情に覆われた1年でした。

私たち一人一人が、どうリテラシーを向上させるのか、と熟考を重ねざるを得ませんでした。リテラシーとは読み書きする能力です。どんなリテラシーを身に付けるべきなのか。それはメディアリテラシーであり、情報リテラシーでもあります。視点を変えれば、リスクリテラシーともいえます。言い換えると、情報の真贋を見分ける力、行動変容を促す言語力ということです。

「メディア=マスコミ」と捉えますと、メディアリテラシーとは、マスコミ報道の真贋を見分ける力が備わっているのか、ということです。世代を超え社会全体に強い影響を及ぼすメディア、特にテレビと新聞が、コロナ報道を機に本来の使命を自ら放棄しました。中立の立場を離れ、恐怖を煽り続け、高齢者や母親たちを中心に少なくない人々に恐怖心を植え付けました。その恐怖心が、日本特有の同調圧力と共鳴し合い、社会のつながりを分断させるエネルギーとなり、猛威を奮っています。このエネルギーは、こんなにも科学が発達した現代であるにもかかわらず、科学的根拠を求める気持ちを削ぎ、論理的思考を停止させてしまうほどの力を持っているようです。
情報リテラシーとは、マスコミ報道だけでなく、「ネット空間」で発せられる膨大な情報を含め、真贋を見分ける力といえます。マスコミに登場しない、医学の専門家たちが、主に動画チャンネルを核にほとんど報道されない事実を発信し続け、ネットを中心に物議を醸しています。目から鱗が落ちるような情報に接し、言い知れぬ不安や違和感から解放された人たちも存在します。

情報の真贋を見分ける力だけでは、リテラシーを備えたことにはなりません。もっと重要なのが行動変容を促す言語力ではないでしょうか。マスコミ報道を鵜呑みにしている人たちに対して、「情弱」や「コロナ脳」という言葉とともにやゆしたり、軽蔑したりする傾向が顕著になっています。このような言葉は、恐怖心と同調圧力によるエネルギーと同様に社会全体に分断を生じさせ、怒りや恨みなどの負の感情を生むばかりです。社会全体をより良い方向へと導く、行動変容を促すことにはつながりません。どんな表現、どんな言葉で何をどうやって伝えるのか。暖かいまなざしと心を忘れずに創意工夫を繰り返し、言語力を磨いていくべきではないでしょうか。

私たちはコロナ禍による混乱を社会全体で奇貨として捉え、事実と正面から向き合い、それぞれが新たな一歩を踏み出していく時を迎えています。
リスクマネジメントの国際規格「ISO31000」では、リスクを「目的に対する不確かさの影響」と定義しています。何を目指し、どこに向かうのかが定まってこそのリスクマネジメントであり、リスクリテラシーです。何がリスクなのか、社会全体でリスクを特定し、リスク情報を共有しなければなりません。

当協会は、理事を筆頭に社会に対し、リスクリテラシーを向上できる機会を提供し続けることで使命を果たしてきたいと決意を新たにしています。

本年もどうぞよろしくお願いいたします。

2021年1月1日

特定非営利活動法人日本リスクマネジャーアンドコンサルタント協会
理事長 荒木洋二

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