RMCA-リスクマネジメントの専門家による寄稿、セミナーや研修・講座などの情報

  1. 企業の基礎体力としてのリスクマネジメント 荒木洋二
  2. 11 view

第1回 危機管理ではない。だからこそ平時に効く

現場での話を聞いたり、報道に接したりしていると、
「もっと早く気づけたのではないか」という言葉に触れることがあります。

大きな問題が起きた後、振り返ると、
その前には小さな兆しや違和感があった、
というケースは少なくありません。

ただ、その時点では、
それを“リスク”として扱うほどの明確さはなく、
日常の中に埋もれてしまいます。

そして問題は、それらが見過ごされたまま積み重なり、
あるタイミングで、はじめて「事象」として表に現れることです。

私たちはその時点で、
初めてそれを“リスク”として認識し、対応を始めます。

しかし見方を変えると、
リスクはその瞬間に突然生まれたのではなく、
もっと前の段階から、すでに存在していたとも言えます。

違和感、兆し、小さなズレ。
それらはまだ“問題”ではないかもしれませんが、
確かに何かが変わり始めているサインです。

では、リスクマネジメントとは、何を扱うものなのでしょうか。

一般的には、
何かが起きたときに、いかに適切に対応するか、
という文脈で語られることが少なくありません。

しかし、ここまで見てきたように、
多くのリスクは、事象として表に現れる前の段階から、
すでに兆しとして存在しています。

そうであるならば、
リスクマネジメントは、
「起きた後にどう対応するか」だけではなく、

その前段階で、
いかに小さな変化に気づき、
いかにそれを大きくする前に扱えるか、

という視点から捉え直す必要があります。

さらに言えば、
それは特別な場面だけで発揮される能力ではなく、
日常の中でどのような判断や対話が行われているか、
どのような空気が組織の中にあるかといった、
平時の状態に大きく依存します。

このように考えると、
リスクマネジメントは、
単なる対応技術ではなく、
企業が日常的に備えている「状態」そのものとも言えます。

それを、ここでは「企業の基礎体力」と呼びたいと思います。

RMCAではこれまでも、
リスクマネジメントを危機管理とは区別し、
組織の持続的な運営に関わるものとして捉えてきました。

今回の連載では、その考え方を土台にしながら、
中小・中堅企業の現場で、どのように実装していくかという視点から、
あらためて整理していきます。

基礎体力と呼んだとき、
そこにはいくつかの側面があります。

一度の出来事に耐える力。
長い時間を通じてぶれない力。
変化に適応するしなやかさ。
判断の軸を保つ安定性。
そして、小さな兆しに素早く反応する感度。

これらはそれぞれ独立しているようでいて、
実際には日常の中で重なり合いながら、
企業全体のリスク耐性を形づくっています。

リスクマネジメントは、
何かが起きたときにだけ機能するものではありません。

むしろ、何も起きていない時間の中で、
どのような状態を保っているかによって、
その強さは大きく左右されます。

次回は、この「基礎体力」を構成する要素について、
もう少し具体的に分解していきます。

特定非営利活動法人日本リスクマネジャーアンドコンサルタント協会(RMCA)
理事長 荒木洋二

企業の基礎体力としてのリスクマネジメント 荒木洋二の最近記事

  1. 第1回 危機管理ではない。だからこそ平時に効く

最近の記事

2026年4月
 12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
27282930  
PAGE TOP