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リスクマネジメントの専門知識・事例を学ぶ

リスクマネジメント・ラボ


第7回 2008年8月
「電子回路設計開発に求められる要素技術(ITスキル)」

第6回 2008年7月
「組み込み系開発に求められる要素技術(ITスキル)」

第5回 2008年6月
「OS・システム系開発に求められる要素技術(ITスキル)」

第4回 2008年5月
「ビジネス系開発に求められる要素技術(ITスキル)」

第3回 2008年4月
「ITスキルスタンダードって何?」

第2回 2008年3月
「開発種別と求められる要素技術」

第1回 2008年2月
「プロジェクト管理と人材選択リスクとの関連」

著者プロフィール

 中村 宏一  


どのような業種や職種でも今やITは企業には欠かせないものとなっています。その様な状況でITに関する開発プロジェクトが立ち上がり自分の周囲に、直接は自分の業務とは無関係のIT関連のメンバーが出入りすることも珍しくなくなりました。
その様な背景で、IT開発の初心者のプロジェクトマネージャーの方の役にもたつかと思いますが、主な対象はIT以外の職業の方が、自社のプロジェクトをどのようなスキルの担当者が行っているのかを少しでも理解していただいて、コミュニケーションリスクの軽減に役立てていただきたくてお送りいたします。

従って、ここでは対象を「IT開発プロジェクト管理」に限定しています。

第1回 プロジェクト管理と人材選択リスクとの関連

私は経験30年程のコンピュータ技術者で、ここ2~3年程はインドをナレッジアウトソーシング先にしたビジネスを行っていますが、それ以前の10 年程のミッションは技術開発におけるプロジェクト管理でした。その中でプロジェクト進行上でのリスクで最も大きな問題に人材としての開発技術者の確保があり、更にはIT以外の方々がIT開発系の人材の特徴に対する知識を、全くと言っていい程理解していない事実を痛感していました。この機会に解説させていただきます。

1.プロジェクト管理と成功、失敗の判断
身の回りにIT関連の開発プロジェクトが立ち上がるのは別に珍しいことではなくなりました。一般的に彼らは独自の用語で会話を交わし、どの様な職種の人材で、その役割は何で、更にはプロジェクトが順調か問題を抱えているのかも分かりづらいのではないでしょうか?
ここでプロジェクト管理について整理しておきます。

(1)プロジェクトの目的とバランス
【プロジェクトの3大要素】
① 一定の期間で
② 一定の機能のプログラムを
③ 一定の品質で提供する
プロジェクト管理とは、①~③ の3大要素のバランスを取りながら進めて行くことに他なりません。

(2) プロジェクトの成功とは
一定の期間で、一定の機能のプログラムを、一定の品質で提供できた場合に成功と判断します。

(3) プロジェクトの失敗とは
【下図:プロジェクトの失敗】で、①~③のパターンに一つでも当てはまれば、通常そのプロジェクトは失敗と判断されます。

【図:プロジェクトの失敗】
図:プロジェクトの失敗

※注意(つじつま合わせ)
正しい判断をすれば、失敗のプロジェクトでも次年度の予算確保の為とか、プロジェクトの決定権を持った方の責任回避の目的で無理やり成功の判断に置き換える事もあります。実は珍しい事ではなく一般的に行われている事だという事実を知っておいて下さい。


2.プロジェクト失敗の原因と人材能力の関係
(1)プロジェクト管理責任者が意識している事を知っておいて下さい
筆者は通常「開発プロジェクト管理とは=プロジェクトリスクコントロール」と考えています。
開発プロジェクトでのリスクコントロールとして、世の中のプロジェクト管理責任者は、
① プロジェクト管理手順の不適切
② 確保した開発用人材のスキルのバラつき
③ 設計手法に関する問題
④ 開発ツールに関する問題
⑤ ネットワークセキュリティーの問題(ウイルスによる被害を含む)
を常に考えているということを知っておいていただきたいと思います。

(2) IT関連以外の方が、注目すべき点
IT開発以外の方が、IT開発チームを見る場合に注目するのは一点で充分です。
【図:プロジェクトの失敗】での「開発チーム側の原因」→「能力不足」の部分です。
要するに、プロジェクトを担当している人材が、必要なスキルを持った人間がアサインされているかだけ見れば、だいたいの状況は理解できます。


3.「プロジェクト」って何?
プロジェクト(Project):
日常の繰り返し作業を実施する組織とは別扱いで、特定の目的を実現する為に一時的に編成されるチームを指します。

(1)開発プロジェクトの特徴
開発プロジェクトは、次の5項目の特徴を持ちます。
① 一定の期間が決められており、一連のタスク(業務)も決められています。
② 確保されたリソース(資源)を使います。ここでいうリソースとは(人・物・金)の事です。
③ 最終のゴール(目標?)が設定されています。
④ 仕事は確保されたプロジェクトチームで作業を進めます。
⑤ プロジェクトが個別に編成されますので、原則として全て開発目標が違います。
ここで扱っているIT開発も通常、開発目的毎にプロジェクトチームが編成され実施されます。


4.人材確保の選択肢と特徴
『3.「プロジェクト」って何?』で、「プロジェクトは確保されたリソース(人も含めて)を使います」と述べました。
では、特定の目的をもって編成されるIT開発のプロジェクトチームはどの様に編成されるのかを整理します。

【図:一般ユーザの方から見たプロジェクトチームの範囲】

(1)ユーザ側?
【図:一般ユーザの方から見たプロジェクトチームの範囲】を元に説明します。
たぶん多くの読者は、図の向かって左側の方々でしょう、当然?筆者は図の右側の人間です!
当然のことですが、IT開発中もユーザは通常の業務を継続しますが、この期間には見慣れないIT開発側の人間が出入りしますし、忙しい中ミーティングの要求も突き付けてきます。
たぶん皆様には、どのような人材かの見当が付きにくいのではないでしょうか?挙句の果てには、ただでさえ限られた人材で仕事をこなしているのに、貴重な人材を、「業務内容に詳しい人材」という観点から、一時的にプロジェクトチームに編入される場合もあります。多くの場合、プロジェクトが終了してもITの業務を覚えると、そのまま給料の高いIT部門に残り、元の所属に戻らない事もあります。

(2) IT以外の方から見た、プロジェクトチームの範囲
図の向かって右側がこの部分に当たります。
社内のIT部門が中心になって、開発案件毎に専属のプロジェクトチームを組んで対応します。
「プロジェクトマネージャー」はプロジェクトの進行に全責任を持ちます。ユーザの要望確認から始まり、開発マシンの確保、人材の確保、進捗管理、更には開発会社(ソフト会社)の選定と管理も行います。通常は開発工程で、技術的な要素の多い部分は、外部の開発会社(ソフト会社)へ発注します。
開発会社(ソフト会社)はIT部門から請け負った部分の開発を行います。発注した側とは立場が違いますが、作業の必要に応じて、発注したIT部門の担当者とともに、ユーザ部門とのミーティングへ参加したりしますので、ユーザ側の方からは、区別が付きにくい場合も多くあります。

以上がだいたいのIT開発のプロジェクトの構成となります。この様な特徴ある組織構造から、特有のリスクが発生します。


5.人材確保のリスクコントロール
IT開発の人材確保を立場別に整理してみます。

(1)ユーザ側
ユーザ側にも、IT部門からの問い合わせに対応する担当が必要になります。
一般的には業務に精通した方か、ITに詳しい方がアサインされますが、通常の業務との兼任であり、限られた時間での対応となりますので、ここで充分なコミュニケーションがとれなくなるリスクが想定されます。対策としては、予算を確保して、業務ユーザ側の方をプロジェクトチームへ編入する等の対策を講じます。

(2) IT部門からの人材確保
ここが今回のテーマの核心部分でしょう。先ずプロジェクト実施の責任者として「プロジェクトマネージャー」がアサインされます。次に「プロジェクトマネージャー」により、プロジェクトチームの人材の手配が始まります。IT部門からの人材のアサイン、ユーザの業務部門からのアサイン、それだけでは不足する部分は、派遣会社から調達することにより、社内でのプロジェクトチームを編成します。
通常は、ユーザからの要求機能を実現するのに、プロジェクトの管理や、テスト以外の開発の部分には一時的に大量の人材が必要となるので、その部分は外部の開発会社(ソフト会社)へ発注します。外部発注先の人材までを含めてプロジェクトの管理範囲として扱う事を理解して下さい。 

私も経験があるのですが、「何をやっているのか今一良くわからないのがIT部門」とはよく言われます。この記事を読んで少しでも理解していただけたらと思います。

【注意】
ここで取り上げる情報は必ずしも政府外輪団体等の調査した正規のものばかりではなく、筆者個人の経験と感覚に基づいた情報も使用している事をお断りしておきます。
人材に関するリスクコントロールは対象が人間であり、最も難しい分野であることを認めつつも、新たにプロジェクトコントロールに係る様になった方々はもとより、自分の周りで行われているIT開発のメンバーの構成とスキルの関係を理解したいと考えている方々の参考になれれば幸いです。


★今後の予定
2.開発種別と求められる要素技術
・開発ジャンルの分類と、必要とされる役割
・必要とされる役割と求められる要素技術
・人材に求めるべき取得済み要素技術とリスクコントロール

3.ITスキルスタンダードって何?
・「ITスキルスタンダード」なるものがあります
・要素技術と経験年数の関係
・立場の違いによるコミュニケーションリスク。
・ハード開発者とソフト開発者での、ハード仕様書とソフト仕様書の意味の違い。

4.ビジネス系開発に求められる要素技術(ITスキル)
・言語ベースや、簡易言語での開発者
・クライアント・サーバーって、どんなシステム?
・最近のWeb系アプリケーションでのリスクコントロール
・ハッキング防止技術を持ったWeb系アプリ開発
→これからもっとも求められる種別のエンジニアを確保する方法!

5.OS、システム系開発に求められる要素技術(ITスキル)
・知られざる開発の実際!
・ハイリスクな開発の実態
・開発技術者に求められる要素技術

6.組み込み系開発に求められる要素技術(ITスキル)
・正しい認識はリスクコントロールの基本!
・現在と今後数年のマーケット規模を理解するべき
・今後の日本での開発規模拡大と人材不足リスクを意識していないのは日本人くらい
→インドからのアプローチと問題点

7.電子回路設計開発に求められる要素技術(ITスキル)
・ハードウエア開発技術者の持つ要素技術を理解するのもリスクコントロール
・製品の全開発工程でお仕事の手順
・製品種別により求められる要素技術
-アナログ回路設計技術者
-パルス回路設計技術者
-デジタル回路設計技術者
-低周波回路設計技術者
-高周波回路設計技術者
-電源回路設計技術者

以上毎月1回、残り6回でお送りします。