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第118回 デジタル時代の集中を鑑みたリスク対策

スマホを片手に、電車内においても歩いているときにおいても、違反ですが時には自転車に乗っているときや車の運転中にまで肌身離さずスマホを手に取ってしまうような日常に密着してしまったデジタル化の影響。ついつい手持無沙汰でスマホを見てしまう、気になるSNSメッセージが入ってきたため返事をしなければいけないという衝動、頭の中はどうなっているのでしょうか?

ここで、“集中”というキーワードが浮かび上がります。集中そのものは決して悪いことではないのですが、時と場合と対象に依って、自責の念に駆られることなく、向けてはならない対象に集中のベクトルを向けてしまうことが、一つのデジタル社会の中での弊害として生じています。オーストラリアの16歳未満の子供にはスマホ規制が課され、日本においても愛知県豊明市では「1日2時間以内の利用」という制限を全国で初めて条例化しました。

自動車のように免許制でもなく、何か定まったITリテラシーが身についていない人も含めて、自由にSNSやアプリ、同じ一つの画面で操作可能な便利さを持ったスマホはある意味中毒性を含んでいるといっても過言ではありません。これらの弊害を抑止することの一つの動きがこういった規制や条例といった動きになってきていることは云うまでもありません。

一方で、情報を受け取る人間は、物理的なスペックは上がっていることはなく、50年前も100年前も同じ“目”“口”“耳”“鼻”“脳”を持っている一個体に過ぎません。人間が過去と同じスペックであるにもかかわらず、それを処理する情報量が途轍もなく膨れ上がってきていることが、多次元の“集中”を余儀なくされてしまっていることに他なりません。仕事においてもマルチタスクをこなすことも要求される時代になってきたことも大きく背景として存在しています。そういう環境下、ストレスも意識出来ぬ間に積もってしまうことが重なり、健康面、精神面での害をもたらしてしまっています。

集中といっても、各種様々なタイプがあります。ゾーンに入るような集中もあれば、単純作業への集中もあります。この集中はどういうタイプであれ、リソースを要します。集中しすぎるとやがて疲れが襲い、ミスの発生頻度も高まってきます。適宜休憩や集中の持続からの解放は必要とされています。この集中の一つが日常のスマホに意識を向けてしまうことでもこのリソースが消費(浪費)されてしまいます。したがって同じ1日の中で何に対して意識を向けるかで、その日の生産性も大きく左右されるということになってきます。日常においてはいつも火事場のバカ力が出ていたら身体が持たないのは言わずもがなです。私も趣味の釣りにおいて竿先のアタリに集中しすぎた後、相当な眠気を催してくることがあり、この点からも納得できます。

この集中というものは、定量的に図ることができるものであり、かつそれが一日の中で使われ方で減り方もケースによって様々であることがわかるだけでも、無駄な集中をなくすことが生産性ダウンを防ぐリスク対策につながってきます。

集中力を養うためには何が有効か?そもそもの定義としては、注意の制御力を高めることです。方法としては、雑音や誘惑を減らすための環境の整備、呼吸・瞑想・運動などの心身トレーニング、茶道や書道、座禅といった芸道の実践、シングルタスクや目標を小さく定めるといった日常的な習慣改善といったことが挙げられます。このあたりの詳細の方法については各種ノウハウが出回っているため、ここで敢えて取り上げることはしませんが、茶道などは心の安定に寄与し、五感を総動員して集中を“今のここ”に向け、心を散漫にしない、一回性の緊張を養うことにもつながるそうです。

雑念の湧きやすい、情報に惑わされやすいデジタル時代だからこそ、心静かな環境にて日本古来の芸道に起因した集中力を養う機会も、自分自身を確立するための方策と捉えることも良いのではないでしょうか。

株式会社シー・クレド
代表取締役 乙守 栄一

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