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  1. 普遍的リスク対策 乙守栄一
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第113回 リスク対策におけるユーモアの効用

人というのは、ピンチの時ほど真剣になり、どうしても失敗しないようにということで、気持ち的に非常に暗くなりがちな時が往々にして存在します。しかし、その時リーダーまで暗くなってしまっていたら、それに従うメンバーの人はどういう心境になるでしょうか?気持ちが塞がり、何か良いアイディアが出てきても、勇気を出して言おうという気にはなかなかなれないものです。気持ち、心情というのはメンバー全員に伝播することとなり、リーダーたる気質そのものにより、ピンチの時のモチベーションも大きく左右されてきます。

私も関西出身ということで、幼いころから笑いの文化に半ば日常の一コマのように染まらされてきました。オチは何で結局はどういうシナリオで話を誘導していくのか?修行のように隣近所友人まで審査による審査を繰り返され、ダメ出しを喰らわされてきました。今でもその状況は大きくは変わりませんが、ただ、この雰囲気を変える効用というのが、ユーモアには大きく存在するということが、スタンフォード大学のとある研究によって明らかになってきました。

コンサルティング業界など、プレゼンテーションの場で、理論詰めの雰囲気満載の中で下手なオチを付けようものなら、クレームものになりそうな仕事の日常の一コマでも、ちょっとした摑みにこのユーモアを入れることで、以降の人間関係性に大きく融和をもたらします。求心力とでも云いましょうか、人を惹きつける力を産み出す大元がこのユーモアに存在します。

また、ユーモアのセンスは天性のものと捉えられている節が大半の人がそのように感じているようですが、これはトレーニングによってその才能を養うことができます。ユーモアの基本は身近にある日常の事柄からネタを見つける、そのトレーニングを行なうことでその才が磨かれるそうです。コメディアンなどは日常から数多のネタを見出し、相当数のストックを常日頃持ち合わせていると云います。そこまでとは言わずとも、毎日身近なことからネタを拾い集める習慣は、このユーモアネタの発掘の源泉になり得ます。これはアイディア発掘のためのトレーニングにも通じる手法です。

そのような中、危機的事象などが発生した時の対応心境は明らかに異なります。一刻を争う中で、どのように行動するか?で危機を乗り切れるかどうか、大きく鍵を握ります。このユーモアの心得一つ、リーダーが備えていることで、タイムリーに放つ一言によりチームの結束力も大きく固まり、ベクトルを同じにすることができます。サイバーセキュリティ対策やBCP対策をはじめ、数々の危機的事象をどう乗り切るかは、このベクトルの向き如何で大きく変わります。

ただし、そこには大きな別のリスクが存在するのも事実です。ユーモアのネタの“内容”そのものです。人に受ける、受けないは別問題とし、大きなハレーション、遺恨をのこすような筋のネタを大々的に披露してしまうと、結束力とは真逆の力が働いてしまいます。下手をすればハラスメント扱いになってしまうことにもなりかねません。

時のリーダーたる人は、ユーモアのグレーゾーンと言われる点を把握しつつ、そこを外さない場の空気を読む目利き力も兼ね備えなければなりません。あまり報道の場面では大きく取り扱われることはありませんが、各国のリーダーの中には、このような目利き力を最大限生かしながらユーモアをもって外交を行なう要人もいるそうです。個人的信頼関係を気付き上げる大きな手法として、一国を預かる大きな課題、問題点の解決の糸口を掴むために、短時間に初動を起こすためにもこのようなユーモアは大きな武器になってきます。

人間は生きている限り、人と相対する必要があります。親しい人ばかりで仕事や生活をするわけではない中、少しでもお互いの関係性をスムースにするための取っ掛かり、それがユーモアであることを、どこか頭の片隅に置いておいていただければ、いずれか大変な事象の時に大きく役立つことと考えています。

株式会社シー・クレド
代表取締役 乙守 栄一

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